【I’ll】が描く世界とは
DIR EN GREYにとってインディーズ2枚目のシングル【I’ll】。
1998年に発売された本楽曲は、どこか切なさ・寂しさを感じさせます。
とある男女の別れが描かれている本楽曲ですが、なんといっても楽曲中で贈られた花束が非常に印象的。
今回は2人の別れの理由に迫りながら、贈られた花束に込められた本当の意味も紐解いていきましょう。
君と僕の関係は?
離れ離れの2人
I’ll for you
錆ついているこの時計 僕のようだ
人の愛は何気なく 終わりを迎える
出典: I’ll/作詞:京 作曲:Dir en grey
1行目の英語。何かしらの動作を表す単語と組み合わせることで「~してあげる」という意味を持ちます。
例えば「I’ll wait for you.」であれば「待ってあげる」といった具合ですね。
歌詞中ではいったい何をしてあげるのか明記されていませんが、それはつまり「全て」を意味するのでしょう。
君のためなら何だってしてあげる。僕は君に対するそんな大きな愛を持っているのです。
しかし続く歌詞を見れば明らかですが、その気持ちが報われることはありません。
なぜなら歌詞3行目で、2人の関係の「終わり」が明記されているから。
唐突すぎるようにも思えるその別れを、僕は受け入れ切れていない様子です。
2行目からも、僕に流れる時間が止まっている=別れを認めていないことがわかりますね。
別れた原因?
幼い頃を想う 優しさに飢えてた
あまりにも 遠すぎた 貴方の声
出典: I’ll/作詞:京 作曲:Dir en grey
僕は君に依存していました。経済的な…というよりは精神的な依存です。
対する君はしっかりと自立している女性だったのでしょう。
だからこそ僕は君に依存してしまいました。精神面では完全に君へ寄りかかっていたと考えられます。
もちろん心のどこかでは、いつまでも頼り続けてはいけないと感じていたかもしれません。
しかし1度寄りかかってしまえば、そう簡単には離れられないもの。僕は君の優しさに甘え続けました。
2行目ではそんな君との距離を遠いと感じているようですが、これは2通りの解釈ができそうです。
まずは精神的な距離の遠さ。君は僕よりも断然大人びていました。
精神年齢だけを比べれば、圧倒的に君の方が大人だったと考えられます。
どんなに頑張っても埋められない差。一緒にいた頃からその距離を感じていたのでしょう。
もう1つは物理的な距離の遠さ。優しくしてくれる君がいなくなったことで寂しさを感じているようです。
心の支えがなくなってしまい、不安が拭いきれないのでしょう。
後者の解釈をすると、やはり僕と君は別れを選んだのだとわかりますね。
依存しすぎてしまったことが原因でしょうか。君は頼られ続けることに疲れてしまったのかもしれません。
別れた本当の理由
I’ll for you
僕の心 あの頃と 何も変わらず
君に贈る嫉妬だけがつのるばかり
出典: I’ll/作詞:京 作曲:Dir en grey
僕が君と離れてしまった理由が推測できるようなフレーズですね。
別れを告げたのは君。僕ではない別の男を愛してしまったことから、別れを決意したのでしょうか。
しかしそんな僕には未練しかありません。変わらぬ愛を持ち続けている様子です。
自分だけがいつまでも変わらずにいるのに、君の心はあっという間に変わってしまった…。
進めずにいる自分自身と、僕に構わずどんどん歩みを進めて行ってしまう君を比べているのかもしれません。
前に進める君をうらやましく思う気持ちもあったのでしょう。そんな気持ちが嫉妬に繋がっているとも考えられます。
君への未練
傷付くのが怖くて何もできなくなる
いつか夢が叶うと 僕は願う
出典: I’ll/作詞:京 作曲:Dir en grey
僕は君のことをまだ愛しています。そしてまだ君も僕に愛があるのではないかと期待しているのです。
それが2行目にある「夢」でしょう。君が戻ってきてくれる可能性があると信じているようですね。
ただ、いまの僕は願っているだけ。具体的な行動には移すことができていません。
その理由が1行目。君に愛があると期待しつつも、それがないだろうということにも気がついているからです。
真実を知ることへの恐怖感から、僕は何もできずに立ち止まっているのでしょう。