舞台は戦争の歴史が残る公園

クレイジーケンバンド【タイガー&ドラゴン】歌詞の意味を考察♪四の五の言わず…俺の話を聞きましょう!の画像

クレイジーケンバンドが歌う「タイガー&ドラゴン」は二人の男の物語です。

今は少し縁遠くなっている二人。

昔は一緒にやんちゃな日々を送っていたのです。

主人公の男は、昔なじみの男に金を貸しています。

久しぶりに連絡を取り、男は相手を呼び出すのです。

「話がしたいから待っている、金の話じゃないんだ」と男は告げています。

この男は何故、今頃になって昔つるんだ仲間を呼び出したのでしょうか?

再会の場所は戦いの軌跡が残る公園

トンネル抜ければ 海が見えるから
そのまま ドン突きの三笠公園で

出典: タイガー&ドラゴン/作詞:横山剣 作曲:横山剣

男は、昔なじみの男を三笠公園に呼び出しています。

そこにはある特殊なものが展示されているのをご存知でしょうか?

それは、記念艦として保存されている戦艦「三笠」です。

日露戦争で活躍した戦艦「三笠」ですが、戦争が終わった後に保存されたのです。

戦後の一時期には、金属や甲板の板を盗まれ、哀れな姿になってしまいました。

その後、アメリカの海軍元帥が庇護して保存されます。

復元する費用がない所に、イギリス人がジャパンタイムズ紙に惨状を投書。

そうした外国人の働きのおかげで寄付が集まり、保存の道筋がつき始めます。

昔、大日本帝国海軍の花形だったにも関わらず無残な姿に変わってしまった戦艦。

その栄誉を敵国人だった外国人が認めることで、保護に繋がった戦艦「三笠」なのです。

様々なドラマを生んだ記念艦「三笠」が残る公園。

戦争の足跡が残るこの公園からストーリーが始まるのは、偶然なのでしょうか?

高圧的な言葉なのに気弱さが見える男の心情

あの頃みたいに ダサいスカジャン着て
お前待ってるから 急いで来いよ

出典: タイガー&ドラゴン/作詞:横山剣 作曲:横山剣

この男と呼び出している男は「お前、ダサいな」と言える仲です。

一行目の昔と同じままの服装。

年月が過ぎているのに、当時と同じ姿で待っているというのです。

もうそう若くはないだろうことを考えると、その服装はちょっと浮くでしょう。

しかし、年月が経った今でも「あの時のように待っているから」と言う男の心情。

そこには、あの時の二人の関係に戻りたい、還りたいという思いが感じられます。

掛け違えたボタンを元に戻すように、そこからやり直したいのでしょう。

男のプライドよりも大切なものがある?

俺の話を聞け! 5分だけでもいい
貸した金の事など どうでもいいから

出典: タイガー&ドラゴン/作詞:横山剣 作曲:横山剣

男は、有無を言わせない高圧的な言い方をしています。

昔と同じように。

しかし、時を経た今は「ちょっとだけでも」と弱気な言葉を添えているのです。

その言葉はきっと昔は意地を張って言えなかったのかもしれません。

今のこの男にとっては、見栄やプライドよりも、もっと大切なことがあります。

その証拠に「借金については追及しないから」とまで言っているのです。

男は、待っている相手に金を貸しています。

それも、きっと最近の話ではないでしょう。

相手の方は「借金を返せと言われる」と、ビクビクする位の時間が経っているはずです。

約束を守れていないという負い目もあるでしょう。

しかし、待っているこの男にとって、そんな約束よりも会うことの方が大事

プライドを脇に追いやって「とにかく来い。ちょっとでもいいんだ」と譲歩までしています。

港町の空気感が男の心情にリアリティを生み出す

お前の愛した 横須賀の海の優しさに抱かれて
泣けばいいだろう ハッ!

出典: タイガー&ドラゴン/作詞:横山剣 作曲:横山剣

生まれた街、好きな街、縁がある街。

人は生きている中で様々な街に出会います。

降り立った時に感じる、土地の空気感というのはそれぞれ違うでしょう。

舞台はペリーが来航した歴史ある街です。

冒頭で、記念艦「三笠」が残る三笠公園にも触れました。

外国との接点が始まった街には、異文化と融合する若者文化も生まれています。

田舎なわけでもなく、無機質に人が集まる都会でもないイキがった男たちが好む街。

日本だけれど、異国文化と融合している、カッコイイ何かがある街

若い時には、この街でやんちゃなことをしてきました。

この舞台設定だけで、男同士の物語には独特のリアリティが生まれるのです。

横須賀の街は、異国交流の歴史と、敵味方が折り合う不思議な物語を持っています。

母なる海

ちょっとイキがる男たちが愛するこの街には海があります。

どこまでも続く海。

荒れ狂う猛獣のような時もあれば、鏡のように穏やかな時もあります。

この海をバックに、喜びや怒りや悲しみのドラマが生まれてきました。

この歌の中では海は、包み込む母親のようなイメージです。

傷だらけでやんちゃして帰ってきた子どもを、黙って迎える母のような優しさがあります。

この海に向かって叫んだこともあるでしょう。

きっと、泣いたことも。

昔と同じように変わらずにそこにある海で、男はじっと待っています。