曲の生い立ち
今回ご紹介するのは浜田省吾の「君の名を呼ぶ」です。
まずは、この曲の生まれた経緯について少しみていきます。
曲から歌詞までの時間
「君の名を呼ぶ」は、浜田省吾が作詞、作曲を手掛け自ら歌っています。
現在では浜田らしい曲として愛され、カラオケでも楽しむ人の多いバラードです。
曲と歌詞はそれぞれで作り出されるというパターンも多い中、一人の作り手によって生まれたこの作品。
その分、思い入れが感じられます。
曲と歌詞がしっくりと結ばれた「君の名を呼ぶ」は、たくさんの人を魅了しています。
男性の片思いソング
「君の名を呼ぶ」は、切ない男性の恋心を描いています。
どんな男性の恋物語が歌われているのでしょうか。
叶わぬ想い
この曲は、男性の片思いを歌い上げています。
主人公である男性または、片思いの相手の女性、どちらかの事情で結ばれることはない恋。
女性にとっての「好き」と「成就」はワンセットです。
好きな相手であれば、最終的な結果がどうあれ成就させたいと思います。
一方で、進む先に「幸せ」が見えない恋には突き進むことができないのが男性です。
想いが実った後の「幸せ」が具体的に思い描けないと関係の駒を進めることができません。
衝動的に彼女を「好き」でいながら、諦めるべきとわかっているような恋に主人公は心焦がしています。
「好き」と「この先の幸せ」とを結びつけられない時に男性はどんな風にもがき苦しむのでしょうか。
主人公の想いを読み解いていきます。
想いの行方は
火の中に飛び込むような恋 愚かだとわかっている
プールの底 沈んで見上げた 太陽のように
ゆらめいて(砕けて)掴めない でもキラキラ輝いている
黄昏に 真夜中に 明け方の空に ギター弾くように君の名を呼ぶ
せつなくて 苦して 息が止まるほど君が欲しい 今すぐ
出典: 君の名を呼ぶ/作詞:浜田省吾 作曲:浜田省吾
自分では止められない恋心
恋心は突然にやってきます。
自分の好みの誰かに出会った時や、ずっと知っている誰かと心が通い合った瞬間など。
生まれた恋は、淡くほんのりとしたものであることもあるでしょう。
主人公の恋心は情熱的で勢いよく燃えているようです。
夏の太陽に照らされた瞬間のように熱く滾りながら、陽炎のように揺らめいています。
障害なく突き進むことができる恋ならば、その輝きは直接主人公に降り注ぐでしょう。
何かしら、前に進めない恋だから、その炎は水の底から見上げるように光が遮られています。
想いのままに突き進むことができる恋ならば、まぶしさの後に徐々に優しい炎に移行したはずです。
恋心が燃え上がった瞬間から、それが成就することはないとわかっている恋。
そんな恋の場合は、まぶしさだけを瞼に残しながら、静かに夕暮れへと時間が変わっていきます。
苦しいのはなぜ
相手を思う「好き」というのは本当であれば幸せな気分のはずです。
相手を思って「好き」故に苦しみを感じるのはどんな時でしょうか。
女性の場合は、相手に対する嫉妬心というのが一つあります。
また、相手の男性の想いがこちらの希望より「少ない」と感じた時にも苦しくなるでしょう。
男性の場合はいかがでしょうか。
好きな人の気持ちがこちらに向いていない時はもちろん苦しくなります。
また、自分には好きな人を幸せにする手段がないと思った時にも苦しくなるようです。
例えば既に自分には守るべき家族がいる場合で、他の誰かに心惹かれた場合。
もしくは、事情があって彼女の思い描くような幸せを与えられないとわかっている場合などです。
そのような場合であれば、どんなに好きでも未来はありません。
いずれにせよ想いと現実が一致しない状態に主人公の男性はもがき苦しんでいるようです。