「サイレン」と「サイレン♯」
2004年4月リリースのシングル「サイレン」、
そしてそのカップリングに「サイレン♯」という2つの楽曲があります。
同年10月にリリースされたアルバム「ソルファ」にも「サイレン」が収録されています。
これは基本的にはシングルの「サイレン」と同じですが、
アルバムの「サイレン」は「サイレン♯」のコーラス部分が混じったミックスバージョンとなっています。
ですので正確に言うとほぼ同じタイトルの曲が3曲あるということになります。
「サイレン」は男性目線
「サイレン」と「サイレン♯」の楽曲の始まりは似たような曲に聴こえます。
歌詞が始まるとガラッと雰囲気が変わって違う曲だということがはっきりわかります。
しかし歌詞はそれぞれ全く違う文章の歌詞です。
違う文章の歌詞なのですが、全く違う内容の歌詞というわけではなく、
同じシーンを違う視点で書いている歌詞になっています。
「サイレン」はある男性目線の歌詞であり、ある女性に呼びかけるような内容です。
「サイレン♯」は女性目線
こちらはある女性目線の歌詞です。
ちなみにこちらの「サイレン♯」はファンの間では通称「裏サイレン」とも呼ばれています。
「サイレン♯」は「サイレン」の歌詞が全て出来上がった後に書かれた歌詞です。
ですので「サイレン」の歌詞の内容を「サイレン♯」が説明できるような構成なっています。
逆にいうと「サイレン♯」の歌詞をみなければ「サイレン」の歌詞は解りづらいということです。
ですので今回は2つあわせて歌詞の解釈をすすめたいと思います。
どのようにしてこの2曲ができたのか
そもそもこの2曲はどのような経緯で出来たのか?
もともとは半年ほどかけて作り込んだ1曲が「サイレン」なのです。
シングル予定の「サイレン」のカップリングを悩んでいるときに自然に出来たのが「サイレン♯」だったのです。
当初はインストの予定だったものが少しずつ変化していったそうです。
アジカンのギターボーカルであり歌詞を書いている後藤正文ことゴッチさんが、
「サイレン」の中に出てくる女性側の目線も書きたいと漠然と考えていたそうです。
それが流れの中で実際に形となり完成度の高い2曲が出来上がったそうです。
当時の最高傑作
表題のようにゴッチさんは当時の自身の日記で語っていました。
歌詞もさることながら、音やアレンジの完成度が高いということがこのように語らせた所以です。
今回細かい説明は省きますが、特に筆者が聴いて欲しいのはドラムです。
アジカンのドラムはいい意味で普通じゃないのが面白いのです。
また「サイレン♯」の楽曲作成に関しては、ほとんどがゴッチさんとエンジニアさんのみで作成したそうです。
そういう部分もあり、ゴッチさんのエゴが出し切りやすかったので歌詞も高い完成度になったのでしょう。
ではその歌詞をみていきましょう!
歌詞解釈
それぞれの歌詞を交互にみていきます。
「サイレン」の情景を読み取った上で「サイレン♯」の情景をみます。
そうすることで2人の関係性も見えてくるのではないでしょうか。
ちなみに作詞したゴッチさんはこの2曲の楽曲の細かい歌詞の解釈について言及していません。
色んな受け取り方ができる歌詞かと思いますので、
いちアジカンファンとして、ゴッチさんが書きそうなテーマであろうことを踏まえて歌詞を解釈していきます。
あくまで筆者いち個人が考えた解釈であるということを前提で読み進めていってください。
「僕」と「私」
掴んだ細い腕
よぎる蜉蝣
綺麗な羽を僕にくれよ
出典: サイレン/作詞:後藤正文 作曲:後藤正文・山田貴洋
「サイレン」の一番最初のフレーズです。
まずこの曲のキーとなる「蜉蝣」の説明をしなければなりません。
「蜉蝣」とは成虫になってからの寿命がわずか1日ほどしかないとされている昆虫のことです。
学名はギリシャ語でEphemeropteraなのですが、「翅のあるその日だけの存在」という意味からきています。
綺麗な水場に生息するのがほとんどです。手足は華奢で翅は半透明色で綺麗です。
翅が生えてから脱皮をする昆虫は蜉蝣以外におらず、珍しい成長過程を持つ昆虫です。
「僕」が「細い腕」を掴んだ時、そんな「蜉蝣」がよぎります。
ここで「羽」という単語が出てきますが、本来ならば昆虫のハネを意味する「翅」の表記が正しいです。
しかしここで「羽」となっているのは、それで空を羽ばたけるような美しいハネに見えたからではないでしょうか。
だから「僕」は自分にもそんな「綺麗な羽」が欲しいと思ったのです。
太い指あなたの手
夜を舞う白い羽
いつかきっと忘れて
私なんていらないよ、きっと
出典: サイレン♯/作詞:後藤正文 作曲:後藤正文・山田貴洋