バンドメンバーから見たバンドのこと?

曲も演奏も凄く良いのになんかあの声が受け付けない

もっと普通の声で歌えばいいのにもっと普通の恋を歌えばいいのに

でもどうしてもあんな声しか出せないからあんな声で歌ってるんなら

可哀想だからもう少し我慢して聴いてあげようかなって 余計なお世話だよ

出典: 社会の窓/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観

Bメロ二段落目の部分です。

こちらは、クリープハイプそのものをクリープハイプ自らが皮肉っています。

メジャーに行き、活躍の幅が広がる中、ネット上に書かれた余計な言葉の数々に対しての、怒りや憤りが痛い程に伝わります。

1番の歌詞にもあったとおり、メジャーデビューに際して「大衆ウケ」を目指すアーティストもいるでしょう。

少しでも多くの人に聴いてもらうため、そして少しでも多くの人に知ってもらうためには当然かもしれませんね。

しかしクリープハイプはそうするつもりがない、ということがわかります。

バンドの方針は自分たちが決める。ファンが決めるものではない。そう伝えているようです。

加えて彼らが怒っているのは「やりたい音楽を追及している」ことの根拠を、尾崎さんの特徴的な声に見出されたから。

誤解されていることに対してもそうですが、常に「一般ウケするもの」と比較され続けることへの怒りでもあるでしょう。

誰が、何を?

愛してる 今も愛してる 今も愛してる 今も愛してる

愛してる 今も愛してる 今も愛しているのよ

出典: 社会の窓/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観

2番のサビ部分です。

1番のサビが、”今を”だったのに対し2番のサビは、”今も”に変わっています。 「どんな散々な日々でも愛しい日々だったんだからいいんじゃないか!」 というような、気持ちが吹っ切れた感じに聞こえます。

さて、ここで愛を歌っているのはいったい誰なのでしょうか?

これまでに登場していたのは3人。

1番一段落目で登場した、好きなバンドがメジャーデビューしてモヤモヤしている女性。

1番2段落目と2番一段落目で登場した、誰にも理解してもらえない虚しさを抱えている女性。

そして2番2段落目で登場した、世間からの批判に苛立っているクリープハイプ。

前の2人は同一人物の可能性が高いですから、とある1人の女性とクリープハイプの物語にも見えます。

ただじっくり見直してみると、この楽曲には最初から1人の女性しか登場していなかった可能性も見えてきませんか?

2番の二段落目は確かにクリープハイプの皮肉に見えます。

…が、実際は女性の好きなバンドに寄せられるアンチコメントを見ながら、それに1ファンとして反論しているのだとしたら?

「誰が」愛しているか、という問いに対する答えはこの楽曲に登場する1人の女性なのだといえそうです。

続く「何を」愛しているか、という問いへの答え。

それはここまでに登場してきた全てでしょう。

メジャーデビューしてしまったバンドも…。つまらない日常も、刺激を求めて関係を持ってしまった相手も…。

気持ちは変わることなく、全てを愛しているのです。

自分自身の気持ちを改めて確認したところで、気持ちが吹っ切れたのでしょう。

最低だけど最高です!

クリープハイプの「社会の窓」のファン心理×バンドを描いた斬新な歌詞を紐解くの画像

社会の窓の中で事務 昼は退屈過ぎて 最低です

社会の窓の中でイク 夜は窮屈過ぎて

社会の窓の中で事務 昼は退屈過ぎて 最低です

社会の窓の中でイク 夜は窮屈過ぎて 最高です


愛してる 今を愛してる 今を愛してる 今を愛してる

愛してる 今を愛してる 今を愛しているのよ ベイビー

愛してる

出典: 社会の窓/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観

ラスサビ前〜ラスサビ部分です。

感情がふつふつと煮えたぎって、 最後には最高!と叫んでしまっています。

モヤモヤする気持ちはあるけど、 社会の窓の中の居心地の悪さ、社会の窓の中の気持ち良さを強く主張しています。

(…もう、どうにでもなっちゃえ!だから…愛してるんだよー!) 愛してるから、会社に勤めている。

愛してるから、上司と営んでいる。 愛してるから、バンドで歌っている。そんな社会の窓の中の人たちの物語なのだと思います

結局のところ、社会の窓って?

これまで歌われてきたのは、場面に応じて変化する様々な感情でした。

登場していたのはたった1人でしたが、まるで別人のように様々な感情を抱いている様子が描かれていましたね。

これらすべてのことから考えると、社会の窓とはフィルターでありレッテルでもあるのではないでしょうか。

はたまた、場面に応じた自分自身の定義づけとも言い換えられるかもしれません。

もしくは「」のような概念といえばいいでしょうか。

ただしそれは自分自身で作るものではなく、世間から与えられるものなのです。

人は自由に生きていいはずなのに、ついその枠の中に自分自身を当てはめようとします。

昼間に事務をしているときの女性は、「仕事をする普通のOL」という枠に当てはまります。

かと思えば夜はその枠を飛び出し、「自由に振舞う小悪魔な女性」という枠に移動するのです。

感情がコロコロ変わるのに、全てを愛している理由もこれで説明がつくでしょう。

はまっている枠が違うだけで、どれも自分自身でしかないのですから。

まとめ

クリープハイプ「社会の窓」を解説しました。

あまり繋がりを感じさせないフレーズが組み合わされ、非常に難解な歌詞でしたね。

きっと皆さんも複数の社会の窓を持っていることでしょう。

ぜひこの女性のように、全てを「愛して」みてくださいね。

こちらもおすすめ

クリープハイプの「社会の窓」のファン心理×バンドを描いた斬新な歌詞を紐解くの画像

OTOKAKEでは他にも、クリープハイプに関する記事を多数公開しています。

独自の世界観を持つ彼らの楽曲に、もっと触れてみませんか?