停滞を抜け出して旅立つ

大原櫻子【I am I】歌詞の意味を解釈!完璧な私がいらない理由って?自分を信じる為に必要なものとはの画像

別れの言葉で始まるこの曲ですが、曲全体としては非常に前向きな内容です。

曲を通して伝えられるのは、前へ進むことへのエール。

けれど、それは過去の否定ではありません。

過去は過去として置いておき、その上でさらなる未来へと進み続ける。

力強い決意が聴き手にも伝わります。

完璧さを捨てて

「完璧」に込められた2つの意味

さようなら 昨日までの
完璧なる私

出典: I am I/作詞:高橋久美子 作曲:丸谷マナブ

心の底から「自分は完璧だ。欠けたところが何もない」といえる人はあまりいません。

みんなが何らかの負い目や欠点を抱えているものではないでしょうか。

しかし、ここでは「完璧」という言葉が登場します。

大原さんが特別で、大原さんは完璧なのでしょうか?

きっとそうではないのでしょう。

この歌詞は、2つの意味を読み取り考察することができます。

1,品行方正だった「私」

完璧か、完璧でないか。

その評価の基準はなんでしょうか。

ずばり比較です。

あの人は、この人よりすぐれている。

あの人の方が仕事が上手い。

あの人の方がお洒落な服を着ている……。

人間は無意識に比較をする生き物です。

私たちの文明には比較が深く根付いています。

比較のために「もっと頑張ろう」と思える反面、争いの種になることも。

人を妬んだり、蹴落とそうとする動機にもなりうるからです。

そんな比較社会の中で、一定の評価を得る方法があります。

規則を守ることです。

規則は、校則や法律のように文章になっているとは限りません。

暗黙の了解も、規則のうちに入ります。

規則を守れば周囲から評価してもらえます。

やり抜けば「あの人は完璧だ」とさえ言われるかもしれません。

しかし、問題が1つ発生します。

成長が途絶えることです。

規則はある程度固まっており、アップデートに時間がかかります。

愚直に規則を守っているだけでは、永遠に頂点に立つことはできないのです。

偉人たちは規則を疑い、人々が信じた常識を打ち破ったからこそ偉人になりました。

規則を守る完璧を目指し、それを達成しただけで満足するのは道半ばです。

主人公はそれに気づき、規則を守る自分を過去のものとしたいのではないでしょうか。

過去の自分と決別し、新しい可能性を探しに行こうとしているのです。

2,過去を振り返らないという決意

考察の2説目は、決意を意味しているというものです。

歌詞に出てくる「昨日」とは、前日だけのことをさすのではありません。

これまで歩んできた過去の人生のすべてを意味しているのです。

過去を振り返る時、後悔が次々に出てくる時があります。

「あの時、もっとこうしていれば良かった」

「ああ言えば良かったのに」

振り返ればきりがありませんが、後悔先に立たずという言葉もあります。

過去をやり直すことはできないのです。

一方、別の見方をすれば、過去の自分が精一杯やっていたことに気付けます。

あとからあれこれ考えるのは簡単ですが、当時の自分には、それしかできなかったのです。

その時、その場所で、最善だと思えることを精一杯やっていた。

1度これに気づけると、もう後悔に時間を浪費せず済むようになります。

つまり過去の自分は、当時の自分にとって完璧な存在だったのです。

過去を振り返っているだけでは、先へ進むことはできません。

過去は過去として線を引き、いつまでも引きずらないことが大切です。

主人公も、そんな気づきと決意を抱いたのでしょうか。

過去の自分と向き合い、「完璧だったね」と認めています。

けれど、それをいつまでも誇ることはありません。

そして、新たな旅へ

考察1も2も、同じ結論に行き着きます。

その答えが続きの歌詞です。

冒険するために 生まれてきたんでしょう

出典: I am I/作詞:高橋久美子 作曲:丸谷マナブ

品行方正な自分との決別。

過去を振り返らない決意。

そうしてどこへ向かうのか、の答えは冒険です。

まだ見ぬ未来へ進み続けていくこと。

それはこの主人公だけではなく、人間全体の人生の目的なのかもしれません。

主人公は自らの気づきを得て、それを思い出させてくれています。

完璧じゃなくても良い