「MY LONELY TOWN」

2009年、47thシングルとしてリリース

廃墟のようなジャケットが印象的なB'zの47thシングル「MY LONELY TOWN」。

2009年にリリースされましたが、この曲はリリース前にライブフェスで披露され、音源化が期待されていました。

2009年はこの「MY LONELY TOWN」の前に、ドラマ『ブザー・ビート〜崖っぷちのヒーロー〜』の主題歌として書き下ろされた「イチブトゼンブ」がシングルとしてリリースされ、空前の大ヒットを記録。

オリコン週間シングルチャート1位獲得はもちろん、8週連続TOP5入り、さらに月間チャートでも1位となるなど、大きな話題を呼びました。

その「イチブトゼンブ」ば明るいイメージのロックナンバー、わかりやすい言葉で人を愛することについて歌ったものでした。

対照的に「MY LONELY TOWN」は、壮大なスケールのサウンドと哀愁漂うメロディが迫力を持って胸に迫る、心に郷愁のようなものが湧き出すような、不思議な魅力を持った曲となっています。

【MY LONELY TOWN/B'z】軍艦島で撮影されたPVがカッコいい!!歌詞の世界観に注目の画像

PV

軍艦島で撮影

「MY LONELY TOWN」のPVは、長崎県にある端島で撮影されました。CDジャケットも、海から見たこの島の様子です。

端島は軍艦島の別名でよく知られていますね。島の全景がまるで軍艦のように見えることから、この名で呼ばれるようになったそうです(当記事では以下軍艦島と呼称します)。

2015年にユネスコの世界遺産リストに登録された”明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業”を象徴する存在となっていますね。

この島は炭鉱の島として開発され、最盛期となる1960年頃には東京23区の9倍を超える人口密度になるなど、かなりの繁栄を誇っていました。

島の中には炭鉱、それに付随する設備、住宅の他に病院や学校などの施設はもちろん、映画館やパチンコ屋、社交場などの娯楽施設もあり、島から出ずに暮らしていけるほど何でも揃っていたそうです。

それほどの隆盛を誇った軍艦島ですが、時代は石炭から石油エネルギーへ変化していきました。

石炭の需要はどんどん少なくなり、人口は減っていき、1974年にはついに炭鉱は閉山に追い込まれます。

1月15日の炭鉱閉山から約3か月後の4月20には、全住民が退去したそうです。

生まれた時から軍艦島に住み、最盛期を知っている住人たちの心に去来した想いは、如何ばかりであったでしょう。

察するに余りあります。

そうして誰もいなくなった軍艦島はどんどん荒れ果ててゆき、廃墟が立ち並ぶ現在のような姿になってしまいました。

長崎市が協力

長崎市の全面協力により、通常は立ち入れない場所でも撮影が許可され、このPVは制作されました。

生命の気配の消えた、色のない世界の軍艦島にB'zが鮮やかな風をもたらすかのようです。

メンバーの躍動感ある演奏姿と、ひっそりと、でも有無を言わせない迫力を持って佇む廃墟はとても美しい対比をもたらしています。

廃墟たちはきっと、昔栄えていた頃の記憶を思い出しながら、B'zの撮影を眺めていたことでしょう。

「MY LONELY TOWN」の歌詞の世界観に注目

ではここからは、軍艦島に上陸したB'zが同じ世界観を感じたという「MY LONELY TOWN」の歌詞を見ていきましょう。

明かりの下に集まったなら
笑い語り合う仲間
でもきっと 誰も互いのことを
わかりあうのは不可能

人はバラバラな生き物
それを忘れちゃいけない

ひとりずつみんな 歩いてるこの街で
いつの日か あなたと
会えるなら それは 素晴らしい事件
月の照らす My Lonely Town

出典: MY LONELY TOWN/作詞:稲葉浩志 作曲:松本孝弘

気の合う仲間と過ごす時は楽しくて、一体感を感じられるもの。

お互いのことを分かり合っている、そういう気持ちを持つこともあるでしょう。

でも所詮は、みんな別々の人間。心の奥に潜むものまで理解することはできません。

そして誰もが、他人に触れてほしくないものを持っています。

それを忘れて、何もかもわかっている、そして相手も自分のことを理解している。

そう勘違いするのは危険です。

自分がわかっていると思っている相手の姿は、仮のものかもしれません。

自分が相手に望む姿を見ていることも。

もしかしたら相手も、理想化された、本当の姿からかけ離れたものをこちらに見ているのかもしれません。

それを真実だと勝手に思い込んで。

ふとした瞬間にそれが思った通りでなかったとわかったら、”裏切られた”、”信じていたのに”、と大騒ぎする。

そして相手を責めさえする。

自分が勝手に誤解していたのに、です。

自分と他人は違う。

それを忘れて、勝手な期待を抱いて勝手に傷つくのは愚かです。

そ一人一人違う人間が、自分の足で自分の人生を選んで歩いてゆくのです。

そうやって人として自立して生きていけば、一緒に生きていける誰かと巡り合えるかもしれません。

耐えられない孤独を抱えて

微妙な情に気づかない人を
雑なやつだと 思っちゃう
でもきっと 相手も 同じ気持ち
隠しながら 笑ってるよ

ひとりでは もう 耐えられない
そう思う事は誰にもある
叶わぬ恋とはまた違う
鈍い想いあふれる My Lonely Town
さまよう心に触れて

誰かとわずかに共鳴できることを
なんとか見つけだして
かろうじて繋がる

出典: MY LONELY TOWN/作詞:稲葉浩志 作曲:松本孝弘