リスナーのリアクションを奪うMOROHAの『五文銭』

MOROHA【五文銭】歌詞を解説!選ばれなかった人間はどうすべき…!?挫折した時こそ追いかけ続けろ!の画像

手拍子も拍手も歓声も、タオルの旋風も突き上げる拳もない。あるのはギターの音と叫びと何も言えない観客達。

日本で唯一、こうしたライブを実現してしまうのがMOROHAです。

実現する、という言葉には語弊があるかもしれません。

2人はそれを望んで作り出したのではなく、ただ自然に「そうなってしまった」のです。

今回はMOROHA『五文銭』歌詞をじっくり読み解きます。

窒息しそうな濃密な空気

『五文銭』の歌詞の文字数をカウントすると、2000文字を越えています。

8分半の楽曲に詰め込まれた2000文字。1分間に230文字程度の計算です。

しかし、ただ言葉数が多いだけの曲なら世の中に溢れています。

2000の文字全てが熱く煮えたぎり、しかし妙に冷たい刃が剥き出しで生えているのが『五門銭』です。

年末の衝撃は液晶の中

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2017 大晦日 もうそろそろだ
座布団の端っこ 握りしめて 覚悟決めて
テレビつけて 食らいつく NHK紅白
土手っ腹にピストル 上がっていく脈拍
決して目そらさずに 焼き付ける網膜

出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK

MOROHAのMC・アフロはこの年末、テレビ画面の中に誰の姿を求めていたのでしょうか。

それは、彼がリスペクトしてやまない竹原ピストルです。

かつて竹原はアフロに対し「どうしても売れたい」と宣伝の手伝いを願い出ました。

媚びるようなその行動に一度は落胆したものの、落胆した自分に対して更に落胆したのだと、アフロはインタビューで語っています。

「売れたい」という気持ちは竹原の本気。本気だからこそ後輩に頭を下げたのです。

必死な人を「滑稽だ」と一瞬でも思ってしまった自分こそ、滑稽だと気づいたのでしょう。

「本気」をまざまざと見せつけられたアフロは、紅白という大舞台に上がった竹原の姿を食い入るように見つめます。

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全身は硬直 罪深くて醜い
けれども 手放せぬ感情が込み上がる
こんなにも苦しい こんなにも狂おしい
華やかな照明がすげえなって思った
荒れ果てた俺の部屋ひでえなって思った

出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK

日本中の有名アーティストが一堂に会する舞台は、出場者自身が光を放っているかのように眩しく見えたはずです。

凄い、かっこいい、あんなふうになりたいという羨望は恐らく一瞬のこと。

それも本音かどうかは分かりません。なぜならすぐに消えてしまったから。

アフロの心の中を満たしたのは羨望ではなく嫉妬でした。

「竹原さんは頑張ったから」などという生ぬるい言い訳が通用しないほど濃密な嫉妬です。

自分に宣伝をお願いしにきた竹原が売れて、宣伝してやった自分は汚い部屋の中で年末を過ごしているという現実。

どうして自分ではなく竹原なのか、という薄々答えが見えている自問自答をしていたのかもしれません。

紅が勝とうが 白が勝とうが どっちだって一緒だ
俺が負けてるってことだけは分かってた
午前0時 鐘が鳴る 訪れる新年
ではなくて この胸にしがみつく自らの信念にこそ書き初めを刻めよ

出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK

液晶の中には竹原だけでなく演歌歌手、ロックバンドアイドルシンガーソングライターが勢揃いしています。

彼らに対して「俺のほうが凄い」と自信を持って言える立場ではありません。

手が届くはずだった竹原さえも、手が届かない高い場所に行ってしまったように感じたはずです。

アフロだけが最下層で年越しを迎えます。

「書き初め」は1年の抱負を書き記すものですが、アフロは短期的な抱負に見向きもしません。

竹原の姿を見て、ステージ上のアーティストを見て、自分の「なりたい姿」を心に刻みつけました。

それはきっと、紅白の舞台に立ちたいだとか、オリコンチャート1位を獲得したいというようなものではないのでしょう。

この曲を最後まで聴くと、真実が見えてきます。

だってそうだろ いつの時代も
選ばれなかった人間は 自ら撰び取るしかないんだ

出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK

売れているアーティストに対しては二股の道の向こうで誰かが手招きをして、成功への近道を教えてくれます。

アフロの目の前に伸びる二股の道には誰の姿もありませんし、先が見えません。

どちらに進むかを決めるのは、自分自身です。

人任せの人生はいらない

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声を揃えて なんて 歌われてたまるか
誰とも揃わねえ 俺だけの歌だ
笑顔なんてやめろよ 真顔にこそ用がある
眠ってる野望 引きずり出してやる

出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK