「インフェルノ」が描いた世界

Mrs.GREEN APPLE【インフェルノ】歌詞の意味を独自解釈!現実は地獄?導きの先に何が待つの画像

2019年7月18日発表、Mrs. GREEN APPLEの通算3作目の配信限定シングルインフェルノ」。

TVアニメ炎炎ノ消防隊」の主題歌として書き下ろされた楽曲です。

大森元貴はアニメ化される前から原作漫画「炎炎ノ消防隊」のファンであったそう。

そのため作品の世界観を十全に知り尽くして作詞作曲しました。

派手なギター・ロックであり、かなり激しいサウンドが魅力です。

尖ったそのギター・トーンで表現したかったものは何でしょうか。

地獄のような様相を呈する現実に向き合いながら生きることの意味を伝えてくれます。

大森元貴の作詞ですので解釈は一筋縄ではいきません。

ゆっくり歌詞を紐解きながら大森元貴の真意に迫れたらと思います。

Mrs. GREEN APPLEが2019年に問うた地獄のような現実への一撃

つらい状況下でも生きてゆくことを決意するしかない私たちを鼓舞します。

それでは実際の歌詞をご覧ください。

異化された現実

ダークファンタジーの世界

Mrs.GREEN APPLE【インフェルノ】歌詞の意味を独自解釈!現実は地獄?導きの先に何が待つの画像

照らすは闇
僕らは歩き慣れてきた日々も淘汰
夢は安泰な暮らしだが
刺激不足故にタラタラ

照らすは熄み
僕らの歩き慣れていた道はどこだ
時はたまに癪だが
温もりに包まれ只

出典: インフェルノ/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴

歌い出しの歌詞になります。

登場人物は語り手の僕もしくは僕らです。

僕は闇に光を灯すように生きています。

普段の暮らしの中で社会に適するものだけが生き残るような状況が描かれているのです。

大森元貴の歌詞は直感で素直に解釈できる歌詞ではありません。

アニメのための歌であっても普段の創作姿勢を崩すことはないです。

そのため一行一行しっかり吟味しながら解釈する必要があります。

アニメ「炎炎ノ消防隊」の世界観はダークファンタジーのようなものです。

もちろん今の世界とは違った想像の世界ですから異様なものでしょう。

大森元貴はこの点を踏まえて歌詞を書き下ろしています。

しかし「炎炎ノ消防隊」の世界と較べると私たちの日常生活と近い場所を想定しているのです。

僕の夢見る暮らしは安定した日常であります。

この点は私たちが思うことと何ら変わりはありません。

ただし僕はそうした安定した暮らしの刺激のなさに満足できないとも歌います。

僕に付随するのはヒーロー属性なのです。

市井の私たちとは少し違った使命感を背負っていると考えた方がいいかもしれません。

僕らが生きるのは異化された現実です。

人生で迷子になるように

Mrs.GREEN APPLE【インフェルノ】歌詞の意味を独自解釈!現実は地獄?導きの先に何が待つの画像

見慣れない言葉である「熄み」は(やみ)と読みます。

火が消える様子を表す言葉です。

この辺りは「炎炎ノ消防隊」にあやかっているのでしょう。

道を照らしていた光が消え入ります。

そのため僕は日頃、歩き通っていた道すら分からなくなるのです。

道とは人生や生活の向かい方などの隠喩でしょう。

光が消えた今、人生の中でまるで迷子になってしまったかのような感覚に陥るのです。

すでに自分が通ったはずの道筋さえ未明の淵にあるかのように感じられるのでしょう。

これからは自分たちで道を開拓してゆかなければならなくなるのです。

過酷な現実が待っています。

生きていれば当然に不当なことで悩まされることもあるでしょう。

一方で日々の暮らしは今のところ優しいコミュニティの恩恵を受けているようです。

「インフェルノ」とは地獄の様相という意味ですがこの歌い出しではまだその姿を見せていません。

先を見てゆきましょう。

甘い幻想が打ち砕かれて

新しい標を授かって前へ

Mrs.GREEN APPLE【インフェルノ】歌詞の意味を独自解釈!現実は地獄?導きの先に何が待つの画像

炎が立つ
導の方へ
思い出すは優しいメロディー

永遠は無いんだと 無いんだと云フ
それもまたイイねと笑ってみる
輝けばいつかは光も絶える
僕らは命の火が消えるその日まで歩いてゆく

出典: インフェルノ/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴

生きてきた道筋を照らしていた光。

一旦は消え入ってしまった光ですが先方に炎が燃え立ったと歌います。

展開は急速に変わりゆくのです。

僕はその炎こそ自分の人生のガイディング・ライトだと信じて前へ進みます。

「炎炎ノ消防隊」の作品世界では炎が立つという現象は特別な意味を持つのです。

あるとき突如発火して炎に包まれる「焔ビト」が周囲を焼き尽くす。

この炎と闘う消防隊がストーリーの基軸になっています。

しかし大森元貴は炎にネガティブな意味は込めていません。

むしろ僕らを導く光として積極的な意義を見出しているのです。

このガイディング・ライトに向かって歩いてゆく道すがら想い出の歌が聴こえる。

暗い世相の中に新しい光が生まれたことに安心感を覚えたのかもしれません。

生きてゆくことは並大抵のことではなくなった世界でのエピソードです。

私たちも現実の暮らしの中で進路に迷うことが多々あります。

そんなときに新しい目標を授かったときの安堵感は言葉に尽くせないものでしょう。

僕が生きている世界が私たちのものと地続きであるかはもう少し見ていかないと分かりません。

それでも私たちだって僕の気持ちに同調できる。

若いリスナーは特にそうした印象を持っているはずです。

永遠はないに「Like」

Mrs.GREEN APPLE【インフェルノ】歌詞の意味を独自解釈!現実は地獄?導きの先に何が待つの画像

私たちは大きな歴史の時間の中では非常に儚い存在です。

そのために逆説的に永遠というものに重い価値を見出してきました

愛が永遠であることを誓うなど私たちの人生の節目でこの概念が登場します。

しかし永遠というものを目撃したものは誰もいません。

永遠に近づこうとも敢えなく生命を落とすのが私たちの宿命なのです。

だれも確証したことがない概念は真実だといえるでしょうか。

大森元貴はバッサリと永遠というものを否定します。

永遠なんていわれるけれどもそんなものはないようだ。

ではそこから僕らはどのように人生を育もうかと考え直すのです。

まるでSNSで「Like」と押すように永遠がないことを承認します。

永遠がないのであれば私たちはその日一日を大切に暮らしてゆくしかなくなるでしょう。

それこそが人間本来の暮らしの姿です。

限られた生命を生きることの尊さを知るときが来たのでしょう。

「インフェルノ」という楽曲の世界観は人間の甘い幻想が打ち砕かれた土地で起こることをベースにします。

生命には限りがあるからこそ行けるところまでゆけばいい。

最後まで歩いてゆくことが肝心だと大森元貴は歌うのです。

知識不足はなぜ罪か