月明りで照らされたのは
あなたの生き方を教えて 1秒ごとに
微笑みの翳(かげ)りも月夜に曝してみて
硝子の波がうねっている あんなに
破片で傷ついたら透明な血を流すの
出典: CRESCENT MOON/作詞:松本隆 作曲:大野宏明
好きになったらどんな瞬間でもあなたのことが知りたい。
なにを考えてどう感じているのか、そのすべてが知りたい。
1秒ごとに変わるその表情、気持ち。
憂いを浮かべた微笑みだって、月明かりの下では照らされてしまう。
そうして私にも全部見せてくれたらいいのに、という主人公の願望も現れてきます。
さらけ出した感情は守られることもなく、たやすく傷つけられてしまうかもしれません。
でもそんなことは主人公には関係のないこと。
目の前の彼とまっすぐ向き合う覚悟はできているからでしょう。
たとえ傷つけられたとしてもその痛みを感じないくらいの愛。
主人公はそんな強い気持ちをもう持っています。
月明りで照らし出されたのは、主人公自身の気持ちでもあるのです。
強くなっていく想い
三日月の寝台は海から
吹く風にふるえる
どんなに逆風だって私負けない
時代につぶされても二人で
生き抜いていこうね
あなたのたよりないとこ
かばってあげたい
出典: CRESCENT MOON/作詞:松本隆 作曲:大野宏明
曲が進むごとに見えてくるのは、その健気な愛の強さ。
そこにあるのは儚く不安定な関係ながらも少し頼りない彼を知って、支えていきたいという主人公の強い想い。
海からの風に脅かされても、どんなに向かい風が強くても心は折れない。
私がついているから、守ってあげるからというたくましさも感じます。
「だから二人で一緒に生きていこうね」
そんな風にいえるのは、女性特有のしなやかな強さがあるからかもしれません。
猫の目に隠されているのは
私の中の猫は鋭い爪かくしてじゃれる
未来をうらぎったなら
たぶん許さない
出典: CRESCENT MOON/作詞:松本隆 作曲:大野宏明
【CRESCENT MOON】は健気な恋心だけが歌われているわけではありません。
ここでキーワードになるのは「猫」。
猫の目には表情が現れるもの。
三日月のように細く穏やかなときもあれば、ギラギラした満月のように鋭く光るときもある。
普段は大人しく気ままで可愛い猫にも、鋭い爪が隠されています。
彼といるときはかわいい自分でいるつもり。
だけど、もしあなたが私の気持ちを裏切るようなことがあったら...
きっとただではすまさないからという警告も含まれています。
純粋な愛を持つからこそ潜む攻撃性もそこには隠されているのです。
砂時計の中でも、愛を信じて
時は砂粒 指からこぼれ落ちる
世界中崩れて無になっても
この愛がある限り
生きられる
出典: CRESCENT MOON/作詞:松本隆 作曲:大野宏明
時間は砂時計のよう、いくらつかもうとしても指からすべり落ちていってしまう。
砂時計の砂に限りがあるように、永遠になんて続かない儚さも主人公は知っています。
ただ、いままでと違うのは愛があること。
愛があるのなら、たとえ世界が終わってもすべてが無くなってしまっても、心は永遠に生き続ける。
砂が全部落ちて空になったとしても、心は愛で満たされ続けています。
三日月の寝台に寝ころび
黙って添い寝して
言葉で話しかけずに目で問いかけて
私の中の猫は鋭い爪かくしてじゃれる
未来をうらぎったなら
たぶん許さない
出典: CRESCENT MOON/作詞:松本隆 作曲:大野宏明
繰り返されるサビも終盤には心強さを感じとることができます。
ただ見つめあうだけじゃない、もう言葉なんていらない。
「目を見れば私がどう思っているかわかるでしょ?私がどれだけあなたのことを好きなのか」
そこには愛の力を信じている主人公の強い気持ちをはっきりと感じとることができます。
しかしここで終わりではありません。
本編の軽快さとは裏腹に少し混沌としたアウトロは、二人のこれから進む未来への不安を予感しているようです。
もしかしたらうまくいかないかもしれない。
未来にはいくつもの困難が待ち受けているでしょう。
どうなるのかは二人にも、主人公にもわかりません。
でも自分の愛を信じて、それを貫く精神があるのなら乗り越えていけるはず。
もう一人ではなく、二人なのだから。