隠れた名曲

テーマは「海」?

サカナクション6枚目のシングルに収録されたカップリング曲【ネプトゥーヌス】。

ローマ神話に登場する海の神様の名前がつけられています。

歌詞では、漠然とした不安を抱く主人公の心模様が繊細に描かれていました。

歌詞の舞台と、その主人公は?

主人公はどこにでもいる普通の男の子

舞台はそんな主人公の部屋で、幕開けは人々が寝静まる夜更けです。

ベッドにもぐりこんでいる主人公こそ、まさにネプトゥーヌス

彼こそが「自分の部屋」という大海原を支配している神様なのです。

神様という響きから想像できるように、主人公は日々たくましく堂々とした姿を見せているのでしょう。

しかし自分の本拠地である大海原、つまり自分の部屋に戻ってくるとその威厳は失われます。

彼が心の内に秘めている想いとは?彼が感じる痛みの正体とは?さっそく迫っていきましょう。

真夜中の主人公

部屋の中=海

あと少しだけ 僕は眠らずに
部屋を暗い海だとして 泳いだ 泳いだ

出典: ネプトゥーヌス/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎

人々が寝静まる頃。主人公も例に漏れずベッドにもぐりこもうとしていたのでしょう。

しかしいつまでもベッドには入らず、部屋の中を徘徊しているようです。

2行目後半では「泳ぐ」と表現されていますが、まさに自室を大海原とする比喩でしょう。

きっとこの行為自体に深い意味はありません。

ただ主人公には、きっとじっくり考えたいことがあったのです。

考え事をしながら、無意識に右往左往してしまうことはありませんか?そのようなイメージです。

自分の部屋というリラックスできる空間でじっくり考えることで、何かを振り払いたかったのかもしれません。

そのものこそ、後半に登場する「痛み」に繋がっていくと考えられます。

ベッドの上はやわらかな砂浜

あと少しだけ 僕は眠らずに
潜り込んだ布団の砂でほら 明日を見ないようにしていた

出典: ネプトゥーヌス/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎

動き疲れた主人公はベッドで身体を休めることにしたようです。

しかし疲れ果てた肉体とは裏腹に、頭だけはいつまでもスッキリ冴えています。

ベッドに横たわると、基本的には他にやることがありません。寝るか、何かを考えるかの2択でしょう。

しかし頭が冴えてしまえば選択肢は1つ消えますから、必然的に何かを考えるしかなくなるというわけです。

邪念がない状態で考えると、普段以上に様々なことが思い浮かぶもの。

だからこそ、考えたくないことまで考えてしまうのでしょう。

主人公は日々の生活に希望を見いだせていないようです。

頭が勝手に考えてしまう明日のことと、それを考えたくない主人公の感情がぶつかり合っています。

感じたくない痛み

痛いのは まだまだ慣れてないからかな
僕は 砂 深く深く埋もれてしまったんだ

出典: ネプトゥーヌス/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎

ここでの痛み。これはきっと肉体的な痛みではありません。

彼が感じているのは、彼の心が軋んでいることによる痛みでしょう。

繰り返しますが、主人公がいるのは自分の部屋という大海原。

つまり自分の部屋は主人公が支配する王国です。

彼は支配者ですから、自分が気に入らないものをすべて排除することができます。

さらに自分が好きなものだけを持ち込むことができるはずなのです。

しかしこの歌詞を見る限り、それは叶っていません。

主人公の王国にとって招かれざる客である心の痛み

前半で意味もなく右往左往していたのも、これが原因でしょう。

この痛みの正体は、これ以降の歌詞を見てもハッキリとは明かされていません。

きっとこれは、聴く人によって異なる痛みなのではないでしょうか。

学生や会社員にとっての複雑な人間関係かもしれません。

はたまた新しい環境に飛び込むことへの緊張感なのか、失敗を恐れる不安なのか。

そういった、人それぞれが抱えている何かしらのネガティブな気持ちが「痛み」なのでしょう。

この物語の幕開けは夜遅い時間でした。自分の部屋にこもっていられる、至福の時間です。

この時間帯も大きなポイントで、主人公を守ってくれる1つの要素として扱われているのでしょう。

そうして外部環境に晒されることがない時間の安心感に守られている主人公。

砂という布団を深くかぶり、さらに自分自身を守るかのような行動をとっています。

布団を被ったところで心は守れませんが、どことなく安心できるという本能的な行動なのかもしれませんね。

ずっと浸っていたい