彼の願いはもう一つあるようです。
影の道を辿ってきた主人公ですが、その戦いは未来を救うためのもの。
救われた世界で、人々が希望を叶えながら生きていく様を見たいと願っています。
それができるようになった時、主人公はそんな世界を生きて見ることはできないかもしれません。
たとえ魂だけの存在になったとしても、救われた世界を眺めるために戦い続けます。
星の歌
翼を欲しがって誰もが泣いていた
命が奏でる
満天のコーラス
出典: 満天/作詞:梶浦由記 作曲:梶浦由記
未来を羽ばたける翼を欲しがる人は多いでしょう。
ですが、その翼は誰にでも手に入れられるものではありません。
飛翔できるのは力を持ち、勝ち続けられた者だけなのです。
逆にそうできない人は、自分の弱さを嘆き悲しむのかもしれません。
やがて悲しみの声が歌声になって、たくさん集まると「コーラス」となります。
夜空に浮かぶ星々は、こうした悲しみの集まりでもあるのでしょう。
叶わなかった祈りとは確かに未来を閉ざされ、悲しみをまとうものです。
戦い続けた末路とは
一人で戦い続ける主人公の先には、何が待ち受けているのでしょうか。
星となった祈りは報われるのかも気になります。
悲しみに終わりを告げられる時はいつなのか。
曲の終わりと共に明らかになるでしょう。
破れた願いが未来を繋ぐ
焼け焦げた願いが
空を抉じ開ける頃に
懐かしい故郷は
きっと花の盛りでしょう
激しく瞬く星たちの夢の跡
出典: 満天/作詞:梶浦由記 作曲:梶浦由記
打ち砕かれて、それでも諦めたくないと強く輝いた祈り。
その輝きとは、燃えることで生み出す光だったのでしょう。
太陽を始めとした恒星は、自ら燃えることで輝きを放っています。
天に反旗を翻してギラギラと燃えながら輝いた結果、すっかり焼け焦げてしまったのでしょうか。
そして最終的に、星となった願いは超新星爆発を起こすのかもしれません。
爆発したら空に穴が空いたりして。
2行目の「抉じ開ける」はその様を歌っているのでしょう。
叶うことができなかった願いが、運命に一矢報いた瞬間です。
空にできた穴は、星たちの反抗の跡となって残る。
その頃、自分が生まれ育った故郷は美しい花を咲かせます。
これらは「救われた」ということの象徴かもしれません。
安息の地はどこに
安らぎのあると人の言う
最果てまで
月影優しく
行く路を教えてよ
出典: 満天/作詞:梶浦由記 作曲:梶浦由記
戦い続けるのは心身ともに傷つき、摩耗するものです。
そんな時人は休みたい、心穏やかに過ごしたいと思うことでしょう。
安らぎを求める主人公に、周りの人は「安息の地は最果てにあるよ」と教えました。
これは特定の誰かが実際にそう言っているのではなく、一般論のように思えます。
世界の果てにあるという安息の地。
そんな場所が本当にあるのでしょうか?
少なくとも主人公は安息の地の存在を信じて、そこを目指しています。
ただでさえ傷だらけでボロボロだから、最果てへの道は優しく教えて欲しいものです。
夢が終わるその時まで
静かに瞬く星たちの
祈りの空
貴方の叫びで
この夢が終わるまで
出典: 満天/作詞:梶浦由記 作曲:梶浦由記
叶わなかった祈りが輝き続ける夜空。
主人公が戦い続ける限り、この星々は光り続けることでしょう。
逆にいえば彼の夢が終わる時、星々は役目を終えて消えていくのかもしれません。
それとも、空を墜とすのでしょうか。
「叫び」というのは、歓喜の声にも断末魔にも感じられます。
どちらであってもそれこそ主人公が結末に辿り着いた瞬間であり、その時はいつか必ず来るのです。
ハッピーエンドでもバッドエンドでも、それほど変わらないのがまた切なさを感じさせます。