「反撃の刃」の歌詞を読む

「反撃の刃」PV

PVの舞台は朽ちた聖堂。住む人もなくなった街の一角のようです。短く差し挟まれるのは煙る荒野で武器を手に佇む和楽器バンドの面々。

「進撃の巨人」にも、巨人が現れてから後の世界には、こんな風な荒廃した背景がたくさん登場します。

廃墟と化した聖堂に設えられた食卓に和楽器バンドメンバーたちが一人また一人と着いていく様子も見られます。

決して豪華とは言えない食卓と、その上の高い天井。

天井はやがて轟音とともに砕け、大きな穴が穿たれます。

瓦礫が降り注ぐ中、メンバーたちは手に手に剣を取り、穿たれた穴の向こうを仰ぐのです。

食は即ち生きること。剣即ち刃は戦うこと。高い天井を砕くほど巨大な何かに襲われても臆することなく刃を手にするさまが、PVでは描写されています。

「進撃の巨人」の世界観を写し取ると同時に、「反撃の刃」の歌詞が紡ぐ世界をも描き出しているのです。二つの世界が重なり合います。

立ちはだかる巨大で強大なものに、武器を取って立ち向かう。反撃する。生きる意志を剥き出しにする。刃を振り上げ敵を討つ。恃みになるのは頑なな意志とこの手だけ。

「反撃の刃」のPVでは、そんな世界の物語が映像で語られていくようです。

「反撃の刃」1chorus

強かに燃える憎しみの中で
屍を乗り越え…

燃え滾った感情にこの身を任せて
蠢く群れを憎み、眼を開く
導き出した答えを求めて僕等は
手を取り今、走り出す

流した涙は数え切れない
噛み締めた誓いと刃

反撃の時は来た
今叫ぶ声、高らかに
振り上げ敵を討つ
頑なな意志とこの手で
宙を舞い今穿つ
生き絶えるまで
奪われし高き壁の
地平の彼方へ

出典: 反撃の刃/作詞:町屋 作曲:町屋

「進撃の巨人」の主題歌として書き下ろされた曲ということで、歌詞にも「進撃の巨人」の内容とシンクロする部分が多数あります。

歌い出しの「強かに燃える憎しみの中で屍を乗り越え…」とはまさに「進撃の巨人」の主人公エレンが置かれた境遇です。

目前で母親を巨人に捕食された怒りと憎悪を糧に、戦って、あるいは戦うことすらできずに死んでいった人たちの屍を越えて戦うエレンの像が聴き手の目の前に結ばれます。

巨人から免れるために自ら高い壁を築き、その中に住む人類ですが、壁の中の限られた自由で安心しているのは家畜も同然。巨人を駆逐し、人類の世を取り戻すためには「反撃」が必要です。

人類の、そしてエレンの巨人への、涙を越え屍を越えての「反撃」がここに描かれています。

「反撃の刃」bridge

嘆きの声が刺さった記憶の在り処は
居場所を探し続け彷徨った
渇ききった愛情の抜殻のような
過ぎ行く日は蜃気楼

出典: 反撃の刃/作詞:町屋 作曲:町屋

この部分は直截に「進撃の巨人」の物語に迫るものではありません。しかし、物語を知っている人なら、感情移入が上手な人なら、用いられた個々のワードに想起せらるるものがあるでしょう。

「嘆きの声」、「記憶の在り処」、「居場所」……現在ある自分が知り得なかった過去のできごとが自分の中に残っていること、「蜃気楼」の如く実体なき「過ぎゆく日」。

不確かな過去と現在の上に立って私たちは、人類は、エレンは、どこへ向かっていくのでしょうか。この曲の聴き手である私たちと「進撃の巨人」物語中の人物とが重なり合う部分でもあります。

「反撃の刃」2chorus

強かに燃える憎しみの中で
残酷な現実を受けとめて
流した涙は数え切れない
噛み締めた誓いと刃

反撃の時は来た
今叫ぶ声、高らかに
振り上げ敵を討つ
頑なな意志とこの手で
宙を舞い今穿つ
生き絶えるまで
奪われし僕等の自由と存在、
光射す未来を取り戻す為に

出典: 反撃の刃/作詞:町屋 作曲:町屋

食われて没するか巨人を殺して生き延びるか、そんな殺伐とした残酷な世界で生きざるを得ないという現実の中には、痛みも苦しみもあります。

それでも刃を取って戦わねばならない世界で、ワイヤーを射出して空間を三次元的に移動しつつ戦う立体起動装置を使った戦闘を戦い抜いて、エレンたちは生き延びていきます。

それが「宙を舞い今穿つ」と描写されているのですが、簡潔に表された実に見事な表現です。

さらに注目すべきは「息絶えるまで」ではなく「生き絶えるまで」と表される部分です。

息絶える――死ぬまで、ではなく、生き絶える――生き抜いて生命が終わるまで、とでも言いましょうか。死でなく生きることが中心となっているのです。それは何故か。

奪われたものを取り戻すため。自らが生きるため。生き延びて、生き抜いていくために必要なものを、自らの手に取り戻すためなのです。

極限でやっと生きている、けれども望みをなくしはしない。「進撃の巨人」の世界に生きる者のぎりぎりの姿と忘れ得ぬ闘争心を、「反撃の刃」は歌い上げています。

現世で懸命に生きてこの曲を聴く人は、ここに歌われる人々と自らを重ねることができるでしょう。

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