エレクトロポップの中でもレルエが新しく聴こえるのは?
シンセと打ち込みを全面に押し出したエレクトロというジャンルは今でこそ珍しくもありませんが、その中に置いてもミュージシャンたちは日夜試行錯誤を繰り返しているのですね。
また、「これは新しいな!」と思わせてくれるようなバンドがシーンに足を踏み込んで来ました。
エレクトロポップというジャンルもすっかり聴き慣れた昨今、レルエが何故そんなにも新しく聴こえるのか。
楽曲と向き合って見えて来たのは、ただ単に彼らが自分たちの世界観を表現しようとした結果なのではないか…というものでした。
ミニアルバム「UNITE」より「夜はモーション」を紹介!収録された曲目から感じられるのは?
今回紹介するのはそんなレルエが2018年9月19日にリリースした初の全国流通ミニアルバム「UNITE」に収録されている「夜はモーション」という楽曲。
「UNITE」に収録されている曲目を一見するとまず、彼らが表現したい世界観が少し見えてきます。
1.青とゲート
2.さよならマジョリティ
3.火花
4.夜はモーション
5.シルエット
6.#1
7.ネオサイン
出典: UNITE/レルエ
そう、ダークとまでは言わないまでも、どことなく薄暗いイメージを抱かせるタイトルが並んでいるのです。
今回紹介する「夜はモーション」を聴いていただくとわかるのですが、この楽曲も一聴した印象は「混沌」といったイメージを持っています。
例えるなら「混沌の中に迷い込んだ少年」
ポップなシンセサウンドに混ざる、流麗なバイオリンの音色。
もちろんギターやベースといったバンド楽器が入っているのもそう。
それらが混ざり合うことは珍しいことではないにせよ、ここまでそれぞれが主張しながら混ざり合っているものはそうないように思えます。
最新の電子音と古来のクラシック楽器、そしてロック畑のバンド楽器が濃く混ざり合うことで生まれるそれはまさしく混沌。
そういう曲調だということももちろんあるのですが、それ以上に楽器の絡み合い方が大きく作用しているように感じます。
そして決め手となるのはその音像の中で響かせる櫻井の歌声。
少年のようなあどけなさを持ったその声は、混沌としたその世界に迷い込んだような感覚をより強調します。
そう、彼らの表現している世界観を例えて言うなら「混沌の中に迷い込んだ少年」といったところ。
まだ非力な少年では想像するにどうしようもない状況。胸に迫るものがあるわけです。
聴いてみての解釈はほどほどにしておいて、気になってくるのは肝心の彼らが楽曲にどんなメッセージを持たせているのかということ。
ここからはこの曲の歌詞の内容を読み解いていくことにしましょう!
きっと彼らが何を表現しようとしているのかも、見えてくるはずです。
自分の行くべき道を見失った主人公の葛藤
響き合った僕らのブルー
澄み切った世界じゃ目につくんだ
見失った大人の切れ端が
濁った海に溶けていった
出典: 夜はモーション/作詞:櫻井健太郎 作曲:櫻井健太郎
「大人になるとは一体なんなのか」
これは思春期の頃なんかに、多くの人が突き当たる疑問ではないでしょうか。
子供の頃とは違って大人になれば自分の足で歩いていかなければならないのです。
全く経験がないのだから、この先の生き方を考えないといけないなんて言われても戸惑うのが当たり前ですよね。
それと同じようにこの部分で歌われるのは、大人とは一体なんなのかということを見失った主人公を表しています。
と言っても主人公のそれはきっと、もう大人として踏み出した後の話。
大人になってからだって、自分の行くべき道がなんなのかわからなくなることはあるものです。
「澄み切った世界じゃ目につく」と言っているように、そうやって悩んでいるときって、それが自分だけのことのような孤独感を感じるものですね。
思いを馳せるのは夢を誓ったあの日のこと
此処で歩き出した僕の心
褪せた色と海岸、あの子
走り出したあの日の僕
いくつも横切ったんだ
出典: 夜はモーション/作詞:櫻井健太郎 作曲:櫻井健太郎
日々生きていく中で自分を見失ってしまった主人公が想いを馳せるのは、自分が歩き出した日のこと。
例えば夢を追い掛けていて、どうしてそれをやっているのか見失ってしまったときというのは、きっときっかけを振り返るものではないでしょうか。
その日を思い出したときに過った「あの子」に対して、主人公は夢を誓っていたのでしょうね。