闇の中で、それでも光を諦めきれなくて
マイクを握る身でありながら…音楽なんてクソ食らえだ
疑わしいがいつの間にか 音楽が力を持ったらしいんだ
溢れる思い上がりな価値観 吐きたくなる映画の涙
うんざりだ 埒が明かないな 挨拶が済んだら放っといてくれないか
人は皆 見るのをやめて 知るのを避けているようだ まるでギプノーザ
出典: チグリジア/作詞:弥之助(from AFRO PARKER) 作曲:Boy Genius(from AFRO PARKER)
彼が生きるヒプノシスマイクの世界は、武器による直接の武力が根絶された世界。
しかしその代わりの武器として、精神に直接影響を及ぼすヒプノシスマイクが発明されたのです。
私たちが生きる世界でも、音楽は人々の心を動かす大きな力を持っています。
ですが彼らの生きる世界では、音楽による力はよりさらに強大なものとなっているのでしょう。
そんな世界に生きる観音坂独歩ですが、彼にとっては芸術によって揺さぶられる感情ですら邪魔なもの。
ましてその感情を他者から押し付けられることなんて、彼にとっては嫌悪の対象でしかないのでしょう。
ギプノーザとは、ロシア語で「催眠」という意味です。
人々が音楽や映画で、みな揃って喜々として声高に感動する様子。
それをまるで集団催眠術でも掛けられているかのようだと、彼は冷めた目で見ているのでしょう。
「全米が泣いた」なんて煽り文句の映画なんて、白々しくて吐き気がしてしまう。
芸術で感動することを良しとする風潮を、彼はきっと全く理解できないのです。
そんな感情なんか理解すらしたくない、といった方がもしかしたら正しいのかもしれませんが。
それでも彼がマイクを握り戦うのは
君は目覚めない方が幸せか 俺は詩が書けない限り屍だ
呼吸すら 身体の上から下までが 表現に飢えたからしたまでさ
これはマイクを持つ意味になるかな だとしても知った気になりたくはないから
1度だけ「ありがとう」 でもさよなら どうせ今日も歌うしかないんだ
出典: チグリジア/作詞:弥之助(from AFRO PARKER) 作曲:Boy Genius(from AFRO PARKER)
いつか来る終わりを待ち侘びながら、それでもヒプノシスマイクを握る観音坂独歩。
そんな彼の心には全てに絶望しながらも、それでもまだどこか期待を捨てきれない部分も垣間見えますね。
本当に終わりを迎えたいのならば、今すぐ命を自分の手で絶ってしまえばいいだけの話。
ですが彼は、それをすることをしません。
また彼はどんなにネガティブでも、「死にたい」という言葉を口にすることはほとんどないのです。
麻天狼という仲間に出会ったからなのか。それとも単純に、自らの命を絶つ勇気がないからか。
本当の心は彼のみぞ知る、といったところでしょう。
そんな葛藤を抱えながら、彼は今日もラップバトルに挑み続けます。
屍のように生きていた自分に、これが唯一の与えられた才能だと、生きる意味だと信じて。
彼の魅力はそんな病んだ一面に有り!?
彼のネガティブな口癖から見える一面とは?
とどめ色の空模様も この迷路のような孤独も
俺のせい 俺のせいだと声が届く
まるで壊れそうなロボット 繰り返す独り言
俺のせい 俺のせい
出典: チグリジア/作詞:弥之助(from AFRO PARKER) 作曲:Boy Genius(from AFRO PARKER)
そんな悲観的でネガティブな観音坂独歩。
彼は何か悪いことが起きた時、全てを自分のせいにする悪い癖があります。
「俺のせい」はそんな彼の口癖でもありますね。
冷静に考えれば、偶然起きた不幸や天気の崩れなどが一個人の責任であるはずはありません。
仕事や友人関係の中でのミスは、もしかしたら彼の責任であることもあるのかもしれませんが…。
けれど日々の社畜生活の中で、彼はきっと大勢の人から様々な責任を押し付けられているのでしょう。
全て自分のせいにしておいて俺が謝れば、一旦は事をややこしく荒立てずに済む。
または誰かを責めるより、自分で全て責任を被る方が彼にとっては労力を使わないことなのかも。
行き過ぎた自己犠牲は思考停止にも繋がり、実は彼自身にとってはある意味楽な手段でもあるのです。
この口癖は彼が生きる中で身に着けた、悲しい回避方法の1つなのかもしれません。
ネガティブになりやすい人にとっては、共感できる部分も多いのではないでしょうか。
日々必死に働く…そんな等身大の姿が魅力?
日付がスライド 気づけば最期 心電図はフラット 人間は迷子
失礼の無いよう 失礼の無いよう生きても太陽は愛想笑い
殺伐な通勤のラッシュや ルーティンがフラッシュバック
罪か罰か睡眠が浅くなる この街と人の摩擦をマッシュアップ
出典: チグリジア/作詞:弥之助(from AFRO PARKER) 作曲:Boy Genius(from AFRO PARKER)
「俺のせい」という言葉を呪文のように唱え、自分の心を守りながら彼は今日も生きています。
朝は通勤ラッシュの満員電車に揺られ、会社では上司や取引先に詰められ。
思ってもない謝罪の言葉や愛想笑いを上手に使いながら、たくさんの人を相手にして。
終電で帰ればまだラッキー、もしかしたら土日も休みなんてものはないのかもしれません。
彼がラップバトルで荒々しい一面を見せるのは、こんなストレスが爆発するのも理由の1つでしょう。
ですがそんな彼のネガティブな性格や社畜姿に、共感を覚える人もきっと多いはず。
彼を支持するファンが多いのは、それがもしかしたら大きな理由なのかもしれませんね。