人に知られたくない自分の黒さ

必死で消す姿もまた、見られたくないですね。

お手上げの今を何に例える?

環境なんだって気が付いた
誰のせいにしていい?
仕方がない仕方がない選べなかったなら

出典: 誰のせい/作詞:渡辺翔 作曲:渡辺翔

作り笑いで自分を装う癖が身についてしまい、改善することもできない主人公。

どうにかしようと努力して足掻いても何も変わらない現状を「環境」という言葉に置き換えました。

この言葉は幅広い解釈ができますが「変えようがないもの」を意味しているのだと推測できます。

人は生まれたときの初期設定、親や国を選べません。自分の力で変えることもできません。これもひとつの「環境」ですね。

どうにもできないのだと、自分を納得させようとしているのでしょう。

心の片隅では「自分のせいだ」と分かっていても、誰のせいでもないのだと歌うのです。

消そうとしなくても消えて欲しい

目の回りそうな言葉を明日もまた
理解できずに笑いかわすでしょう
ひどい愚痴は儚い絵にしよう

出典: 誰のせい/作詞:渡辺翔 作曲:渡辺翔

自分の中の二人の自分が、終わることのない慰め合いをしているように感じます。

自分のせいだ。そうではない、環境がそうさせた。でも自分で変えられるはずだ。環境は変えられない。

一ミリとして離れていない場所にいる二人のやり取りを聞いて、何が正しいのか分からなくなります。

こんなときはどうすれば良いのか。と、考えなくても自然に笑顔が浮かんでしまうのが今の彼女です。

笑って片づける自分が嫌いなのに、それ以外にやり過ごす方法が見つかりません。

嫌いな自分へ悪態をぶつけたところで何も変わらないことも分かっています。

胸の中に膨らむ嫌悪を、彼女はどのようにして消化したのでしょうか。

嫌悪の思いを言葉にした途端、音として現実のものになってしまいます。音はすぐに止んでも、耳に届いた音の記憶は消えません。

できれば自然に消えてほしい。そう思った彼女はすぐに消えてしまう「絵」にすることに決めました。

例えば、砂に描いた絵。風が吹けば、あるいは波がなぞればすぐに消えてしまいます。

あえて消そうとしなくても勝手に消えてくれたらいいのに、という彼女の願望なのでしょう。

ただし、そこにあったという事実は一度でいいから形にしたいのかもしれません。

尖った思考は必ず悪なのか

多数決で「多」にいるとなぜか安心できる。そんな経験はありませんか?

では「多」が正しいのでしょうか。

世間一般の正しさに追いつけ!

手が綺麗と決めつけて理想を
どうして簡単に押し付けるの

出典: 誰のせい/作詞:渡辺翔 作曲:渡辺翔

本当の自分はもっと素直で純粋な存在なのだと、もうひとりの自分が思っているのかもしれません。

人に優しく、自己犠牲の精神を持ち、常に誰かの役に立とうとする美しい人。

そうである「べき」で、そういう存在の「はず」だと信じているのです。

だからこそ、「べき」「はず」に近づこうとしてしまう自分がいます。

一方で、別の自分はそれを否定しているようですね。

拭っても拭いきれない汚れがついているのに綺麗になれなんて無理だ、ということでしょう。

手が開けば落書きを残して
前後ろわかんない私に居場所を刻んだ

出典: 誰のせい/作詞:渡辺翔 作曲:渡辺翔

心の中に黒い渦が巻いていることを、もうひとりの自分に知らせたようです。

今よりもっと汚し、黒い自分の存在をアピールしました。

手に描いた落書きならそう簡単に消えることはないはずです。

「前後ろ」は、本当の自分と偽りの自分に置き換えることができます。

二人のうちのどちらが本当の自分なのか、彼女は今のところ判断できずにいます。

つまり、汚れている自分が本物だ、とも言い切れないということです。

だからこそ汚れをつけて、こちらが本物だとアピールしたのでしょう。

周囲に迎合する自分が正しいの?

もう誰の芸術で本物は死んでるの?
平気だった物さえも今日急に無理になる

出典: 誰のせい/作詞:渡辺翔 作曲:渡辺翔