昨日の夜のことはそこまで覚えてないけれど
美人局を疑う、そんな気もしないでいる
二日酔いも醒めた頭で考えていたけど、わからないままでもいい
むしろその方がいい

出典: 花人局/作詞:n-buna 作曲:n-buna

彼女は確かに、主人公のことを愛していました。

日々の行動から、かけてくれる言葉から、隣で見せる笑顔から……。

彼女の愛は、主人公に伝わっていたはずです。

しかしあの日、別れを告げたその顔は、今までに見たことのなかった悲しい顔をしていました。

これまでの日々は嘘だったのかと、なぜか裏切られたような気さえしてくる主人公。

既にアルコールが抜け、何もかもを思い出したはずなのに、どうしても答えが見つからないままなのです。

彼女は本当に自分を愛していたのだろうか。

彼女は本当に、ここにいたのだろうか……。

意味のない問いかけに誰かが応えてくれることはなく、ただ悲しみが増すばかりです。

お互いを生かし合っていたあの頃

もう同じ季節を過ごすことはない

ヨルシカ【花人局】歌詞の意味を解釈!夕焼けをじっと待つ理由は?僕にひとつ花が残された真意を深読みの画像

窓際咲くラベンダー、汚れたシンク、編み掛けのマフラー、
覚えのない事ばかりだ
部屋には春の匂いがする

出典: 花人局/作詞:n-buna 作曲:n-buna

日々の食事からインテリアまで、さまざまなことに気を回してくれていた彼女。

主人公は、そんな彼女の作る食事で生かされていたといっても過言ではありません。

簡単な日用品を処分したからといって、彼女の面影が消えることはないのです。

部屋の隅々に、頭の中に、身体の中に、彼女の全てが詰まっているようにも感じられます。

作りかけていたマフラーは、今年の冬も主人公と共に過ごすためのものだったのでしょう。

もう二度と完成することのない毛糸の塊は、ほどけて消えてしまいそうな主人公を表しているようです。

花の代わりに消えた貴方

ヨルシカ【花人局】歌詞の意味を解釈!夕焼けをじっと待つ理由は?僕にひとつ花が残された真意を深読みの画像

浮雲掴むような花人局
誰も来ないまま日が暮れて
夕陽の差した窓一つ
何も知らない僕を残して

出典: 花人局/作詞:n-buna 作曲:n-buna

男女が共謀して人をだます「美人局」。

しかし彼女の場合は、ただ自分の代わりに花をぽつんと置いていっただけの別れでした。

それはまるで、「私の代わりにして」とでもいうかのよう。

こんなものが代わりになるかと苛立ちをぶつけても、花はただ健気に咲いているだけです。

彼女が出て行った本当の理由も、自分の至らなさも、全ては謎のまま。

改めて確認する勇気もなければ、確認したところでやり直せるわけでもありません

しかし、彼女の置いていった花だけは、全ての真実を知っているのでしょう。

やりきれない想いを抱えたまま、今日もまた1日が過ぎていきます。

今はただ、1つの希望を胸にして

本当はよく分かっている

ヨルシカ【花人局】歌詞の意味を解釈!夕焼けをじっと待つ理由は?僕にひとつ花が残された真意を深読みの画像

昨日の夜のことも本当は少し覚えてるんだ
貴方の居ない暮らし、それが続くことも
今でもこの頭一つで考えているばかり
花一つ持たせて消えた貴方のこと

出典: 花人局/作詞:n-buna 作曲:n-buna

覚えていない、と自分に嘘をつき、あの悲しい出来事をなかったことにしようとしていた主人公。

嫌な思い出から逃げるように心を閉ざしても、彼女が帰ってくることはありませんでした。

数日経って初めて、今の気持ちやあの夜のことについて考えることができたのです。

確かに分かっていることは、もうこの部屋に彼女が帰ってくることはないだろうということ。

あの優しい微笑みを、自分に向けてくれることはないのだという悲しい事実です。

それでも、すぐに全てを切り替えられるほど主人公は強くありません。

彼女の思い出を抱えながら笑えるその日まで……。

今はただ長い時間をかけて、彼女を思うしかないのです。

夕焼けをじっと待つのは

ヨルシカ【花人局】歌詞の意味を解釈!夕焼けをじっと待つ理由は?僕にひとつ花が残された真意を深読みの画像

明日にはきっと戻ってくる
何気ない顔で帰ってくる
今にドアが開いて聞こえる
ごめんね、遅くなったって
言葉だけをずっと待っている
夕焼けをじっと待っている

出典: 花人局/作詞:n-buna 作曲:n-buna

たった1人残された主人公が、開くことのないドアに向かってひたすらに願うもの。

それは、あの日のように笑顔を浮かべてドアを開く彼女の姿に他なりません。

むしろ、それ以外は何もいらないといえるほどに、強く強く彼女の帰りを待っている主人公。

あの夕焼けに負けないくらいオレンジ色に頬を染めた彼女のことを……。

彼女がいない毎日は、太陽を失ったかのように輝きのない世界でした。

今ならばもう、同じ過ちを繰り返さないと誓うことができます。

だからもう一度だけ、チャンスを与えてほしい……。

「さよなら」なんて二度といわなくていいように、今度こそ幸せな日々を過ごしたいと願うのです。