彼女は醜い思いをすぐに消えてしまう絵にしました。
絵を描いたのは笑ってばかりの自分、消えたのは醜い自分です。
ついさっきまで二人は慰め、慰められる関係にありましたが、気づけば都合が悪い思考は隠蔽されました。
つまり自分にも裏切られたのです。
他人どころか、自分を信じることさえもできなくなりますね。
ねぇ普通ってどんなもの?価値のある容器なの?
さしていらないそれ捨ててまた一人になって楽になる
出典: 誰のせい/作詞:渡辺翔 作曲:渡辺翔
笑って誤魔化す自分は、なぜ笑うのでしょうか。
笑顔は他人の心を柔らかくするツールです。笑顔になることで、より多くの人と仲を深められるでしょう。
多くの人とは平均的な人。笑ってやり過ごし平穏な日々を優先する「普通の人」ではないでしょうか。
人の輪から外れると奇異の目で見られる現代。
「普通」でいることがスタンダードで、輪から外れない人が評価される傾向にあります。
一方で、そんな評価はおかしい、いらないと考えている人が一定数いるのも事実です。
この曲の主人公は後者ですね。
笑顔を取り繕うことにエネルギーを割くぐらいなら、他人に揶揄されても輪の外で気ままに生きていたいのです。
所詮夢なら消えてしまえ
演じてばっかの世界に残せるものはいったい何になるだろう
白い夢は儚い絵にしよう
出典: 誰のせい/作詞:渡辺翔 作曲:渡辺翔
嬉しさや楽しさから自然に笑顔を作るのではありません。
誤魔化そうと思った瞬間に自然に笑顔になってしまうのが彼女の癖です。
笑える現実でもないのに、笑顔になって普通の人間のフリをする。
本音を押し隠して外面の良さだけで生きていれば、話すことも作るものも何もかも中身が空っぽになるのではないでしょうか。
いつでも笑顔でいたい、人に嫌われたくないという願望ばかりが先行する日々。
言い換えれば「白昼夢」を見ている状態といえるでしょう。
汚れが何ひとつ無い夢、白々しい嘘という意味も込められているのかもしれません。
白昼夢も、汚れなき夢も彼女にとっては全て「嘘」。
素直な自分でいるために、こうした願望を絵にします。
炎天下のアスファルトに水で描いた絵なら、あっという間に乾いて消えていきますね。
正解もなければ正しさも決めつけない『誰のせい』
誰の身にも起こりうる、理想の自分と現実の自分の乖離を歌った『誰のせい』。
曲の中盤と終盤で二つの絵が描かれましたが、どちらも違う絵でしたね。
つまりこの曲では「正解がどちらなのか」というところには言及していないのです。
素直に生きられるのが良いに決まっています。
だからといって周囲とぶつかり続けながら生きていくのは違うような気がしますね。
理想の自分、本当の自分を今一度見つめ直したくなる『誰のせい』でした。
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