はじめに
今回は「パスピエ」の「ハイパーリアリスト」をご紹介します。
伸びやかなボーカルのメロディーラインとタイトなリズム、突き刺さるようなギターにややメランコリックなキーボードと、とにかく耳に残るサウンドが気持ちいいですよね。
実はこの曲は「パスピエ」にとってある節目を表す作品でもあったのです。
ハイパーリアリストについて
7枚目のシングル曲
「ハイパーリアリスト」は「パスピエ」の7枚目のシングルです。
「永すぎた春」と両A面シングルとなっています。
この「永すぎた春」は「三島由紀夫」の小説からインスパイアされたものです。
「三島由紀夫」が好きという「成田」と「大胡田」にとっては思い入れのある作品に仕上がったということです。
ジャケットに歌詞がイラストされているのもそのせいでしょう(イラストは大胡田の担当)。
アルバム「&DNA」には収録されていない「REM」や「倉橋ヨコエ」のカバー曲「今日も雨」も収録されています。
アルバム「&DNA」に収録!
「ハイパーリアリスト」は、4枚目のアルバム「&DNA」にも収録されています。
初回限定盤には「電波ジャック」から「メーデー」までのシングル曲のMVが収録されたDVDが付属しパッケージも特別仕様です。
つまり、デビューから「&DNA」までの全てのシングル曲が映像付きで楽しめます。
選べるなら初回限定盤でしょう(2018年9月時点では在庫があるようです)。
歌詞を解釈!
描かれるリアルとは?!
まず「ハイパーリアリスト」というタイトルについて。
リアリストとは一般に現実主義者のことですが、アートの分野においては写実主義者のことをさします。
このほかに哲学の分野で実在論者という意味もあるそうです。
つまり「超写実主義者」という意味のタイトルになります。
歌詞は、簡潔に少ない語数で語られていて、繰り返しも多いです。
それだけ、読み手の想像の幅も広いのです。
繰り返すことで強調される部分がより印象に残るような気がします。
「写実主義者」とタイトルに持ってきておいて、歌詞の書き方としては抽象的とも取れるというところにも言葉遊びが含まれているように感じられます。
どのようなリアルが描かれているのでしょうか?楽しみですね。
拝啓 未来のある日の皆様へ
長くて短い手紙をしたためたんだ
届いていますか 覚えていますか
今日は記憶になってますか
出典: ハイパーリアリスト/作詞:大胡田なつき 作曲:成田ハネダ
「長くて短い手紙」とはどのような意味があるのでしょう。
一見すると矛盾していますね。
しかし、長いか短いかは読み手が判断することだとしたらどうでしょうか。
そして、「この手紙は長いようで短いですよ」と書き換えるとどうでしょうか。
長い手紙でもあっという間に読めてしまうとしたら、内容に自信があるとも取れそうです。
また、「長くて短い」といわれると「人生」もそんなものなのかなという気がしますね。
今日の記憶が「未来のある日の皆様」に届いているか、つまり覚えているかと問いかけています。
何千回だって 何万回だって
もっとリアルに鮮明に描くよ
再現なんて 無理難題で
この一瞬のために生きてるだけだ
出典: ハイパーリアリスト/作詞:大胡田なつき 作曲:成田ハネダ
前のパートの続きで考えると、届くまで「何万回」でも描くということです。
一方で、「再現」することが「無理難題」としているのは、リアルに描くことがとても難しいということです。
特に歌詞と音楽、映像で描写しようと思ったら、写実的に描くのは大変ですよね。
読み手、聞き手の想像力に限界がありますから。
だからこそ何度も描くのでしょう。
この一瞬のために生きているというのは、完全に再現するためではなく描くために生きているということでしょうか。
前略 思い出の中の貴方様へ
長くて短い手紙をしたためたんだ
大人になったら何をしてるかな
なんて語り合った夢を
出典: ハイパーリアリスト/作詞:大胡田なつき 作曲:成田ハネダ