あと少しだけ 僕は眠らずに
床を深い海の底として触った 触った
あと少しだけ 僕は眠らずに
脱ぎ捨てられた服がほら まるで抜け殻に見えたんだ
出典: ネプトゥーヌス/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎
主人公が砂浜にもぐりこむ前のシーンに戻ったようです。
暗い部屋の中をグルグル歩きながら、そこにある物体に触れてみる。
心という見えないものの痛みだけでなく、可視化できない曖昧さにもストレスを感じているのかもしれません。
だからこそ2行目・4行目にある通り形あるものに触れ、それを見ることで気を紛らわしているのでしょう。
何かしていないと、また余計なことを考えてしまう。自分の心が痛みに支配されてしまう。
自分の支配下にある場所で得体のしれないものに支配される恐怖心が、薄暗い部屋の雰囲気とともに伝わってきます。
それでも感じてしまうこと
気がつけば朝
あと少しで 僕は眠るだろう
部屋に滑り込んできた光が まるで何かを言うようだ
出典: ネプトゥーヌス/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎
ここまで考え続けて、ようやく主人公の心にも疲労が訪れたようです。
しかし残念ながら、訪れたものがもう1つ。
深い夜の終わりを告げる光もやってきました。主人公が恐れていた瞬間の到来です。
主人公にとって自分を守ってくれるような時間だった夜。
そこに差し込む朝日はまるで、暗闇をスパッと切り裂くような大剣にも見えます。
2行目後半「まるで~」とありますが、何を言っているかまでは明記されていません。
もちろん比喩表現だからとも考えられますが、主人公が聞く耳を持っていないことの表れかもしれませんね。
逃れられない痛み
痛いのは まだまだ慣れてないからかな
僕は 砂 深く深く埋もれてしまったんだ
痛みに まだまだ慣れてない僕だから今は
明日の砂 深く深く埋もれて眠るんだ
僕は砂
僕は砂
出典: ネプトゥーヌス/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎
これまでは心の痛みを感じると、自分自身を守るため布団の中にもぐりこんでいました。
しかし3行目ではこれまでと違った動きを見せています。
直前の歌詞では夜が明け、朝日が差し込んでいる様子が綴られていましたね。
そんな現実に直面した主人公はどうしたのか。
それが3-4行目の歌詞です。主人公はいまだ痛みを飼い慣らすことができていません。
であれば取るべき方法はただ1つ。その痛みから引き続き身を守り続けることだけです。
朝になれば布団から出て、自分がやるべきことを始めるのが一般的でしょう。
布団は夜になったら戻る場所、そしてまた翌日まで自分自身を守ってくれる場所です。
本当はもぐりこむのを我慢して、夜を待たなくてはなりません。
しかし痛みから逃れることしか考えられない主人公は、4行目ですでに未来のことを歌っています。
ここは2通りの解釈ができそうですね。
1つはすでに夜のことを考え、早く砂に埋もれて痛みを忘れたいと願う気持ちの表れ。
そしてもう1つは現実逃避し続け、砂から出ることなく1日を終えようとしている主人公の描写。
続く5-6行目の歌詞を含めて捉えるなら、後者の解釈が正解かもしれません。
これまでは布団という砂に埋もれていただけの主人公は、もはや砂と同化しています。
それほどまでに痛みを恐れ、痛みから逃げ、守ってくれる場所へ依存しているということでしょう。
神が砂に埋もれたいのは何故か
海の神であったはずの主人公は最終的に、海の一部である砂になっていました。
ここから推測できること。
それは神のように強く見える人だって、内面には様々な感情を抱えているということではないでしょうか。
堂々と振舞っていても、傷つくことはたくさんあるでしょう。しかしそんな素振りは見せようとしません。
何故なら神だから。弱さを見せたくないのです。
それでも海=自分が安らげる場所に戻れば、その日に負った傷の痛みも思い出します。
安らげる場所で傷をじっくり癒すうち、再び痛みを感じるかもしれない未来へ不安を覚えることもあるのでしょう。
何回経験したって慣れるはずはありません。
強そうに見える人だって同じ人間。様々な感情を抱きながら生きているんだ。
そんなことを感じ取れる楽曲でした。
最後に
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