最初から印象的な歌詞で始まりますね。
これはおそらく朝起きるためにしようしている「アラーム」のことを表しています。
時間を制限されている現状に苛立ちを感じているのでしょう。
今の不安定な心情を貨物列車に例えています。
2回目のAメロでは直接的な表現に
いつの間に右に左、西に東、瞬く間に一人
当たり障りの無い言葉選びに飽きた日々
一丁前に笑い怒り叫び踊り泣き合いたいというのに
壁の耳や障子の目を気にして生きてキリがないのに
出典: 拝啓/作曲:小池貞利 作曲:小池貞利
前半は1回目のAメロと同じで「無難な生きざまに飽き飽きした」というくだり。
その後に、いままでの婉曲的な表現と変わり、直接的に気持ちが発せられます。
本当は感情を開放したいのに、周りの見聞きされることを恐れて抑え込んでいる。
「普段は周りを気にして過ぎているけど、心の底では自由に表現したいんだ」という心の声が垣間見えますね。
後半部分での感情的なシャウトが歌詞に深みを増しています。
生々しい表現はまさに最初に述べた「狂気じみた」印象を掻き立てていますね。
きっと、大人になる過程で「波風立てないように無難にやりきる」ことを覚え、自分を抑え込んでしまって苦しいのではないでしょうか。
出る杭は打たれると言われる日本社会への問題提起にも感じます。
アラームを拒んだ 起床が無くなった
あの有権者は数年間目覚めぬまま
出典: 拝啓/作曲:小池貞利 作曲:小池貞利
先ほど恨んだ「アラーム」を拒み、決められた時間で起床することを止めました。
そして、おそらく日常で「義務」となっていた起床を放棄する事に続き、国民の「権利」である選挙権を放棄しています。
ここは非常に解釈が難しいのですが、「義務」や「権利」などに縛られた日常から逃避する意味合いなのではないでしょうか。
忘れ去られた過去へ焦点を向ける
憂いが溢れだすサビ
掃いて捨ててしまう程の出会いで
褪せた色や埋もれた都市はいつかまた出会えるだろうか
いつかまた眺められるのだろうか
出典: 拝啓/作曲:小池貞利 作曲:小池貞利
繰り返す「出会い」や「別れ」、変わっていく「景色」、去ってしまった「場所」。
忘れ去られてしまった過去の衝撃を思い起こしています。
そして、最後のフレーズにも注目してみましょう。
なんだか寂しい気持ちがこみあげていますね。
ふと、過去に出会った人の名前が思い出せなくなる瞬間はありませんか?
筆者はこの歌詞から「名前を思い出せない人との過去の記憶」を思い起こしました。
小池貞利は「忘れる」ということを肯定的に受け入れこの曲を制作しています。
ただ、そこに感じる「寂しさ」を歌という形に残しているんですね。
2番のAメロは短くシンプルなフレーズ
しがない冒険者の浅ましいRPG
あぁすぐに救いを掬い美しい在るべき生活のもとへ
出典: 拝啓/作曲:小池貞利 作曲:小池貞利
いままでの人生をゲームのRPGに例えていますね。
無難な生活をプレイしてきた今までではなく、「あるべき姿」へ向かうことを望みます。
そして、サビに入る直前に例の「uh~」という美しいコーラスが一瞬入り、サビを際立てます。
言葉が強く刺さる最後の大サビ
最後の大サビでは叫ぶような歌唱も相まって、メッセージが鋭く突き刺さります。
掃いて捨ててしまうほどの出会いで
褪せた色や埋もれた都市はいつかまた出会えるだろうか
いつかまた眺められるのだろうか
拝啓 今まで出会えた人達へ
刹那的な生き方、眩しさなど求めていないから
浅くていいから息をし続けてくれないか
出典: 拝啓/作曲:小池貞利 作曲:小池貞利
1番と同じく、過去の出会いや場所を振り返り、寂しい想いに浸ります。
ですが今回は想いに浸るだけで終わりません。
過去に出会った数々の人たちへメッセージを投げかけます。
「無難な生き様であっても、浅はかであってもいい」と肯定します。
そして最後の行でこぼれた言葉は「生きろ」という力強いメッセージなのだと思います。
目的を見失い、退屈を覚え、自分を抑制して…それでもどうか「生きていてくれ」と願っているのではないでしょうか。