「誰誰誰」ってどんな曲?
TVドラマのオープニングテーマ
香取慎吾主演のテレビ東京系TVドラマ「アノニマス 〜警視庁“指殺人”対策室〜」のオープニングテーマです。
ドラマのテーマ・脚本を読み込んでアイナ・ジ・エンド自身が作詞作曲し書き下ろした新曲です。
配信リリースされたのちに、ソロとしてのファーストEP「内緒」に収録されました。
編曲・サウンドプロデュースは亀田誠治
ファースト・フルアルバム「THE END」同様、編曲・サウンドプロデュースに亀田誠治を迎えました。
ドラマの世界観とリンクして、人間の狂気を表現するように超攻めたハードな編曲がとてもカッコイイです。
随所にベースのスラップ奏法(打楽器のように弾く)が盛り込まれ、ベーシストとしての亀田さんも堪能できます。
もともと個性的なアイナ・ジ・エンドの歌声にノイジーな加工をしている点も秀逸。
ヒリヒリするような世界観とソリッドなサウンドはかなりの中毒性があります。
嫌悪感の一歩手前で一番魅力的なところがギュッと詰まっていて、多くのリスナーを魅了することでしょう。
歌詞を読み解く
何が良くて悪いのか
歌詞全体から漂うのは、実社会とネットの間で善悪の価値基準が曖昧になって翻弄される様子です。
指一つで誰かを傷つけ、時には殺してしまえる世界で、心の拠り所はなんなのか。
いつの間にか誰しもがそんな力を持ってしまった恍惚と狂気を歌っているように感じます。
SNSが当たり前になり、手軽にネット上で違う人格になれる…あなたは”誰”なのか?を問われています。
どこまでもついて回る憂鬱
夢ですら争うの?
良いも悪いも同情です
せめて最後の言葉 一つ一つ
嵌めるならそこで終了さ
出典: 誰誰誰/作詞:アイナ・ジ・エンド 作曲:アイナ・ジ・エンド
不安を感じさせる不協和音のようなキーボードのリフからはじまります。
歌い出す前から、すでに周りに翻弄されるような、自分が壊れていくような気分になります。
人が一番無防備になるのは寝ている瞬間です。
寝ている間に見るのが夢、本当ならリラックスできるはずの瞬間でも争うの?と問いかけます。
つまり、安住の地が見つからなくて、どこまでも争いがついて回る憂鬱に絶望してしまいます。
良いか悪いかなんて単純に決められなくて、見方を変えれば善が悪にもなって、逆もまた然り。
顔の見えない混沌としたネットの世界で、自分の価値感ってなんだったのか分からなくなっていきます。
おびただしく発信される言葉の一つ一つは、薬にも毒にもなってしまう…。
時には、誰かを傷つけてしまうかもしれませんし、誰かを勇気づけ生きる希望を与えるかもしれません。
”せめて”という三文字に一抹の希望を信じてすがる願いのようなものを感じます。
その最後の言葉にすら希望が持てないのなら、もう終わりなのです。
狂気に支配された人格
ただの命令一つさ
原型にとどめ刺して
顕微鏡でも見てな
誰 誰 誰
出典: 誰誰誰/作詞:アイナ・ジ・エンド 作曲:アイナ・ジ・エンド
指先一つで人を殺してしまえることさえも、”ただの命令一つ”と言ってしまえる狂気の人格が現れます。
誰かに嫌悪感を抱き攻撃的な言葉を放つ人格はどんな顔をしているでしょうか?
きっと、狂気に満ちた恐怖を感じさせるような薄ら笑いを浮かべていることでしょう。
”原型”というのは、良いも悪いもないフラットな言葉そのものです。
その言葉に”とどめ刺して”というのは、言葉に悪意を込めるということではないかと思います。
例えば、「楽しい」という言葉(原型)は、そのままでは良くも悪くもありません。
そこに「とても」とか「すごく」、あるいは語尾に「!」をつけると、良い心の状態を伝えられます。
逆に、「そんなに」とか「なんで」、もしくは「?」をつけると、悪意や皮肉とも取ることができます。
”顕微鏡”とは、本来、科学者や研修者が使う道具です。
そこから想像すると、顕微鏡は世間の常識とか倫理の比喩と捉えることができます。
加えて、顕微鏡を覗いて使うもので、そこから見えるのはミクロの世界。
”見てな”と吐き捨てるのは、おまえの小さくてつまらない世界に閉じこもっていなよ!という意味です。
そして、そんな狂気に満ちているのは誰、誰?誰!と問いかけます。
なにかに迷ったとき、いろんな意見を言う自分がたくさん現れて、自分を取り囲むようなイメージです。
誰しもそんな経験あるのではないでしょうか。