アルバム『HEART』のラストに収録された1曲
大ヒットアニメに向けて作成された楽曲
1998年にリリースされた、L'Arc〜en〜Cielの5thアルバム『HEART』。
このアルバムは、活動休止を経て再始動したL'Arc〜en〜Cielが放つ渾身の1枚でした。
そんな大切なアルバムのラストを飾る1曲。
それが、今回ご紹介する『あなた』です。
この曲は、ベースのtetsuyaさん(当時はtetsuと名乗っていました)が作曲されています。
ご本人のコメントで、この曲は、とある大ヒットアニメ映画の1シーンに宛てて作曲したと語っていました。
そのコメントがこちらです。
作曲者であるtetsuyaは、この詞の"あなた"とは自分にとってアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のヒロインの一人、惣流・アスカ・ラングレーのことだとコメントしており、曲も旧劇場版エヴァンゲリオンを見た直後に作られており、「アスカへ向けて『心を開いてくれ』という思いで作ったもの」と述べている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/HEART_(L'Arc〜en〜Cielのアルバム)
旧劇場版エヴァンゲリオンのラストに向かうアスカのシーンにおいて、この曲が流れたとしたら…
盛り上がることは間違いないと思えるほどに、そのシーンにハマる楽曲だと思います。
是非、アニメと合わせてお聴きください!
『あなた』の世界観
作詞したhydeは亡くなった祖母を想って作詞したと述べている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/HEART_(L'Arc〜en〜Cielのアルバム)
hydeさんにとっての『あなた』は、亡き祖母のことだったのでしょう。
作詞も作曲も、自分にとって大切な『あなた』想って作られているからこそ、響くものがある。
作り手の心のこもった楽曲には魂が宿り、人々の心にスッと届いてくるということです。
今や、ライブのラストを飾る定番曲となっている『あなた』。
ファンとともに大合唱しながら迎えるという、まさにグランドフィナーレにふさわしい楽曲です。
この曲は、リリースされてから時が経ち、しかもシングルカットもされていないアルバム曲。
それなのに、ファンの間でも根強い人気を誇っている曲になります。
そんな名曲である『あなた』の世界にご案内しましょう。
後半に向けて盛り上げる絶妙な展開
盛り上げるための仕掛けが満載
『あなた』は、聴くものの涙腺を刺激するほど壮大なバラードになっています。
その展開は実に秀逸で、ラストに向けてドンドンドンドン盛り上がっていくのです。
ストリングスの絡み方、コーラスワーク、ボーカルのファルセット。
こういう音色的な表現力やアレンジも、さすがL'Arc〜en〜Cielといったところです。
これらのどれをとっても聴き手の心を揺さぶり、涙腺を緩めてきます。
そんな音色的な表現以外にも、曲の展開にも仕掛けが!
それが、『Aメロ→Aメロ→Bメロ→サビ→Cメロ→ギターソロ→Bメロ→サビ』という曲展開です。
サビへの導入を長くすることで否応無しに期待を煽り、サビの爆発力を高めている。
そして、ギターソロからBメロへと助走をつけ、サビからエンディングに掛けて爆発させています。
この展開と上記で述べた音色的な仕掛けの相乗効果で、聴き手の気持ちを盛り上げるのです。
こういう、一見気にならないような仕掛けが大きく作用していることも名曲と呼ばれる所以といえます。
目に見えるものだけが全てではない
過去を噛み締めながら思い返す
眠れなくて窓の月を見上げた・・・
思えばあの日から
空へ続く階段をひとつずつ歩いてきたんだね
出典: あなた/作詞:hyde 作曲:tetsu
冒頭に出てくる、『あなた』との出逢いから今までを思い返している歌詞。
『あなた』とは亡き祖母のことだということは前述の通りとなります。
つまり、hydeさんが生まれてから祖母が亡くなるまで、ということを意味しているのです。
続いている階段の行き着く先にある「空」とは何を指しているのでしょうか?
階段を登って行き着く先が「空」であることと、亡くなったということを合わせて考えると答えが出ます。
「空」は死後の世界を指していて、「階段」は人生を示している。
つまり、人は生まれた時から死に向かって毎日を過ごしているという哲学的な表現になるわけです。
hydeさんが生まれ、祖母は階段の先にある「空」へと到達してしまった。
亡くなった今となっては、そういうことだったんだと思えるようになった心境変化が見て取れます。