真っ逆さまに落っこちた ふとした刹那につまづいて
マンホールの中に落っこちた そこからはパラノイア
心臓のあたりで少年が ひたすらバタバタ駆け巡るまま
今日は何して遊ぼうか がらくたの街の中
出典: 爱丽丝(アリス)/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
まずはAメロです。
最初のフレーズ「真っ逆さまに落っこちた」。
ここで『不思議の国のアリス』のモチーフが出てきますね。
アリスは白ウサギを追いかけて「ウサギ穴」に落ちるのです。
ここでは「マンホール」になっていますね。
"穴に落ちる"というのは、日常からの脱却という意味。
いわば異世界へとつながるルートです。
"刹那"というのは"瞬間"という言葉に置き換えられます。
ただ、"刹那"という言葉を使った方が美しく表現できるかもしれません。
Bメロ
姦(か)しまやかしお伽の国で 兎の背中を追いかけていた
どこかの誰かが蓋を開いて ばら撒いた空騒ぎを見ていた
出典: 爱丽丝(アリス)/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
次はBメロです。
さっそく『不思議の国のアリス』に出てくるような言葉遊びが、ここでも使われています。
"姦しまし"は"かしまし"と読みます。
"かしまし"というのは騒々しいという意味。
次に"まやかし"。
これは言葉通りの意味です。
"偽物"や"ごまかす"という意味ですね。
この2つの言葉がつながると「姦しましまやかし」。
ひらがなに読み下すと「かしましまやかし」。
文字として表すと、どこが区切りなのか分かりませんよね。
まさに「かしましまやかし」です(笑)
「どこかの誰か」というのは、この曲の主人公のことでしょう。
主人公は、"蓋"という"パンドラの箱"を開けてしまった。
そのために主人公はキテレツな世界へと繰り出すことになります。
サビ
曖昧な意識で彷徨った 摩訶不思議なアドベンチャー
虚しさを抱えたまんま 愛を使い果たした
何の話をしていたっけ フラついて零したブランデー
全てを明日に任せて踊ろうぜもっと
出典: 爱丽丝(アリス)/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
サビの歌詞です。
ここでも『不思議の国のアリス』のモチーフが織り込まれています。
モチーフというよりテーマかもしれません。
『不思議の国のアリス』のテーマの一つに、ナンセンスがあります。
「全てを明日に任せて踊ろう」という歌詞。
ここでは虚無的なナンセンスが表現されていますね。
人生など意味がない、今自分が生きていることに意味などない。
だから精一杯今(現在)を楽しみ、生きよう。
酒の勢いも手伝って、主人公の気分はまさに"へべれけ"。
決してネガティブな思考方法ではないと思います。
アリスも、目の前に起きた「摩訶不思議」なできごとに対して、決して否定しませんでした。
それどころかめくるめく物語(ストーリー)を楽しんだ彼女。
そこには、「楽しんだ」という以外、何の意味もありません。
本曲中の主人公は「アリス」。
タイトルは漢字で表記されていますね。
「爱丽丝」という文字を見ると、なんだかアリスが幻術でも使いそうな感じです。
そして、この言葉を漢字にすると文学的に写ります。
タイトルを敢えて漢字にしたことで、稀代のアーティストである米津玄師のプライドが垣間見られます。
2番Aメロ
真っ逆さまに落っこちた さよなら数多のつまらぬ日々よ
計画もなく息巻いて 飛び込んだメトロの中
こんな日々すら万が一 夢幻ならどうしようか
まあそんならそれで大歓迎 こんにちは元の鞘
出典: 爱丽丝(アリス)/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
2番Aメロで主人公が"落っこちた"のは「つまらぬ日々」。
マンネリ化した毎日です。
憤懣やるかたない気持ちのまま、地下鉄へと乗り込んだ主人公。
その次の"夢幻"という言葉は"無限"という言葉に変換できます。
音声で聞くとダブルミーニングになるのですね。
主人公が自身の人生に対して、不満を抱えているのは明らかです。
現代の『不思議の国のアリス』
2番Bメロ
「この街はもう駄目だすぐに逃げろ」と メゴラに跨る魔女が言う
実を言うならばそんなこと知ってんだ とかくわたしは疲れ果てたんだ
出典: 爱丽丝(アリス)/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
2番目のBメロでは、米津バージョンの「アリス」が描かれます。
メゴラとは、1920年代に生産されていたドイツのバイクです。
アンティーク調のデザインが素敵なバイク。
このバイクに魔女がまたがります。
まるで映画『マッドマックス』の世界のよう。
これは明らかに「魔女がホウキにまたがる」という言い伝えを踏襲したものですね。
"とかく"というのは"とにかく"の古い言い方。
この辺りも米津玄師の文学好きが出ています。
「この街」とは主人公が住む街のことでしょうか?
特に具体的な都市は、歌詞に出てきません。
リスナーの方は、それぞれ自分が住んでいる街に置き換えて聴いてみましょう。