『家族の風景』について
2002年10月リリースの1stシングル
ファンクバンド「SUPER BUTTER DOG」のボーカルとしてメジャーデビューした永積崇。彼が2002年からスタートしたソロユニットが「ハナレグミ」です。
ハナレグミの自然体で飾らない魅力と、抜群の歌唱力は多くのファンから愛されています。
そんなハナレグミの2002年10月にリリースした1stシングルが『家族の風景』です。シンプルなサウンドと素朴で味わい深い歌詞が胸に沁みる名曲です。
アルバム『音タイム』収録
『家族の風景』は2002年11月リリースのアルバム『音タイム』にも収録されています。このアルバムのリード曲と言えるでしょう。
Polarisやクラムボンが参加したこのアルバムは、心が弾むような魅力を持った作品に仕上がっています。
タイトル曲の『音タイム』や、明るい気持ちになるアップテンポな『明日天気になれ』は聴き逃せない名曲です。
初回限定盤はCD-EXTRA仕様になっていて、『家族の風景』のPVが収められています。
YouTubeなどではPVは公開されていないようですので、PVが観たいという方は初回限定盤を探しましょう。
『家族の風景』が気に入った方は、『音タイム』もぜひ聴いてみてくださいね。ハナレグミは期待を裏切りません。
歌詞の意味を考察
どこにでもある風景?
キッチンにはハイライトとウイスキーグラス
どこにでもあるような 家族の風景
7時には帰っておいでとフライパンマザー
どこにでもあるような 家族の風景
出典: 家族の風景/作詞:永積タカシ 作曲:永積タカシ
キッチンでタバコの「ハイライト」とウィスキーを手にしているので、とても素敵なお母さんであることがわかります。
これはどこの家庭でも見られる風景ではありませんが、永積崇にとってはありふれているけれど大切な「家族の風景」なのでしょう。
「フライパンマザー」はフライパンを持っているお母さんというそのままの意味で良いと思います。
「7時には帰っておいで」というセリフがとても温もりを感じさせますよね。きっとおいしいゴハンを作って帰りを待っているのでしょう。
「グラス」「マザー」と歯切れが良く、おだやかな中にもファンキーなリズム感をプラス。とてもユニークな言葉のセンスです。
愛しい距離
友達のようでいて 他人のように遠い
愛しい距離が ここにはいつもあるよ
出典: 家族の風景/作詞:永積タカシ 作曲:永積タカシ
幼い頃から一緒に暮らしていれば、母親に対して「友達のよう」に感じることはあるでしょう。母親は、とても距離の近い存在です。
しかし、何でも知っているように感じても、知らないこともあります。そのため、とても近いけれど「他人のように」遠く感じることもあるでしょう。
また、あまり距離が近すぎると、相手のことを考えてしまって本当に伝えたいことが言えない時もあります。
悲しい話をして相手まで悲しい気持ちにしてしまったら申し訳ないと思って、つらいけれど話せなかったという経験はないでしょうか。
友達のような親しみやすさと他人のような遠さという接しやすい絶妙な距離感をここでは、「愛しい距離」と表現しています。
何も語らずそっと笑う
何を見つめてきて 何と別れたんだろう
語ることもなく そっと笑うんだよ
出典: 家族の風景/作詞:永積タカシ 作曲:永積タカシ
自分が生まれる前の母親には絶対に会うことができません。それまでにさまざまな物事を「見つめて」きたはずです。
楽しいことだけでなく、もちろん悲しいことや苦しいこともあったでしょう。つらい別れも経験したかもしれません。
しかし、母親はそれを言葉で語ることはなく、問いかけても「そっと笑う」だけなのです。
寡黙でとても格好良い母親ですよね。少しミステリアスな雰囲気も感じさせます。
そのような多くを語らないけれど温かく、愛しい距離を感じる母親をとても大切に感じていることが深く伝わってきます。