突破するセキュリティ マイクチェック結構
速攻でK.O. 心フルボッコ
居場所をひとつ無くした 泣くしかなかった夜が連なった
なあ 頼む 頼むからもう一回だけチャンスくれ
叫びたくなるライブ なんべんもあった
今度はしくじらずに絶対にうまくやる
出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK
誤解を恐れずにいえば「型破り」なMOROHA。彼らのライブに客が集まらなかったことは何度もあったでしょう。
お世辞にも楽しいライブとはいえない空間から逃げ出す人もいたかもしれません。
アフロは自身の感情を歌っているだけなのに、真っ向から否定されるのではなく「相手にされない」という屈辱。
それは1度ではなく何度もあったことが歌詞から読み取れます。
でもアフロはそのライブを「後悔」せず「反省」をして次に繋げることを選びました。
フロアで風呂場で震え 俯いた
涙を落とすならノートで受け止めろ
泣きわめき叫ぶならマイクを通せよ
俺の代わりなんざいくらでもいる
だからこそこの場所は絶対に譲らない
出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK
悔しさを歌詞にして、そこに命を吹き込むように歌にするのがアフロ流。
しかし悔しかったことを言葉として書き込むのは誰にでもできることです。日記とさして変わりません。
アフロ自身も「自分じゃなくても」というニュアンスで歌っています。
ではなぜ彼はここにいるのでしょうか。
誰でもできることを、誰も真似できない形に昇華させられるのは自分しかいない。こうした自信があるからです。
大切なのはMOROHAの音楽
ポケットの有り金をぶっ込んで外した
宝くじの裏側に歌詞を書きなぐった
これでもう一回だけ でかい夢を買い直す
孤独も 葛藤も 今度こそ飼いならす
唇を噛んだ回数がキャリア
ライバルの多さ それこそがスタミナ
パンパンの武道館で見せつけたビーバー
時代を掴み駆けてるマイヘア
今は涙が出るくらいに恵まれた時代だ
悔しさ それだけが芸の肥やしだ
出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK
前出の歌詞で、夢を叫ぶことの無意味さを歌っていましたが、ここでまた「夢」という言葉を使っています。
無意味にならないぐらい、壮大なスケールの夢を見ようというのです。しかもこれがラストチャンス。
その夢を叶える道の途中で、何度も悔しい思いをしたはずです。
自分たちと同世代、同時期に生まれたバンドがスターダムにのし上がっていく様を見せつけられているのですから。
その筆頭がSUPER BEAVERやMy Hair is Badなのでしょう。
MOROHAは彼らと対バンをしていますし、ツアーのゲストにも招いています。
知名度を持つ彼らと共演すればMOROHAの名前は広く知れ渡るはずです。
これを「恵まれた時代」と歌っているのでしょう。
でもそれは、他のバンドやアーティストの力を借りたからなし得たことです。
逆に考えれば、力を借りなければ今の立ち位置が獲得できていないかもしれません。
「名前が知られて良かった!」で満足してしまったらMOROHAは歩みを止めていたことでしょう。
同世代のバンドの力を借りなければ名が知られない。それを「悔しい」と思えたから、彼らの今があるのです。
負け続ける者たちの乾きを知る者は少ない
売れてる音楽なんか全部クソだ
いやそんなのは嘘だ 嘘にできるんだ
揺れ動くサイリウム 舞い踊るアイドル
どっからどう見たっておれが挑戦者
別物だ なんて逃げは赦すな
嫉妬して 嫉妬して 嫉妬してらんねえ
歪まないギター 怯まないラッパー
負けん気のプロはどこまでだって行ける
出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK
「最近の音楽シーンはダサい曲ばかりが売れて……」
だったら自分たちが「最高」と思える音楽を引っさげてトップにのし上がれば良いのです。
今トップに君臨するのが歌姫であろうとアイドルであろうと、トップになりたければ蹴落とす必要があります。
「オルタナティブの中のトップ」ではなく「音楽シーンのトップ」を目指すことが彼らの本気です。
見た目だけで歌は下手。歌はうまくても曲がダサい。こんなふうに嫉妬してディスっているようでは意味がありません。
MOROHAが負けていることは事実なのです。
散々負けて負け越している彼らの「勝ちへの渇望」は並大抵ではありません。
いつだって「本気」を歌う覚悟
誰も信じない それも構わない
いつか 信じられない の声が聞きたい
滅茶苦茶に売れたら俺は変われるか
寂しさの死神はどっか消えるか
UK お前とは仲悪くなるかなあ
その時は新曲悪口で書こうな
出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK
何のために勝とうとしているのか。彼自身、その答えが少し曖昧になっている様子が窺えます。
セールスを伸ばすこと、紅白に出ること、それが実現したらアフロの中の嫉妬や悔しさがなくなるのでしょうか。
そうなると、アフロの歌詞が変わってしまうのでは……という不安に襲われます。しかし続く歌詞を見て安心する方が多いはずです。
売れているアーティストならではの「仲違い」。
音楽性の違い?売上げの分割方法?理由は様々です。
その時はアフロの本音をたっぷり含んだ歌詞で嫌味を言ってやる、と歌っています。
この先に何があるかなんてことは知らない
想像を絶する地獄かもしれない
俺は弱い すぐに調子乗る
それでも愛された曲だけは片時も離さない
出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK
まだ夢の途中を歩いているMOROHAの視線の先には、何も見えません。
甘い言葉で手招きをするレコード会社。気が遠くなるようなファン数を抱えたバンドの前座。
世の中に迎合するために音楽性の転換を迫られることがあるかもしれません。
しかし彼らはその誘いに「NO」を突きつけるでしょう。
夢の途中までたどり着いたのは、楽曲に心揺さぶられたファンがいるからです。
その楽曲を捨てるだなんて、言語道断です。
自らの音楽を突き通す
今作のアルバム リリースはメジャー
ユニバーサル VS 2本の中指だ
俺たちのために俺たちが選んだ
さあ 食うか食われるか 腹を括るんだ
出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK
『五文銭』が収録されているアルバムはユニバーサルレコード発。大手中の大手といえますね。
メジャーデビューとなると、レコード会社の意向に沿って楽曲の変更を余儀なくされることもあるはずです。
でもMOROHAは、自分たちの楽曲を捻じ曲げるつもりはありません。
あえて大手を選んだのは、彼らの意地を突き通すためだと推測できます。
ではなぜ意地を突き通す必要があるのでしょうか。まだ見えてきません。