魔女の宅急便
スタジオジブリ製作、宮崎駿監督が手掛けた名作「魔女の宅急便」の主題歌にも選ばれたこの楽曲。
楽曲リリースよりも後の1989年公開作のこの映画により、さらにセールスを伸ばしました。
魔女の少女キキの成長物語であるこの作品の冒頭、空飛ぶほうきのBGMとしてトランジスタラジオから流れる「ルージュの伝言」は、観客に強い印象を残したのではないでしょうか?
「止めてくださる?わたし、静かに飛ぶのが好きなの」という強気な女性も登場しました。
前向きで明るく元気な女の子が、新しい街へと旅立つときに、ある意味マッチしている楽曲です。
「ルージュの伝言」の主人公のように進んでいく彼女には、ピッタリなのではないかと感じます。
テレビドラマ「ルージュの伝言」
1991年4月、深夜帯で放送されたドラマ「ルージュの伝言」は、ユーミンの名曲をモチーフにしたオムニバス形式のものでした。
深夜番組としては異例の高視聴率を獲得し、脚本も君塚良一(「踊る大捜査線」シリーズなど)や北川悦吏子(「オレンジデイズ」など)が担当するなど、現在でも高い人気を誇るスタッフが名前を連ねた、伝説的シリーズです。
歌詞
それでは、歌詞を見ていきましょう。
長続きする恋の秘訣は、相手の身内と親密になっておくことかも?
陽気で楽しげな音楽とは異なり、歌詞では女性側のちょっと怖いと思えるような行動に注目です。
可愛らしく歌い上げるユーミンの雰囲気からも想像できないワードが飛び交います。
しかしそのちょっと怖い言動の理由は「彼のせい」でもあるのです。
その部分もしっかり注目していきましょう。
主人公は彼の母の元へ
あのひとの ママに会うために 今ひとり 列車に乗ったの
たそがれせまる 街並や車の流れ 横目で追い越して
出典: http://j-lyric.net/artist/a000c13/l00f628.html
夕方の電車に乗って、家を出た主人公。
目指す先は、どうやら彼の実家のママのもとのようです。
空いた車内から、ぼんやり、少し憂鬱な気分で夕暮れに染まる車窓を眺める若い女性が浮かびますね。
車窓に映るのは、彼と暮らす見慣れた街並みです。
この場面からは、怖さなど感じません。
しかしなぜ彼のママに会いにいくのでしょうか。
彼と一緒ではなく、主人公だけで遠くまで行くのです。
これには何か理由があることに間違いないでしょう。
彼の悪行を暴露
あのひとは もう気づくころよ バスルームに ルージュの伝言
浮気な恋を はやくあきらめないかぎり 家には帰らない
出典: http://j-lyric.net/artist/a000c13/l00f628.html
バスルームにルージュの伝言、とくれば、洗面台の鏡に書いた口紅の文字だ!と聞く人は簡単に想像できます。
色はきっと赤でしょう。もしかしたらシャネルの定番のあの色かもしれません。
こういう言葉選びが、ユーミンは本当に上手で、うっとりしてしまいます。
そして彼女のご立腹の原因は、彼の浮気のようですね。
彼のママに会いに行く理由が、ここで明らかになりました。
彼の浮気について、私が気づいたことを彼はどんな顔で知ったのでしょう。
きっと青い顔をしていたに違いありません。
そんな彼をよそに、彼女は決心を固めています。
その決心は2行目にある「帰らない」ということです。
相当怒っているのでしょう。
しかしそれもそのはず、私という恋人がいながら、彼は他の女性と関係を持っていたのですから。
その怒りを彼にぶつけて、脅迫文のようなメッセージを残し家を出たのです。
あなたが他の女性といるのではないか心配なの
不安な気持ちを 残したまま 街はDing-Dong 遠ざかってゆくわ
明日の朝 ママから電話で しかってもらうわ My Darling!
出典: http://j-lyric.net/artist/a000c13/l00f628.html
でも、彼の気持ちがこのまま遠ざかってしまうのではないか、そんな不安がないわけではありません。
彼のママに会いに行くのは、主人公にとってもひとつの賭けなのでしょう。
強気な女性なのかと思いきや、とっても可愛らしい乙女な主人公。
それほど彼のことが大好きなのに裏切られたと知ったときは、どんなに悲しかったでしょうか。
しかしその悲しみよりも怒りで行動してしまった彼女は、電車の中で少し後悔しているのでしょう。
そんな後悔を振り払うように「彼の悪行を暴露してしっかりお説教してもらおう」というような心境が読み取れます。
ちょっと怖い言動は、自分が怒るのではなく彼のママに怒ってもらうということ。
私だけに知られるより、他の人に知られる方が視線の痛みが変わってきます。
これで彼女と自分の母親が仲良くでもなってしまったら、頭が上がらなくなる彼。
男性サイドとしては、怖い他ないのでしょう。
しかしこればっかりは、浮気をした男性が悪いので、諦めてもらうしかないですね。
主人公の居場所を彼は知らない
あのひとは あわててるころよ バスルームに ルージュの伝言
てあたりしだい 友達にたずねるかしら 私の行く先を
出典: http://j-lyric.net/artist/a000c13/l00f628.html
ルージュの伝言に、主人公は何と書いたのでしょうか?
あわてるくらいですから、「さよなら」とか、そんな冷たいセリフでしょうか?
彼は、共通の友達に電話をかけて、彼女の行き先を聞き出そうと躍起になって、でも見つからなくて、いつか眠ってしまう。
次の日の朝、恐ろしい電話のベルでたたき起こされるのでしょう。
男のひとは、いつまでも母親には弱いものです。
そんな様子が主人公にはわかっていたから、彼の母親の元へ向かったのかもしれません。
彼女にとってはこれが助け船になってくれると願いながら、進んでいくのです。