悲しみも憎しみも苦しみも音楽の糧
でしゃばって生きてたい もっと燃えてたい
もっと求められたい もっと愛されたい
欲深い自分 それ故につきまとう苛立ちよ
眠るな 一睡もするな
いいか 夢の中でさえも 夢にめがけてひた走れ
その代償は甘んじて受け入れて
現実を鉛筆で残さずにかき集め
時間も忘れて どこまでものめり込め
出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK
アーティストの多くは「目立ちたい」と思うのが普通ではないでしょうか。
しかし注目を浴びたいという欲望が、アフロの信念を捻じ曲げてしまう可能性があります。
多くの人に受け入れて欲しいから、歌詞を少しキャッチーに……。それは「本気」とはかけ離れています。
欲望がちらついたときに自分に舌打ちしたくなるような気持ちを大事にしろ、と歌っています。
ひたむきに、馬鹿正直に音楽をやっていく中でつまずいたとしても、それを新しい音楽にすればいいのです。
食っていくためにやる音楽はやめた
世界を変える音楽に決めた
俺の言葉は俺よりも偉い
だから 舌に従って本当にしたい
出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK
素直な発言をしようとしても、頭の中で「嫌われるかも」と思ったら別の言葉に置き換えてしまいます。
つまり、言葉を偽るのは「言葉」ではなく自分自身の「思考」です。
思考が邪魔をしなければ、アフロが書き連ねる歌詞は正直そのもの。
音楽に対する決意もまた、思考が介在しない正直なものなのでしょう。
選べる「今」は恵まれている
2019年1月29日
今日は雪道を沢山歩いたから
靴ん中はもうビショビショだし
耳は寒さで千切れそうだ
だけど 映像を撮るために自ら出向いた険しさは
所詮作りもんだ嘘っぱちだ
出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK
できるだけ厳しい寒さを表現したい、という目的で雪深い吹雪の山奥に入っていく光景を想像してください。
確かに吹雪いているし、歩くのがやっとという積雪かもしれません。
しかしそれは自らが望んでその環境を求めていった結果です。厳しい寒さであることを承知した上での行動なのです。
本当の険しさっていうのはな 本当の険しさっていうのは
何の始まりの予感も感じさせてくれない
朝日に照らされながら仕事に向かったあの道や
俺何やってんだろうって俯きながら歩いた あの帰り道にあった
それらを超えて 俺は今ここにいる
出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK
これまでアフロが綴ってきたこの曲は、ミュージシャンのことだけを歌っているわけではありません。
自分に置き換えて考えて欲しい、というメッセージを感じます。
新しい1日が幕を開けても、自分に嫌気が差しても何も変わらないし変えられない。
甘やかしてくれる環境だけでなく、厳しい環境を選ぶことさえもできないのです。
これこそがアフロが歌う「本当の険しさ」なのだと考えます。
ですから、自分自身が選ぶ立場となった現状はアフロにとって「最悪」ではないのでしょう。
アフロが歌い続ける目的がここに
俺はたくさん裏切っててきたし たくさん負けてきたけど
いつか俺は俺のこと褒めてやりたい
仮に過去の俺が現れて お前何やってんだよ って言ったとしても
ごめんな でも俺必死だったんだ って
力一杯言い返せる自分でいたい
そしていつか 俺は俺のこと
俺は俺のこと 幸せにしたい
出典: 五文銭/作詞:アフロ 作曲:UK
自分の心を欺いたり、欲望に負けてしまうことは人間なら誰しも経験することではないでしょうか。
アフロだって、おそらくギターのUKだって同じです。
今はまだ夢の途中。この先にある大きな落とし穴に落ちてしまうかもしれません。
誰かの手招きを無視して地獄を見るかもしれません。そうなれば簡単に夢の道から外れてしまうでしょう。
しかしそんな想像もせず、アフロは自分に対して後ろめたい行動を一切排除して正直に歌を歌っています。
捕らぬ狸の皮算用をして怯むなんてナンセンス。常に本気です。
なぜそんなにも本気なのでしょうか。何が目的なのでしょうか。この問いは、曲の冒頭からずっと続いていました。
きっとアフロの目標・目的は、この歌詞の最後の文章です。
自分に嘘をつかず、常に100%の力で相手に立ち向かい、相手を受け入れて生きていく。
結果がどうであれ、不器用ともいえるこの生き方をしてきた自分が、後の自分を幸せにするはずです。
そして後の自分は不器用だった自分を慈しみ、幸せにしてくれるのでしょう。
リスナーの痛い部分を突き刺し続ける『五文銭』
2000文字を超える文字数で綴られる、リスナーを沈黙させる歌詞。
さぞかし難しいことを歌っているのだろうと予想した方も少なくないはずです。
しかし実際に紐解いてみると、難しい表現も言い回しも使われていないことが分かります。
だからこそ真っ直ぐに放たれ、リスナーの胸を穿ち、言葉を発せなくする衝撃をもたらすのでしょう。
過去の自分とまだ見ぬ自分を幸せにできるように。「全力で生きた」と胸を張れるように。
周囲に合わせようと必死な自分を脱ぎ捨てる勇気をくれる『五文銭』でした。
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