霧の中で 朽ち果てても彷徨う
出典: Pop Virus/作詞:星野源 作曲:星野源
音は空気を振動させることで伝わりますので、湿度が高いと音が伝わりやすいといわれています。
しかし、これは低音域に限ったもの。
低音以外は水分子に対抗する力がないため、湿度が高いと音がこもってしまいます。
つまり、中高音は響かなくなるのです。
もしこの歌詞の語り手自身が「音」であれば、霧の中では瀕死の状態ですね。
探している相手が「音」であれば探しにくくなるはずです。
それでも、こもった低音を頼りにしたり、わずかに残る響きを拾い集めて「君」を探すのでしょう。
闇の中で 君を愛してる
出典: Pop Virus/作詞:星野源 作曲:星野源
例えこの世から光が消えてしまっても、何かがあって目が見えなくなってしまっても、音だけは感じていられます。
「音」である君が生きている限り、君の存在は聴覚で確認できるのです。
君がそこにいる、それが分かれば愛し続けることができるのでしょう。
刻む 一拍の永遠を
出典: Pop Virus/作詞:星野源 作曲:星野源
語り手が「僕」だとすれば、僕は君を見つけたようです。
僕の音と君の音が出会い、2人が触れ合った瞬間に生まれるたった1拍の音を表現しているのではないでしょうか。
もしくは、出会った瞬間に大きく跳ねた心臓の音かもしれません。
2人の心臓が同じタイミングで音を立てたということですね。
運命を感じた瞬間に奏でられる音は1度きり。
音はいつしか減衰してしまいますが、運命の音だけはずっと空気を揺らし続けます。
音と音がぶつかり合うと、何が生まれるでしょうか。
音と音の連なり、つまり音楽が生まれると考えられます。
刻みたい音
歌の中で 君を探してる
波の中で 笑いながら漂う
夢の中で 君を愛してる
出典: Pop Virus/作詞:星野源 作曲:星野源
ここでは「音」ではなく「歌」となっています。
歌もまた、音が沢山繋がって作られていて、その上に言葉が重なっている状態です。
僕は、音の連なりの中から「君の音」を見つけようとしているのかもしれません。
ウイルスは自分の力で移動することができず、水分や空気の力を借りて宿主を探します。
ここで僕は、言葉の波に身を任せて移動しているのでしょう。
浮き輪に乗って流れるプールに浮かんでいる状況を想像すると、「笑いながら」という歌詞に頷けます。
波に揺られている心地良さから目を閉じ、眠ってしまったようです。
夢の中で歌は聞こえませんが、聞こえなくても僕の耳は音を捉えているのです。
刻む 一拍の永遠を
刻む 一粒の永遠を
出典: Pop Virus/作詞:星野源 作曲:星野源
音の連なりから見つけた君と、新たな1拍を奏でます。
後でその音と寸分違わず同じ音を奏でようとしても、きっと難しいでしょう。
だからこそ、この1拍が永遠なのです。
では、続く「1粒」は何を表しているのでしょうか。
宿主を探している最中のウイルスは粒子状なのだとか。ですから単位は「粒」になります。
1粒のウイルスが、宿主の中に取り込まれることで「感染」となるのです。
ということは、僕が君と出会い、1拍の音を立てて触れ合えば、僕は君の中に取り込まれます。
つまり、僕という1粒の音が君に刻まれることを表現しているのではないでしょうか。
魔法の道具は必要ない
君には特殊な能力がありました。
だからこそ僕は、君に惹かれているのでしょう。
愛が離れていく瞬間
ふざけた人間なんだ 偏る生活を歌舞いた
そう君の手のひら 美しくくるくる返ったんだ
出典: Pop Virus/作詞:星野源 作曲:星野源
僕という人間はどこかアウトローであり、生真面目とはかけ離れています。
もっとまともに生きなければ、という思考はどこかにあるのにわざと道を外れようとするのです。
そんな僕を見て、君は「素敵」と思うはずがありません。
君との距離が縮まったと思った矢先、君はまるで踊るような動きで僕に背中を向けたのでしょう。
「手のひらを返す」という表現からは、君に非があるような印象を受けます。
しかし実際のところ、君が僕に愛想を尽かしたのだろうと推測できます。
だからこそ、僕は焦って君を探しているのではないでしょうか。