不世出のアイドル

西城秀樹シングル通算25枚目の発売曲が「炎」でした。

既にデビューして6年目。当時、新御三家として不動の地位を築いていました。

しかしながら、歌手西城秀樹の真骨頂は、ますます昇り龍が如く、突っ走っていた時期です。

西城秀樹の曲の魅力は、アイドル歌手でありがながら大人の愛を歌った歌詞を扱っていたこと。

男女の愛を、熱く激しく、そして時に絶望を思わせる歌詞をメインにした楽曲が多かったのです。

「炎」もそんな類にもれず、男性の激しいながらも一途な思いを歌詞に込めています。

惜しくも63歳で世を去ってしまった不世出のアイドル、西城秀樹の楽曲を掘り起こしましょう。

「炎」は全ての男性に送る恋の応援歌

阿久悠が手掛けた作品

「炎」の主人公は、恋に命を賭ける全ての男性です。

恋の始まりは、いつも突然起こります。そして一旦、恋の炎が燃え上がったら誰にも止めることは出来ません

そんな熱い恋を綴った「炎」。作詞を手掛けたのは、今や伝説の域に達した感のある阿久悠です。

ただ、恋の相手となる人物像については、はっきりした描写はありません。

よって、主人公がどんな女性を好きになったのか。その点については分からないのです。

しかし、それが歌詞から様々なことを想像できる醍醐味なのです。

恐らく、そこが作詞を担当した阿久悠の狙いだったのでしょう。

だからこそこの歌は、世の全ての男性が思いを共感できる「かっこいい」作品となったのです。

恋のチャンスは誰でも平等

恋というものは、誰にも平等にチャンスがあります。

そして、ひとたび恋の炎が燃え上がれば誰にも邪魔することはできません。

「炎」で描かれる主人公も同様です。

一度、燃え上がったこの気持ち。そう簡単には抑えられません。

それが「恋」というものです。

だから、恋の成就を願って人はエネルギッシュになれます。

相手がいくら難攻不落の強者でも、一途にアタックできるのです。

「炎」に登場する主人公も、簡単に攻略できない相手だと気づきました。

しかし、一旦燃え上がった恋の炎はそうやすやすとは鎮火しません。

若さの特権ともいえる「恋」のチャンス。じっくり歌詞をみていきましょう。

氷のような女性?

恋のターゲットは超難関

あなたのからだはあまりに冷たい
心の熱さを探せやしない

出典: 炎/作詞:阿久悠 作曲:馬飼野康二

まず、主人公がターゲットにした女性の紹介から始まります。

しかし、それは自己紹介のような簡単な紹介ではありません。

主人公が、ありのままに思った率直な彼女の特徴なのです。

好きになった女性の年齢や職業、身分などについては一切触れていません。

主人公は、ふとしたきっかけである女性に一目惚れしてしてしまったのです。

ところがその女性は、そう簡単に異性からの誘いや会話にのってくれるような人物ではありませんでした。

心は固く閉ざされていて、笑顔ひとつ返してくれないのです。

周囲を圧倒するこの異様なほどの冷たい態度は、しかし却って惚れた主人公の気持ちを燃え上がらせます。

主人公の男性は、何とかして女性のハートに近寄ろうとするのです。

冷たく輝く彼女の内面

それともガラスの細工のような
キラキラきらめく氷のハートが

出典: 炎/作詞:阿久悠 作曲:馬飼野康二

主人公の男性は一目惚れしたときから、女性のハートに心を鷲掴みにされていました。

女性の心は、まるで透き通った透明の彫刻のように気品があふれていたからです。

冷たさの中に、何者も寄せ付けない輝かしいオーラを感じていたのです。

だからその女性には、今まで大勢の男性がアタックしてきました。

時折見せる氷の微笑に、世の男性たちはたちどころにノックアウトされていたからです。

主人公の男性も恐らくその一人だったのです。

しかし主人公の男性は、ライバルたちをも寄せ付けない女性の美貌にやられたのではありません。

女性の心の奥に潜む、孤独な気持ちに気付いたからこそ、恋の虜になったのです。

意を決して行動を起こす主人公

あなたの心を見てしまったから