ここからはBAD HOP随一のトリックスター、Tiji Jojoのバースを見ていきましょう。
2019年5月に初のソロ作品『PLAYER 1』をリリースしたTiji Jojo。
HIP HOPの世界には「ミックステープ」と呼ばれる音源制作スタイルがあります。
曲ができ次第レコーディングを行い、簡単なパッケージで作品を発表するのです。
事前プロモーションはほぼ行わずにクラブ・ツアーで全国に徐々に広めていく。
今回紹介している『No Sleep』もまさしくそんなスタイルで制作されています。
疲れ果てても愚痴もこぼさず、淡々と仕事をこなしていく姿はまるでアスリートのようです。
唯一弱音を吐ける場所はノートに書きなぐるリリックの中だけ。
一度でも歩みを止めれば二度と動けなくなるという恐怖と闘いながら眠らない日々を過ごすのです。
仲間と切り開く未来
Ey 上がる期待値
マガジンカバーも白いT
渋谷見下ろし
遅くなるぜ会場入り
一段づつじゃない
二段飛ばしで上がる階
馴れ合いなんかじゃない
Mobbと切り開いた未来
出典: No Sleep feat. G-k.i.d, YZERR & Tiji Jojo/作詞:G-k.i.d,YZERR,Tiji Jojo 作曲:不明
“mobb”とはHIP HOPスラングで“仲間”を意味する言葉です。
Anarchyにとっての向島団地、KOHHにとっての北区王子。
そしてD.O.にとっての練馬ザ・ファッカーのように家族よりも濃い血潮で繋がれた真の仲間。
それがBAD HOPにとっては川崎という街なのでしょう。
彼らは仲間の希望や名誉を背負いながら最速のスピードで成功の階段を駆け上がろうとしています。
雑誌の表紙にも白のTシャツで登場するのは着替える暇もないからなのでしょう。
人生は儚くも短い。
そのことを実生活で学んできた彼らは今日も眠らずに走り続けるのです。
憂鬱に負けない
それが今は 寝ない日が
続くが目は閉じてない
雨はまだ止まないが
俺の熱は冷めてない
常に見てる次のステージ
一は終わり次のページ
無謀なプランで勝つイメージ
見えない未来にしてる Pay
出典: No Sleep feat. G-k.i.d, YZERR & Tiji Jojo/作詞:G-k.i.d,YZERR,Tiji Jojo 作曲:不明
降りやまない雨は作者の心理状態を表しています。
一般的に雨は外出する気分を害するイメージ、つまり憂鬱な気持ちのメタファーです。
眠気に耐え忍び、憂鬱な気分にも負けずに前進を続ける動機。
「仲間と一緒に底辺の生活から抜け出す」
ただそれだけのことに彼らは生涯をかけて闘い続けるのです。
その道程は私たちが想像するよりもずっと困難なのでしょう。
近年のBAD HOPは若手ラップグループとしては異例なほどの豪華なステージを組んでいます。
さらにはミックステープの無料配布などの大盤振舞いも...。
彼らはそれを未来への投資だと語っています。
自分が決めた道に弱音吐く気ない
掴むまでは俺らもがき眠れない 眠れない
出典: No Sleep feat. G-k.i.d, YZERR & Tiji Jojo/作詞:G-k.i.d,YZERR,Tiji Jojo 作曲:不明
最後にもう一度G-k.i.dによるフックの一部分を見てみましょう。
“道”を“未来”に置き換えることで彼らの正直すぎる心情をはっきりと汲み取ることができるのです。
過去を選んだり、“コマンドXキー”で消去することはできません。
しかし未来は自分で掴み取ることができるのです。
そのために重たい眼を押さえ、今日もBAD HOPは働き続けるのでしょう。
今ではAnarchyやKOHHと並んで成功者のアイコンとして若者に夢を与えるBAD HOP。
彼らの選んだ未来がどれほど大きく膨らんでいくのか楽しみでなりません。
最後に
今回はBAD HOPの『No Sleep feat. G-k.i.d, YZERR & Tiji Jojo』を紹介いたしました。
いかがでしたか?
眠らずに戦略とリリックに磨きを練り続けるBAD HOP。
2019年もミックステープ形式のアルバムのゲリラリリースを次々と展開しています。
今後のBAD HOPの予想を超えた活躍に注目していきましょう!
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