最後に 生きやすい社会のために

色彩心理学は何を伝えるのか

【アーバンギャルド/水玉病】歌詞の意味を考察!水玉とはいったい何を表している?少女のトラウマを紐解くの画像

赤く白く塗りつぶして
混ざるぐらい塗りつぶして
赤く白く塗りつぶして

出典: 水玉病/作詞:松永天馬 作曲:松永天馬, 谷地村啓

少女は自分が生きた痕跡をこの世界に残そうとします。

そのために好きな色にこの社会を塗り分けるのです。

ここではあくまでも赤と白の2色にこだわり続けます

白黒はっきりさせたいと願うのが男性の心理です。

一方で少女は白と黒というモノクロームな世界には馴染めません。

色彩心理学というものがありますが、女性はどうしても赤に親近感を覚えるのです。

そのために世界を赤と白に塗りつぶすことに固執します。

現実の世界の色は光の温度であり無限なものでしょう。

カラフルな世界のままで受け入れられるのが大人になった証拠です。

しかし赤と白に世界を分けたがる少女の感性は稚いままでしょう。

ただこれも青春という一過性の病に罹患した結果に過ぎません。

またこの青春期に付随して一部の少女を冒す「水玉病」もいずれは退くものです。

しかしいまこの歌の中の少女は病の只中にいます。

感性の赴くままに世界を赤と白に塗り分け、水玉で塗りつぶすことを最後まで歌い続けるのです。

この場から去ってしまいたい願望

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死にたい 消えたい 死にたい 消えたい
死にたい 消えたい いなくなくなりたい

出典: 水玉病/作詞:松永天馬 作曲:松永天馬, 谷地村啓

「水玉病」は一過性ですが精神を冒す病のひとつです。

草間彌生のように生涯、この病気が治らない人もいます。

そこには彼女固有の病苦が滲んでいるので深入りするのは躊躇してしまうものです。

生きることの表現で彼女は世界を水玉で塗りつぶします。

少女に固有の病気である「水玉病」にはここまで徹底した覚悟はありません。

青春期に心の風邪をひくことはよくあることです。

失恋を経験すると抑うつ症状に見舞われます。

抑うつ症状とはいえ病気ではなく自然な心の反応でしかありません。

しかし症状としてはうつ病と非常に相似性のあるものです。

そのためにメンタルヘルスを崩してしまい自殺念慮に囚われることもあります。

実際に衝動的に自殺を企てたり、一過性の症状から慢性化させて病む人もいるのです。

この世界にいるのが辛くて仕方がない思いに少女が囚われることは悲劇でしょう。

何とか力になってあげたいものですが、日本の社会は自助ばかりを押し付けてきます。

もっと公助や共助によって辛い状態から引き上げられる道筋をたどる必要があるでしょう。

しかしこの問題はこの解説記事には重すぎる事柄です。

あくまでも「水玉病」と自殺念慮の問題について考えましょう。

ここから去ってしまいたいという悲壮な思いは恥ずかしさというものにこだわる少女固有の現象です。

問題の解決のために立ち去ることや消え入ることを選んでしまうのが「水玉病」のたちの悪さでしょう。

問題を正面から解決する覚悟はなく、しかし自殺する覚悟はできてしまうのです。

これは究極の現実逃避の在り方でしょう。

松永天馬はそのことを指弾するわけでもなく、ただただありのままに表現しました。

悩める少女のために処方箋を差し出すこともしません。

どこかドライな批評眼で「水玉病」というものを観察しているのです。

そして「水玉病」患者の声を代弁しました。

大切なことはこうした声を聴いたリスナーがどのような行動に移すのかということかもしれません。

青少年は条例によって守られている存在なので、中々、肉親や教師以外の人が触れ合う機会はないです。

それでもこうした深刻な思いを抱えた少女たちもいること。

少女の死因の第1位が自殺であるという現実をきちんと見据える必要があると感じるはずです。

少女たちが何の病にも冒されずに健康で過ごせる社会の方がより望ましいでしょう。

アーバンギャルドは少女たちの共感を呼びました。

一方で大人の鑑賞にも耐える楽曲歌詞を届けてくれます。

「水玉病」という奇病のためにできることって何だろうと考えてみたいです。

それは誰にとっても生きやすい社会を作ることなのでしょうがうまくはゆかない現状があります。

根本的な解決は何ひとつ具体的な策が思い浮かびません。

しかし私たちは「水玉病」を克服した大人の責任を自覚する必要があると思わされます。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

OTOKAKEとアーバンギャルドの軌跡

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中でも新宿という街が妖艶な魅力を持っていた時代を描いた作品の記事を推しましょう。

シンジュク・モナムール」という楽曲でアーバンギャルドの真骨頂が聴けます。

この曲の歌詞を徹底解説して文化の発信地だった新宿の姿を浮かび上がらせました。

渾身の記事ですので是非ご覧ください。

アーバンギャルドが2015年に発表した「シンジュク・モナムール」。かつての猥雑な街であった歓楽街・新宿を舞台に様々な風物が描かれています。描きたかったのはこの街で刹那な人生を生きる少女の姿です。歌詞を紐解きましょう。

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