フランス王政に対する不満が爆発し、フランス革命が勃発します。
それによってルイ16世とともにマリー・アントワネットも処刑されてしまうことになりました。
革命によって、何もかも失ったのです。
生まれながらに高貴な身分だった彼女にとって、それはとても恐ろしいことでしょう。
政略結婚でフランスに来て以来、彼女は彼女なりにフランスを愛し、王妃らしく振舞っていました。
しかし、彼女の思いとは裏腹に、常に貴族や国民からの批判に晒されてしまいます。
誰からも愛されることのなかった彼女は、きっと愛されることも忘れてしまっていたのではないでしょうか。
それでも、愛していたフランスで過ごした日々は美しいものだったはずです。
その人生も処刑によって終わってしまう、という意味が読み取れます。
処刑のとき
10月の雨に打たれて 目を閉じた その時に
何を手に入れるのだろう?
教えてよ Marie
出典: marie/作詞:aimerrhythm 作曲:横山裕章
マリー・アントワネットの処刑は10月に執行されました。
歌詞にある「10月の雨」は、この処刑のことを指していると読み取れます。
史実では処刑日に雨が降っていたという記述は見つかりませんでした。
歌詞に歌われている「雨」とは民衆から浴びせられる非難や罵倒とも考えられると思います。
浴びせられるそれらの言葉は、10月の雨のように冷たく、彼女の心を深く傷つけるものだったはずです。
全てを失い、誰からも愛されないことへの絶望と悲しみで目を閉じてそれらの言葉を受け入れたのではないか。
そんな光景が浮かぶように感じられます。
けれど実際に彼女が何を思っていたのか、私たちは推察することしかできません。
最後は、もう聞くことのできない彼女の思いを聞かせてほしいと語りかけているように読み取れます。
理想と矜持
幼い頃の夢
毎夜 指輪(リング)の森で あの風に吹かれて
12の唄 紡いで 夢見ていた
出典: marie/作詞:aimerrhythm 作曲:横山裕章
2番の歌い出しでは、マリー・アントワネットの過去を振り返るような歌詞です。
彼女の故郷、オーストリアのウィーン郊外にマイヤーリンクという森があります。
自然への憧れや理想を抱いていた彼女は、マイヤーリンクの森をはじめとして自然に親しんでいたのでしょう。
さらに彼女は音楽への造詣も深く、自身も作曲を行っていました。
革命時に作品の多くは焼かれてしまい、現存しているのは12曲のみです。
自然への憧れを強く持っていた彼女は、森の中で風に吹かれながら作曲をしていたのではないかと想像できます。
結婚前までは、理想の世界の中で素晴らしい未来を夢見ていたのではないかと読み取れるでしょう。
王妃としての矜持
縋る様に抱き合う 平然と狼狽ですら
壁の画のいつかの輝きを語り出す
出典: marie/作詞:aimerrhythm 作曲:横山裕章
マリー・アントワネットは生前、多くの肖像画が描かれました。
その中には首飾り事件をはじめとして辛い時期に描かれたものもあります。
その時期の彼女の表情は、どことなくかたく、何かを耐えているようにも感じられる表情です。
しかし、王妃としての矜持によって、そうした負の感情は隠されています。
侮辱されるたびに抱きついて離れない悲しみや怒りを押し殺し、平然としている彼女が描かれているのです。
その肖像画から、彼女が誇りを捨てずに王妃らしく輝いていたということが感じられるでしょう。
地に落とされた王妃
神聖な存在から罪人へ
麗しき天で結ばれ
この地上で引き裂かれて
光を消していく 愛おしい日々
出典: marie/作詞:aimerrhythm 作曲:横山裕章
マリー・アントワネットが結婚したルイ16世は、フランスの歴史の中ではブルボン朝の王の1人です。
ブルボン朝では国王を頂点として、その下に貴族、1番下が平民という身分制度がありました。
この制度の中で、マリー・アントワネットもルイ16世も最上級の身分に属しています。
ハプスブルク家も名門のため、彼女は天の神々のように神聖で高貴な存在としてあり続けました。
しかし、革命によってその地位から引きずり降ろされ、罪人として処刑されてしまいます。
何不自由なかった天から地上に降ろされ、全てを失ったマリー・アントワネット。
革命前の華々しい日々は、処刑までの日々の中で光を失っていたのではないかと考えさせられます。