君の本心は
どちらが真実?
季節が 雪を降らした そんな夜
君が僕に贈った愛の花束 造型の毒の花束
出典: I’ll/作詞:京 作曲:Dir en grey
「造型」とは、とあるイメージから形あるものを作り上げる行動を指し示す言葉です。
つまり毒の花束とは何かしらのイメージ・想いが形になったものだと考えられます。
もちろん比喩表現でしょうが、毒という表現に繋がるイメージとはいったい何でしょうか。
ここまでの2人の関係を思い返してみれば、それは君が僕に抱く「憎悪」だと捉えるのが自然かもしれません。
君は僕に対して憎しみのような、ネガティブな感情を抱いています。
それを君に伝えたのでしょう。君が抱いていた負の感情をぎゅっとこめたに違いありません。
しかし僕にはその本心が伝わっていませんでした。僕は君から美しい花束をもらったと思い込んでいます。
君は僕を完全に嫌いになったわけではなく、やむを得ない事情で離れてしまったのだ。
そう信じ込んでいる僕は、君への嫉妬を忘れてさらに愛を募らせていることでしょう。
別れの真実
君が僕を捨てて別の男性の元へ行ってしまった本当の理由も、ここにあるのではないでしょうか。
おそらく君が僕へ憎しみを抱き、別れを告げたことが真実です。僕は君を怒らせるようなことをしてしまった。
それに気がつかず、いつまでも未練がましい僕に苛立ちを募らせた君は精一杯の皮肉を込めて花束を贈りました。
しかし残念ながら、僕にその皮肉は伝わりませんでした。
むしろ「嫌われたかもしれない」という僕の不安を消し去り、僕が君の愛を再確認するきっかけを与えてしまったのです。
大人びている君からのお洒落な皮肉を、自分の都合に合わせて解釈してしまう子どもじみた僕。
ここでも先述した「僕と君の精神年齢の差」が顕著に表れています。
君への愛は消えない
僕の夢は崩れて砂になり 風に流され
二度と人を愛せず でも今も君をさがしている HA HA
季節が 雪を降らした HA
二度と人を愛せず でも今も君をさがしている
出典: I’ll/作詞:京 作曲:Dir en grey
先ほどまでの展開から大きく変わり、冷静に状況を受け入れている僕の様子が描かれています。
いったい何があったのでしょうか。
僕は君から送られた花束に込められた皮肉に気がついたのかもしれません。
その皮肉を理解し、受け入れられるほどには心が成長したということです。
そう考えると、君と僕が別れてからは多少なりとも時間が経っていると考えられますね。
僕は君の愛が残っていないと理解しました。君との関係が戻る可能性はないと察したのです。
しかし理解したからといって、君への愛が失われたわけではありません。
2行目、そして4行目でも綴られていますが、相変わらず他の女性のことは眼中にないのです。
君との別れを理解し受け入れつつも、他の女性に興味などありませんし君への想いも捨てきれていません。
状況を受け入れられるほど成長したように見えて、実際は何も変わっていないのです。
僕が君のことを大好きでいるという状況は何も変わりがありません。
つまり僕はまだ君への精神的依存から抜け出せていないのでしょう。
成長したように見えて何も変わらない。いつまでも子どものままの僕が描き出されています。
最後に
とある男女のすれ違いを描いた【I’ll】。
比喩表現や難解フレーズを用いることが多い京さんの歌詞にしては、とてもわかりやすかったのではないでしょうか。
しかしそんなわかりやすいフレーズの中でも、男性の思い込みが暴走するという狂気的な要素を組み込んでいる。
その点は非常にDIR EN GREYらしさを感じる楽曲だったといえるかもしれませんね。
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