手招きで呼び込む悪魔の存在
あたしの心の深い闇の中から
おいで おいで
おいでをする人 あんた誰
出典: 夜へ急ぐ人/作詞:友川かずき 作曲:友川かずき
悲哀感に苛まれている主人公。
もう1人の自分が、心の奥底から手を出し這い上がってくるような様相も垣間見えます。
「天使と悪魔」が交錯しているのです。
心に潜む悪魔が「おいで」と、誘う先とは?
危ない情事へと、再び引きずりこもうとしているのでしょうか。
決して越えてはいけない線など存在しないと、語りかけてくるのかもしれません。
自暴自棄になる自分を、分身が危険な過去の記憶へと手招きで誘い込んでいるのでしょう。
ともすると、正気の沙汰ではないのかもしれません。
3行の歌詞からは、聴く方それぞれで受けとりかたが異なります。
あなたのおかれている状況と感情により、様々な捉え方ができるのではないでしょうか。
目の前の海で溺れ死んでいたかもしれない
『ネオンの海に目を凝らしていたら
波間にうごめく影があった』
出典: 夜へ急ぐ人/作詞:友川かずき 作曲:友川かずき
ここから数行は、リズムに乗り唄うというよりは詩の朗読をしているようなのです。
過去の記憶を辿っているのでしょうか。
ただただ一心に見つめる、主人公。
その先には、かつて自分も渡りきろうとしていた「夜の街」。
水面下では、男女の「恋路の果て」が浮いてはまた沈みを繰り返しています。
そこには過ぎし日の、自分自身の姿も微かに見えたのかもしれません。
期待や夢に、敗れた者にしか見えない景色なのです。
泥舟には乗り込むな!
『小舟のように あっけないそれらの影は
やがて哀しい女の群と重なり
無数の故郷と言う 涙をはらんで
逝った』
出典: 夜へ急ぐ人/作詞:友川かずき 作曲:友川かずき
一夜の駆け引きではじまった、「恋路」。
そんなものなど、ただ刹那的だといっているのでしょう。
「夜の海」を渡りきるには、よほどの覚悟が不可欠なのです。
「影」とは、おそらく情事のことを表しています。
決して成就することのない、危険な恋愛を比喩しているのです。
時には人の心を癒し、ユラユラと目映いネオンの光。
人間の情念が渦巻き、どこか「海」のようにも感じたあの頃。
その成れの果てが、波間に溺れ浮き沈みしているように見えたのでしょう。
「恨み」や「妬み」など、女性の痛ましい想いがヒシヒシと伝わってきます。
結局いつも、最後に泣くのは「女」の方。
男はいつまでも女の気持ちを読みとることはできないと、訴えかけているのです。
遠い記憶
踏みにじられる花びら...
にぎやかな 夜の街角で
かなわぬ夢の別れいくつ
出典: 夜へ急ぐ人/作詞:友川かずき 作曲:友川かずき
分け隔てなく無条件に受容れてくれる、「ネオンの夜」。
一見楽しげな情景も頭をよぎります。
ですが、夜の海では幾多の恋路が散っていったのでしょうか。
「こんなはずではなかった」と、後悔と懺悔の念が足元に埋もれているのです。
そんな夜の街を、次に訪れた時にはしっかりと踏みしめたいという慈愛も垣間見えます。
様々な恋
勇気で終わる 恋もありゃ
臆病で始まる恋もある
出典: 夜へ急ぐ人/作詞:友川かずき 作曲:友川かずき