「What’s Going On?」と未来への展望

Official髭男dism【What's Going On?】歌詞の意味を解釈!生き抜く意味って?の画像

2016年11月2日発表、Official髭男dismの最初のEPである「What’s Going On?」。

Official髭男dismのパブリック・イメージを覆すような歌詞とサウンドが話題になりました。

マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」からの直接の影響が大きい楽曲です。

真摯な歌詞とR&Bとゴスペルを折衷したようなサウンドが魅力でしょう。

Official髭男dismの作品の中でもとりわけスケールが大きい楽曲になっています。

藤原聡はマーヴィン・ゲイの魂を借りて何を語りたかったのでしょうか。

歌詞の中にある生と死のコントラストには言葉が出なくなるほどの衝撃を受けます。

私たちが生きるこの現代社会にある病巣ともいえる問題について歌い上げるのです。

こうした様々な障壁を乗り越えて、手を携えて一緒に生きてゆこうと誓います。

Official髭男dismと一緒に切り拓いてゆく未来の世界というものを共有しましょう。

言葉の重みや凄みというものをこれほど痛感させてくれる歌詞は稀少です。

私たちは社会をどうやって組織し直すべきか、どういった方向へ社会を生まれ変わらせるのか。

そんな大きなテーマに取り組んだ歌詞に敬意を表しながら解釈してゆきます。

それでは実際の歌詞をご紹介しましょう。

言葉の暴力を否定する

マーヴィン・ゲイへのリスペクト

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ああ神様 どうして
生きていく事は こんなに辛い事なんだろう?
感情がなくなってしまえば 苦しくないのに

出典: What’s Going On?/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

歌い出しの歌詞になります。

この直前にアナログ・レコードのノイズの音が聴こえるはずです。

その後にR&Bやゴスペルなどで聴かれるオルガンの音が響きます。

おそらくこうした演出はマーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」へのオマージュでしょう。

「ホワッツ・ゴーイン・オン」はベトナム戦争の最中に書かれた歌詞です。

共作者の1人ベンソンは、サンフランシスコで反戦運動を行っていた若者と警官隊の衝突を目撃し、それを元に歌詞を書き始め、クリーヴランドの協力も得るが、この時点ではタイトルは決まっていなかった。そして、この曲を聴いたゲイがタイトルを考え、歌詞を追加し、更にメロディの装飾も加えた。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/ホワッツ・ゴーイン・オン_(曲)

荒んだ時代背景の中でどう生きようか模索する気持ちいう点で藤原聡はこの曲にヒントを得ました。

神への祈りという形が採用されているのも黒人音楽から着想を得ています。

ベトナム戦争の時代も生きにくい時代でした。

特にアメリカ合衆国の若者は徴兵される可能性があったのです。

しかし若者たちはこの戦争を支持してはいませんでした。

自分が支持しない戦争に、兵士として駆り出されるかもしれない。

ベトナム兵には何の恨みもないのに銃口を向けて殺すことが強制されるような時代です。

もちろん自分が生命を落とす可能性だってあります。

藤原聡はこの時代と現代の日本社会を重ねているのです。

生活が苦しいという実感は年とともに重く感じられます。

さらに身近な死というものについても語り出すのです。

毎日が平穏無事だと思って過ごしている人も多いかもしれません。

そうした人にも分かるように危機感というものを掘り下げてゆくのです。

感情というものがなければ悩むことはないというのはジョン・レノンの言葉に似ています。

ジョンはビートルズ時代に「Strawberry Fields Forever」で同様のことを歌いました。

目を瞑って生きていれば心配事なんてないのさという趣旨の歌詞を遺しています。

藤原聡はこの言葉に非常に似た思考をしているのです。

ビートルズ、ジョン・レノンからマーヴィン・ゲイまで。

Official髭男dismが愛と音楽に生きた人の思想から多くのものを得ていると感じさせます。

巨大匿名掲示板などの闇

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ねえどうして人は言葉で人を
殺せるようになってしまったんだろう?
画面から飛び出した文字はナイフみたいだ

出典: What’s Going On?/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

藤原聡が戦場として描いたのはスマホやPCの画面の中での名無し言論のようなものでした。

酷い言葉で他者を詰ったりするのが平気な人がいます。

名無しという匿名性の陰に隠れて人を攻撃するような輩たちです。

彼らが使う言葉は兵器や武器のようだと藤原聡は訴えます。

実際にその武器によって人を傷付けることが平気な時代になってしまったことを嘆くのです。

藤原聡はこうしたネット空間の在り方に戦場を重ねました。

現実には完璧な匿名性などこの世の中にはありません。

きちんとプロバイダに開示命令が下されれば誰の書き込みによる言葉なのか突き止められます

そして少なくない人が匿名の陰から引きずり出されて逮捕・送検・裁判などで罪を認めるのです。

しかしこうした事例はネット言論での誹謗中傷の数に比べて極めて割合の少ないものでしょう。

多くの言葉がお咎めもなく野放しにされているのです。

もちろん言論・表現の自由は守られる必要があります。

しかしそれは国やそれに準じた主体が私たち国民に保証するものです。

この点を履き違えて虚偽の事実で他人を中傷していいと考える人がいるのが困ったことでしょう。

いずれにしても人を傷付けるために特化した言葉というものを藤原聡は嫌うのです。

ネット社会での誹謗中傷

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過去にもこうやって 人生めちゃくちゃにされて
大切な仲間が1人 命を絶ってしまった

出典: What’s Going On?/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

藤原聡の怒りの根源は身近に起きた自殺案件からくるものでした。

ネット空間での誹謗中傷に絶えられなくなった人が生命を落としたことがあると歌います。

亡くなった人は藤原聡にとってとても大切な人だったのいうのです。

おそらく事実でないとこのような歌詞は書けません。

本当に彼の傍にいた人が言葉の暴力によって生命を落としてしまったのです。

言葉というものは人に取り憑くような怖ろしいものでしょう。

無責任に言葉を投げかける方は自分が凶器を用いているという自覚がありません。

しかし実際に言葉の暴力に曝された人は怖くなって夜も眠れなくなります。

自分が誰かに恨まれているのかと思い悩む日々は本当に辛いものです。

この場合、自殺に追いやった側の人間は相手を殺めてしまったという自覚があるのでしょうか。

おそらくこうした人に自分がどれほどに怖ろしいことをしているかの自覚はありません。

凶器を振り回している自覚がない人がネット空間という大通りで暴れているのです。

実際に誹謗中傷していた相手が自殺したというニュースにさえ(笑)と書き込むような鈍感さがあります。

私たちはこうした負のサイクルや悪循環からどうやって抜け出せばいいのでしょうか。

音楽こそ答え

藤原聡の解決策は何か