存在意義がなくなる

自分がない 自分がないから 浮かばれない
持論がある 持論があるから 報われたい
流行りに乗ってるけど 好きでやってんの ねえ
それとも 魂売って 自分殺してんの

ひゅ~どろろ ひゅ~どろろ
滑ってるのに みんなは称賛
日々労働を のち法要を
続けます 私の好きな ウケねらいを

出典: おばけのウケねらい/作詞:ピノキオピー 作曲:ピノキオピー

ここで前述した「おばけ」の抱える『とある問題』が出てきました。

「自分がない」というのはどんな意味でしょうか?

もし人間が怖がってくれなかったとしたら「おばけ」はどうなってしまうのか…?

ただこの世を彷徨い続けるだけ…。

それってすごく虚しくて孤独なのかもしれません。

「おばけ」にとって、「怖がられる」ことで自分の「存在意義」が鮮明になるのです。

ホラー番組が当たり前になり「恐怖」に耐性がついた現代は「おばけ」にとって深刻な状況。

生き残りと生きがいをかけて、「おばけ」も必死になっているのでしょう。

より驚いてもらうために、「自分らしさ」よりも効率を重視する。

それを「労働」とすら表現しています(笑)

やはり苦労しているのですね。

ときには失敗もする

じんわり火が灯る ローソク吹き消し
大音量のラップ音で すべてが台無し
ありがち? いや スタンダード
斬新? いや 出オチ
心霊スポットのレビュー 怨念の考察

出典: おばけのウケねらい/作詞:ピノキオピー 作曲:ピノキオピー

ここでは「怖がらせる」ことにちょっと失敗してしまった「おばけ」が描写されていますね。

誰もいない部屋の中から奇妙な音が聞こえる、いわゆる「ラップ音」といわれる心霊現象。

音量をミスってしまったようです(笑)

まるでカラオケのマイクの音量をミスしたような表現には、親近感すら湧いてしまいます。

「ありきたり」な登場をする理由についても述べていますね。

新しいパターンは「斬新」と思われるよりも「出オチ」になってしまう危険を孕んでいるのです。

登場した「おばけ」が「出オチ」してしまう状況はなんとしても避けたいもの。

そして、最後の心霊スポットについて。

心霊スポットに行くレビュー動画などが出回っているのを見かけますね。

しかし、実際に「怖い経験」と出くわすよりも、霊の「怨念」について話す方が怖かったりします。

これでは「おばけ」の出番がありませんね(笑)

「おばけ」の性格が垣間見える

その方法は 受け入れない
胡散臭いから 受け入れない
その発想は 受け入れたい
不器用だけど 受け入れたい
効率よく テキトーに化けたい
損するけど ディテール詰めたい
よそはよそ うちはうち
大体が 絵に描いた餅

出典: おばけのウケねらい/作詞:ピノキオピー 作曲:ピノキオピー

効率的な「驚かせ方」を考案する様はまさに「お仕事」ですね。

無駄なく手早く効果的に…。

そう求めるうちに構想だけふくらみ、実現には至れていないようです。

また「よそはよそ」という表現からは、「おばけ」ごとに考え方があることもうかがえます。

流行りに乗るタイプの「おばけ」と、古きを重んずるタイプの「おばけ」がいるのでしょうか?

この主人公の「おばけ」はどうでしょう?

「楽に怖がらせることができたら何でも取り入れたい」というスタンスなのが想像できますね(笑)

「楽にお金を稼ぎたい!」と言っているのと似た印象を受けました。

「怖さ」に対する見解

事件がない 事件がないから リアルじゃない
危険がある 危険があるから みんなは期待
悪霊のイッてる感じ わざと出してんの ねえ
それとも根っから 天才でぶっとんでんの

ひゅ~どろろ ひゅ~どろろ
嗤ってたのに あえなく降参
意気揚々と 死後 ひょうひょうと
わかってるのに やめられぬ ウケねらいよ

出典: おばけのウケねらい/作詞:ピノキオピー 作曲:ピノキオピー

心霊スポットには「事件性」のあるものが多いですね。

昔事故や殺人事件があった…と聞くと信憑性が出て、怖さが2倍増しぐらいになります。

そして「おばけ」に「スリル」を求めているのも事実。

怖いもの見たさという心理がありますね。

怖がらせるにはこの「リアリティとスリル」がポイントになってくるのですね。

さすが、よく分析しています。

また、同種の「おばけ」からしても「悪霊」のイカれたリアクションに疑問を持っているようです(笑)

「わざと」か「もとからイカれてる」のか。

この2択を考えているという点で、正気の「おばけ」はあんなに狂っていないのが分かってしまいます。

人間味のある「おばけ」

悩み多き「おばけ」

生前から引いてばっかりの はずれくじ (はずれくじ)
好きだったおばけはどっか行って 神隠し (神隠し)
やったもん勝ちの許せるラインが ぼやけだし
大嫌いなオカルトをみんなが好きでも そういうもんだし

出典: おばけのウケねらい/作詞:ピノキオピー 作曲:ピノキオピー

生きていたころから冴えない人生だった「おばけ」。

慕っていた「おばけ」とのお別れは、人間らしい悩みに聞こえます。

そして「怖がらせる」ための手段が飽和しきってマンネリ化している「おばけ業界」についても吐露しました。

「おばけ」にも死んでもなお、現実的な悩みがあるのですね。