相手のことを思い、恋する乙女のことを歌ったと思われるAメロから一転、雰囲気が少し変わります。
「勇気があれば叶うかもしれない」。ということは、主人公にはまだその勇気がないということ指していると思われます。
主人公は勇気がないので、相手にその思いを伝えられていなということなのでしょうか。
思いが伝わっていないから「距離は平行線」なのかもしれません。
ここまではなかなか相手に思いを伝えられない、もどかしい気持ちを表現したラブソングのように思えます。
しかしサビの後半でまた少し雰囲気が変わります。
「一番大事な気持ち」というのは何を意味しているのでしょうか?相手に対する思い?あるいは別の気持ち?
主人公の心の内が少し謎になってきました。続いて現れる重要なキーワードがあります。
「2つに分かれた自分」とはどういうことなのでしょうか。少し考えてみたいと思います。
「2つに分かれた自分」とは?
Perfumeのことを表現している?
改めてお伝えしておきたいのは、歌詞の解釈に正解はないということです。100人いれば100通りの解釈があって当然だと思います。
ここで示す解釈もあくまで一つの解釈でしかありません。聞いた人がそれぞれ自分の考えで理解することだと思います。
それでは参考までに、私の思う解釈を書いてみたいと思います。
「2つに分かれた自分」というのは、つまり「本当の自分」と「外に向けた虚像としての自分」ということではないでしょうか。
場所や付き合う相手や友人などによって、違う自分を演じているという気持ちになることもあると思います。
学校や職場、家族の前ではその場所に合わせた自分のキャラを作ってしまう。
そこに違和感を感じる「本当の自分」がいる、というのは多かれ少なかれ誰にも経験があるのではないかと思います。
Perfumeの場合はどうでしょうか。
「ポリリズム」のヒットでそれまでとは一気に状況が変わり、メディア向けに求められる「Perfume像」を演じている。
そんな気持ちが3人の胸に去来したと想像するのは難しいことではありません。
Perfumeのライブを見た人は、広島弁でざっくばらんに観客と触れ合う3人の姿を知っていると思います。
その姿は素に近いのかもしれませんが、それでもPerfumeとして人前でパフォーマンスするという意味ではやはり「虚像」なのかもしれません。
「本当の自分」と「演じている自分」、「2つに分かれた自分」をもう一度重ねたいというのが、この曲の本当のテーマなのではないかと思うのです。
「本当の願い」
勇気を与える歌詞
長く眠れた今日の 心地よい風に
のせて歌う鼻歌 ラララ ラララ ラララ
空が高くなってきて 肌寒い夜に
キミは何を思うの? 一人考えていた
出典: 願い/作詞:中田ヤスタカ 作曲:中田ヤスタカ
しかし、前に書いたような「2つに分かれた自分」をテーマにしていると考えると、別の意味に見えてくる気がします。
「キミ」というのは2つに分かれたもう一人の自分のことを指しているのでは、というとらえ方もできると思います。
そう考えると1番の歌詞も違った見方になってきます。
このように別のテーマをラブソングの形として表現するという手法は中田ヤスタカは他の曲でもやっていますし、とても上手いのです。
Perfumeとは違っても、周りに合わせてキャラを作ったり演じている自分に嫌気がさしている人はいるでしょう。
そんな人に向けて「大丈夫、私たちもそうだから」と寄り添うような曲になっているとも思います。
自分をだまして「別の自分」を作るのはやめよう、勇気を出して一歩を踏み出そうと後押ししてくれる曲でもあるのではないでしょうか。
曲にこめた本当の願いとは
もうすこしの勇気がないと
叶わないことばかりで
だけど もしかしたらって
距離は 平行線
一番大事な気持ちに
嘘は付かないと決めた
遠回りをしたけど
これが本当の願い
出典: 願い/作詞:中田ヤスタカ 作曲:中田ヤスタカ
本当の自分と演じている自分、2つの自分に引き裂かれそうな状況に対してもう少しだけ勇気を出して2つの自分をくっつけようという思いが切実に歌われています。
「本当の願い」はその一番大事な気持ちに嘘をつかないということだったのです。
最初に書いた通り、この「願い」はシングル「Dream Fighter」のカップリングでした。
「Dream Fighter」は夢をかなえるために頑張ろう、という応援ソングです。
Perfumeの3人にとっての夢とはアイドルとして成功することだったでしょう。まさにその成功を手にしたピークに出たのが「Dream Fighter」だったのです。
しかし、その成功と引き換えに彼女らは常に「ファンが求めるPerfume」、「メディアが求めるPerfume」を演じなくてはならなくなりました。
その苦しみを中田ヤスタカはわかっていたのでしょう。
「Dream Fighter」とある意味対極にある「願い」をカップリングにしたのは「君たちの気持ちはわかっているよ」という中田ヤスタカからPerfumeに対するメッセージだったのかもしれません。
最後に
Perfumeの「願い」とその歌詞の意味について、半分妄想も含めていろいろと考えてみました。
繰り返しになりますが、歌詞の解釈に正解はありません。聞いた人それぞれが自分の解釈をすれば良いのだと思います。
ただ、ここに書いた解釈が皆さんの考えの参考にでもなってくれれば幸いです。
Perfumeの曲はよく聞くと実は深いものがたくさんあります。興味深い記事がほかにもありますので、最後にいくつかご紹介したいと思います。
Perfume「Spending all my time」の和訳&気になる歌詞の意味を紐解く♪ - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
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