Triangle は戦後60年を意識した反戦ソングだった
SMAPの38枚目のシングルにあたるこの「Triangle」は2005年にリリースされ、「東京国際女子マラソン」のバックに初めて流れて以来多くのビックイベントのテーマソングとして起用されてきました。
1945年に終戦を迎えた日本は2005年は60年の節目に当たる年。世界ではそのころ2001年に起こった9.11同時多発テロを機にテロ撲滅へのアメリカ宣戦布告で軍事活動が盛んになっている時期でもありました。
テロ勃発以降はイラク戦争にさらに拍車がかかり、2003年にはイラク大統領サダムフセインの国外退去拒否によりアメリカはバクダッドに空爆を仕掛けました。
この一連の軍事行動に日本も賛同し、自衛隊を「非戦闘地区」に派遣するなどしてアメリカに参戦する形となるのです。こんな世界が殺気だった雰囲気の中で生まれた「Triangle」。
歌詞のなかに現れる「大国の英雄」「戦火の少女」「構えた銃」の言葉は明らかに戦場で戦う人々の姿を表現し、戦争とは何かを改めて訴えかける強いメッセージが込められています。
「Triangle」の歌詞から読み取るスローガン
グローバル感を発想させるバース
都心を少し外れた 小さなこの部屋から
どんなに目を凝らせど 見えないものばかりだ
例えば 遠い空に誰かが祈っていたり
例えば 身を潜めてキミが怯えていたり
すべてに満ち足りた 明日の日を
求め彷徨う 亡者の影
破壊でしか 見出せない
未来の世界を 愛せないよ
出典: Triangle/作詞:市川善康 作曲:市川善康
歌の出だしのバースの部分にすでにグローバルな世界観を想像させる歌詞が出てきますね。例えばの後に「遠い空」「キミ」とあるのは世界のどこか遠くにいる誰かの事を思った一節になっています。
「亡者」という言葉を使うことで死者の魂が彷徨っている=戦争で失われた命が亡くなったいまも平和を求めてさまよっているということを暗示。
「破壊でしか見いだせない未来」これはまさに戦うことでしかつかめない未来で本当にいいのだろうか?という世界への問いかけとなってバースを締めくくっています。
生きる自由・平和に暮らせる自由
誰にでも与えられた権利それは自由
僕の目が 君の手が 僕らの声が
それぞれ異なっているように
自由でこそ 生命だから
僕の肌 君の母 僕らの愛は
蒼く浮かぶちっぽけな惑星に
舞い降りた奇蹟
出典: Triangle/作詞:市川善康 作曲:市川善康
「僕の目が、君の手が、僕らの声が、それぞれ異なっているように」このくだりは人種や性別、話す言葉が違っているけれども、全員同じ平和の自由という権利をもった大切な一つ一つの命なんだという主張です。
自分たちは容姿や環境が違っても母体から、宇宙のなかでは小さな地球という星に生まれれてきたミラクル。だから平和に生きる自由が保障されるべきなんだというスローガン的な表現がされているのです。
戦争への追憶と現代のギャップ
無口な祖父の想いが父へと 時代を跨ぎ
一途に登り続けた 過酷な道
わずかな苦しみも 知らぬまま
後に生まれ 生きる僕ら
受け継ごう その想い
声の限り 伝えるんだ
出典: Triangle/作詞:市川善康 作曲:市川善康
戦争時代を知る祖父はきっと事あるごとに自分の父親に、戦時中の苦悩を伝えて来たに違いありません。戦後の貧しい時代を一生懸命生き抜いてきた「過酷な道」を知るのはもう祖父だけとなってしまいました。
戦争を本当に知らない自分たちの世代ができることは、後世に戦争の歴史を語り継ぐこと。時を経ても決して色あせない戦争の恐ろしさを伝えていくことが私たちに課せられた使命なのです。
2番のバースには日本だけでなく世界全体が忘れようとしている戦争の悲惨さを忘れてはいけない、と語りかけるフレーズが表現されています。曲が進むにつれさらに戦争という物が具体化して現れます。
戦果から学ぶべきことは?
大国の英雄(ヒーロー)や 戦火の少女
それぞれ重さの同じ
尊ぶべき生命だから
精悍な顔つきで構えた銃は
他でもなく 僕らの心に
突きつけられている
深く深く刻まれた
あの傷のように
出典: Triangle/作詞:市川善康 作曲:市川善康