クボタカイ「せいかつ」
デビューEP『明星』収録曲
2017年から楽曲制作を始め、怒涛の勢いで躍進を続けているクボタカイ。
今回ご紹介するのは、デビューEPである『明星』に収録されている楽曲「せいかつ」です。
そのタイトルからも分かるように、あるカップルの生活の形を綴った楽曲。
彼の特徴でもある柔らかな印象を持った言葉で綴られた歌詞がこの楽曲でも彼独自の世界観を作り上げています。
平凡でありながらも心惹かれるその生活に隠された心情や、その歌詞の意味に迫ります。
MVはこちら
内容は、あるカップルの生活を定点で観察するような映像となっています。
歌詞とシンクロするように2人の関係性が次々に描かれますがこれは主人公の脳内の記憶なのかもしれません。
この楽曲の歌詞で描かれている2人の生活がどのようなものだったのか。
それを映像化し、楽曲を伝わりやすくしたのかもしれません。
このMVを見ていただくことで、この先の歌詞解説もより分かりやすくなることでしょう。
まだ見ていない方は是非、ご覧になってみてください。
あるカップルの生活
ある生活の風景
水色のワンピースを買った 飲みかけの缶ビールの殻
君は寝惚けたまま飲み干して 苦くて気の抜けた声で「ごめん」
眠ったフリをして始まる朝 憂鬱を押し付けた灰皿
煙みたいにまだ漂ってる なんで今言ったんだろう「ごめん」
出典: せいかつ/作詞:クボタカイ 作曲:クボタカイ,SHUN
歌詞の冒頭からあるカップルの普段の生活における1場面を切り取った情景描写によって、楽曲の世界観を提示しています。
具体的に色や物を描写することによってその情景を思い浮かべやすくしているのでしょうか。
これは2人で過ごした休日の様子を表していると考えられます。
デートへ出かけて服を買い、夜になって家に帰ってきてから2人でビールを飲み、そのまま主人公の横で眠った恋人。
突然寝惚け眼で起きて「ごめん」と呟く恋人に対して何故そんなことを言ったのか分からずにいる主人公の姿が描かれています。
恋人は何かやましいことがあるのかもしれないと、そんなことを勘繰ってしまう心当たりのない「ごめん」。
3、4行目からは主人公の心にモヤモヤとした感情が立ち込めているのが伝わってきます。
まるで煙草の煙のように、煙たく彼の周りを取り巻いているのでしょう。
その「ごめん」が頭から離れず悶々とした気持ちを抱えているのかもしれません。
2人の間に何となくギクシャクとした空気が流れているのを感じる歌詞です。
若さが生んだ距離
ずれたままの 秒針が響く部屋 間違ってない ぼくたちは若すぎた
出典: せいかつ/作詞:クボタカイ 作曲:クボタカイ,SHUN
そして次の1行でこの物語の行く末が暗示されています。
ずれた「秒針」が意味しているのは2人の間に流れる沈黙とすれ違う心です。
恋人同士であった2人の心に距離が生まれた理由。
それは2人がまだ若く、未熟だったから。
お互いを嫌いになったり他の人を好きになったりした訳ではないのでしょう。
若いということは経験が少ないということを意味します。
相手のことを考えようにも経験が少なければ上手く相手を理解できない事もあるでしょう。
2人はまだ互いの気持ちを理解し合うには若すぎたのかもしれません。
しかしそれでも、自分たちが出会ったことに対しては間違いだと思っていないのでしょう。
若さ故のすれ違い
優しさが痛い
「おやすみ」で訪れる暗がり くすんだ赤い糸の繋がり
優しさで繋げとめる程に 首を絞めていたのか「ごめん」
薄らと目が慣れて薄明かり のくせ鮮明になると怖い
出典: せいかつ/作詞:クボタカイ 作曲:クボタカイ,SHUN