自転車と電車のレースは続きます。
自転車は人間が漕いで走っているので、すぐに疲れてしまいます。
スピードも電車と比べて段違いに遅いです。
それでも主人公は精一杯、ペダルを漕いで走り続けるのですが、非情にも電車は走り過ぎ去ってしまいます。
電車に乗った好きな女性が、ものすごい速さで自分の前から消えていく様子がせつないですね。
彼女はどんな様子だったのでしょうか。
音楽を聴いていたり、勉強していたりしたのでしょうか。
電車のスピードから、主人公の存在に気がつくのは奇跡に近いことかもしれません。
彼は、その奇跡にかけて走るのではないでしょうか。
そして今日も、夢に敗れたようです。
全力疾走
どんなに必死に願っても
叶わぬ夢があるってことか
いつもの坂道 力が尽き果て
君の電車 見送った
出典: 平行線/作詞:秋元康 作曲:近藤圭一
主人公の絶望の声が聞こえてきます。
彼がいくら命を懸けてペダルを漕いでも夢には追いつけないでしょう。
なぜなら電車のスピードの方が、はるかに自転車よりも速いからです。
ここでの夢は、「恋しい彼女と出会うこと」なのだと思います。
なぜかというと、彼は「平行線の恋」と名付けているので、まだ二人は出会ってもいないのです。
とても辛い心情が悲しいですね。
そんな彼を坂道が追い討ちをかけます。
主人公は自転車で走っているのに坂道でさらに負荷がかけられるのです。
こんな残酷な現実があるのでしょうか。
彼は力尽き果てなす術もなく、彼女を乗せた電車を見送っています。
次のチャンスへ向かって頑張って欲しいと応援したくなりますね。
辿りついたゴール
誰もいない駅
10分以上 遅れて着いた
次の駅にはもう誰もいなくて
片思いファンタジー
出典: 平行線/作詞:秋元康 作曲:近藤圭一
それでも彼はゴールまでちゃんと走りました。
彼の自転車通学のゴールは、学校ではなく彼女が降りる駅です。
もしかしたら、自転車で走る道から駅まではちょと離れているのかもしれません。
自転車で直線で全力疾走できる道は、だいたい駅から離れているように思います。
彼女の乗る電車から10分以上も遅れて、彼は駅に到着します。
というと、もはや電車から降りる彼女に会うことも期待できないのではないでしょうか。
完全にアウトになってしまいました。
人すらいなくなってしまった駅で、主人公は肩を落としているようです。
彼の片想いは、今日もまた完全にファンタジーになってしまったのでした。
ファンタジーは幻想という意味ですが、なかなか現実に出会えないもどかしい恋を想像させます。
初恋の結末
僕一人だけ取り残されてく
初恋はなぜ実らない?
汗を拭(ぬぐ)って 肩で息して
ハートのペダルを明日(あす)も踏もう
出典: 平行線/作詞:秋元康 作曲:近藤圭一
誰もいない駅で、主人公は自分だけが取り残されていく感情を抱きます。
みんなそれぞれの場所へ急ぎ足で行ってしまう。
大好きな彼女さえも。
そんな彼の苦しい絶望感が伝わってきます。
彼は、初恋はなぜうまくいかないのかと嘆いています。
拭いても拭いても、落ちてくる汗。
力尽きるまで走り続けながらもなお、彼は明日も走ることを決心するのです。
彼女への想いがとても強いことがわかります。
彼の初恋にかける情熱は、若々しい魅力となって人を惹きつける歌詞になっているのではないでしょうか。
彼の恋心は自転車を踏むペダルとリンクしていて、踏めば踏むほど想いは強まるのです。
せつなくても
背中を押すもの
どうしてだろう?
こんな風が気持ちいい
今生きている
出典: 平行線/作詞:秋元康 作曲:近藤圭一
なかなか想いが成就しない主人公ですが、彼にも良いことが起きます。
自分に吹いてくる風が気持ちよく感じるのです。
一生懸命、全力を尽くすことで彼は今をリアルに感じることができることに気づきました。
これはとても大きな変化です。
それまでは不毛だった、毎朝の自転車漕ぎに絶望を感じていた主人公。
ふと、風が優しく自分を包んでくれていると気づくことができたのです。
どうしてだろう?と彼は疑問に思っています。
しかし、すでに彼の心は成長し体は風を気持ちいいと感じているのがわかります。
これも、初恋の彼女が教えてくれた素敵なプレゼントなのではないでしょうか。