これまで男性はたしかに別れを切り出した彼女に語りかけていました。
ただ、彼女が話を聞いてくれない様子だったので、2人の間には少し距離があるイメージだったかもしれません。
しかし実際はバックハグ状態でした。
これが少女漫画や恋愛ドラマならロマンティックな展開も考えられます。
ところがこの歌詞では、彼女が男性に背を向けているのに、男性が彼女にすがっているわけです。
彼女の心がもう男性のほうには向いていないことを表しているのでしょう。
裏切り=心離れ、そう考えられます。
難しいのは「青春の手前」という表現が重ねられている点かもしれません。
今このタイミングで別れを切り出すなんて、それはあり得ないというニュアンスが伝わってきます。
つまり「青春の手前」=「今このタイミング」です。
もしかしたら「青春」は何か具体的なたとえなのでは?と想像することもできるでしょう。
青春の手前はいつ?
意味ありげな青春
Baby スニーカーぶる~す
Baby この世界中
Baby 涙でびしょぬれ
Baby スニーカーぶる~す
Baby 俺達はまだ
Baby 青春知らずさ
出典: スニーカーぶる~す/作詞:松本隆 作曲:筒美京平
「ベイビー」の繰り返しが耳に残り、タイトルも登場するサビです。
実はここでも何やら意味ありげに「青春」という言葉が出てきます。
いったいこの2人は何を知らないのでしょうか。
本当の愛
これは近藤真彦さんの大人っぽいキャラクターに合わせたコンセプトだったのかもしれません。
たとえば山口百恵さんの「ひと夏の経験」のように、大胆なのか純情なのか、とまどう歌詞もあります。
10代なのに大人っぽいアイドルということで、もしかしたらと想像されるストーリーもあるでしょう。
ただ、あえて具体的な表現をせず、「青春」というメタファー(暗喩)を用いているわけです。
「青春」に当てはまる言葉は、この歌を聴く人それぞれに委ねます。
そういう話でしょう。
たとえば「青春」=「本当の愛」と置き換えられるかもしれません。
2人のつき合いは1年未満でした。
これから冬を乗り越え春になれば、今より愛が深まった可能性もあります。
彼女の心変わりさえなければ、いずれは「本当の愛」へと成長したはず。
愛が本物になる手前で別れたら、本当の愛を知らないままになる。
そう解釈しておきましょう。
本当の愛は叶わない
まぶたの意味
Zig Zag Zag, Zig Zag Zig Zag
一人きり
うつむいたまぶたに
最後のくちづけ
Zig Zag Zag, Zig Zag Zig Zag
二人きり
偽りのやさしさで
俺を泣かせるなよ
出典: スニーカーぶる~す/作詞:松本隆 作曲:筒美京平
結局彼女は5分なら構わないと最後に男性の話を聞くことにしたわけです。
そして男性が彼女の背後からハグ。
これまでは顔を見合わせていませんでしたが、ここでは向き合いました。
そして彼女のまぶたに接近します。
年齢のわりに大人っぽい男性のイメージと思われますが、目というところが「青春の手前」なのかもしれません。
この男性の行為を彼女が受け入れたのは、残念ながら「本当の愛」ではないという話でしょう。
こうした彼女の気持ちが伝わってくるので、男性は涙を流しているのです。
ファズギターとは?
街角は雨 ブルースのようさ
胸で Fuzz Guitar
かきならすようさ
出典: スニーカーぶる~す/作詞:松本隆 作曲:筒美京平
件の5分というのは、実はこの歌1曲分とだいたい似たような時間です。
この「スニーカーぶる~す」という歌を聴いてほしいと呼びかける意味もあったのでしょう。
そしてジグザグというキャッチーなフレーズで表現されていたとおり、男性はずっと泣いていたことになります。
さらに最後この歌を音楽にたとえてまとめるところが松本隆さんの真骨頂!
泣きのブルースは前述のとおりです。
ファズギターは「ギュイーンと歪(ひず)んだ音の鳴るギター」といえば伝わるでしょうか。
具体的にはファズという歪み系のエフェクター(音響効果を与える装置)をギターにつないで鳴らします。
ファズといえばブルース&ロックの神様ジミヘンことジミ・ヘンドリックスが連想されます。
彼が愛用したDUNLOPのFuzz Faceがお気に入りというギタリストの方もたくさんいるでしょう。
ちなみにロバート・ジョンソンはアコースティックギターによるボトルネック奏法の名手でした。
「スニーカーぶる~す」ではアコギのロバートよりもエレキのジミヘンを強く意識されたようですね。
もしかしたら稲妻のようなジグザグという表現にジミヘンのエレキギターの音色を重ねたのかもしれません。