今回ご紹介する曲の中では2番めに古い楽曲「夏の終りのハーモニー」。
1986年、安全地帯と井上陽水の並列名義でリリースされました。
「安全地帯」は若い世代には馴染みのないバンド名かもしれません。
さまざまなアーティストへの楽曲提供もこなす玉置浩二が、ボーカルをつとめたバンドです。
この曲のタイトルを見て違和感を覚えた方、鋭い!
「夏の終わり」ではなく「夏の終り」なのです。
明治、大正の頃は「終り」が使われていましたが、現在は「終わり」が主流。
夜空をたださまようだけ
星屑のあいだをゆれながら
二人の夢 あこがれを
いつまでも ずっと 想い出に
真夏の夢 あこがれを
いつまでも ずっと 忘れずに
出典: 夏の終りのハーモニー/作詞:井上陽水 作曲:玉置浩二
2人が向いている方向は少しずつ違っていてもそれでいい。
ピッタリと重ならないハーモニーこそが2人にしか奏でられない和音なのだと歌っています。
2人の関係性が幸せなものなのか、そうではないのかは曲から判断できません。
どちらにしても、それぞれが別の夢を描いて別の何かに憧れています。
無理に歩調を合わせなくても、今の思いを大切にしていきたい。
夏は終わってしまうけれど、思いは忘れないでいたい。
2人の思いを乗せたハーモニーは、夜空をただよい続けるのでしょう。
切ない……。
第4位 ひこうき雲/荒井由実
この曲は1973年にリリースされた荒井由実の2ndシングル「きっと言える」のB面に収録されています。
B面?B面ってなに?
実はこの時代にCDはなく、7インチシングル盤というレコードで発売されました。
「ひこうき雲」を一躍有名にしたのが、スタジオジブリの映画「風立ちぬ」ではないでしょうか。
この映画によって今の若者が荒井由実の良曲を知る機会を得たと言っても過言ではありません。
ちなみに荒井由実とは、松任谷由実の旧姓です。
高いあの窓で あの子は死ぬ前も
空を見ていたの 今はわからない
ほかの人には わからない
あまりにも 若すぎたと
ただ思うだけ けれどしあわせ
空に 憧れて 空を かけてゆく
あの子の命は ひこうき雲
出典: ひこうき雲/作詞:荒井由実 作曲:荒井由実
死んでしまった「あの子」がどんな景色を見ていたのか。
想像しても分からないけれど、静かに死んでいったのは幸せなこと。
そんな歌詞として読み取りました。
青空を横切るひこうき雲は、初めはパキっとした白い直線を描いています。
しかし少しずつ淡くなり、いつしか消えていく。
夏だって賑やかで明るい音と光に溢れているけれど、必ず終わっていく。
夏の終わりの風に吹かれながら聴いてみてください。
切ない……。
3位と2位ともに若かりし頃の後悔の曲がランクイン
第3位 若者のすべて/フジファブリック
フジファブリックのアルバム「TEENAGER」に収録された一曲です。
ボーカルの志村正彦のやわらかい声で歌われる夏の終わり。
どこからか花火の匂いがしてくるような「若者のすべて」です。
シングルとして先行リリースされたのが2007年。
志村は2年後の2009年、29歳の若さでこの世を去りました。
多くの人に愛される楽曲で、カバーするアーティストも多数います。
発売から10年近く経ちますが今年もCM曲に起用され、長く心に残る曲といえるでしょう。
最後の最後の花火が終わったら
僕らは変わるかな 同じ空を見上げているよ
出典: 若者のすべて/作詞:志村正彦 作曲:志村正彦
夏の間、毎週末にどこかで花火大会が開催されます。
同じような玉数、同じような規模なのに、8月の終わりの花火は名残惜しい。
そう感じるのは私だけでしょうか。
彼女と並んで花火を見上げ、伝えたいことを伝えられないまま終わりに近づいていく。
花火のように、夏のように終わらせたくないという気持ちはあるのです。
しかし一歩を踏み出せないまま、最後の花火が上がります。
きっと来年、この花火を見れば彼女のことを思い出してしまうのでしょう。
若者はこうして、失敗や後悔や終わっていく夏を繰り返して、大人になっていきます。
切ない……。
第2位 君の知らない物語/supercell
コンポーザーのryoを筆頭としたクリエーター集団supercell。
初音ミクを使った楽曲も含め多くの作品を送り出しています。
彼らの1stシングルが「君の知らない物語」です。
この曲はラノベ界の重鎮・西尾維新原作のアニメ「化物語」でエンディングに起用されました。
5分41秒という長い曲に埋め込まれた夏の終わりの物語。
恋をしたことがある人なら共感せずにはいられない、リアルな歌詞が魅力です。
どうしたい? 言ってごらん
心の声がする
君の隣がいい
真実は残酷だ
言わなかった
言えなかった
二度と戻れない
出典: 君の知らない物語/作詞:ryo 作曲:ryo