変幻自在の声を操る「SIRUP」とは?
2017年に表立った活動を始めたKYOtaroことSIRUP。
そのハイセンスで洗練された独特のサウンドは、大勢の耳の早い音楽ファンの注目を集めていました。
最近ではCM曲などにも抜擢され、ますます注目度は高まっているのではないでしょうか。
変幻自在の声を持つシンガーSIRUP(シラップ)が2018年夏に話題作「SIRUP EP2」を発表しました。
ルーツであるヴィンテージソウルを軸にクロスオーバーするサウンド。
SINGとRAPを組み合わせた造語であるSIRUPという名が表す通りの独自のスタイル。
他に類を見ないスタイリッシュなサウンドはどのように生みだされたのでしょう?
洗練された音楽性のルーツは?
前作「SIRUP EP」では小袋成彬率いるTokyo Recordinsの大胆なアレンジが話題になりました。
以前はKYOtaro名義でハイクオリティな作品をリリースしていたSIRUP。
2018年夏にAWAで公開された「SIRUPlaylist」を見ると彼の興味深い音楽遍歴が分かります。
宇多田ヒカル、Stevie Wonderから始まりD'angelo、James Blakeを通過しSIRUPの「Do Well」に辿り着く。
ソウル、R&B、ポストロック、ヒップホップなどを雑多に吸収し現在のサウンドに辿り着いたのです。
彼がこれまで影響を受けてきた音楽。
それは実に多彩なジャンルからピックアップされている、ということが分かりますね。
たくさんの様々な素晴らしい先人のアーティストたちから、実に幅広いエッセンスを受け継いでいるSIRUP。
その幅の広さもまた、彼の音楽の独自性に確実に一役買っていることでしょう。
SIRUP(シラップ)という名前はもうひとつ”シロップ”とも掛けられています。
”シロップ”は様々な飲み物と化学反応を起こすことで味わいを増すことが可能です。
様々な音楽性を取り入れることでどんどん深化している彼の音楽性にも、ぴったりの名前なのですね。
どんなサウンドとも融合できる音楽性は、親交の深い向井太一と共に今後更なるブレイクが期待されています。
SIRUP活動のきっかけは環ROY
そんなSIRUPは、どのようにして現在の独創的な音楽性を確立させたのか?
多くの音楽フリークが、その点に関しては気になるところなのではないでしょうか。
現在のスタイルが確立された一番のきっかけとされるのが上の動画となっています。
環ROYが小袋成彬と組んだGAPとのコラボムービー「ゆめのあと」。
この動画に、SIRUPは実は強い影響を受けたんだそうです。
ヒップホップとポストロック、フューチャービートの融合したスタイル。
最先端かつ他に類を見ない現在のSIRUPサウンドのルーツはここにあったのですね。
そんなSIRUPが、今回満を持してリリースした作品「SIRUP EP2」。
今回は「SIRUP EP2」に先行してリリースされた「LOOP」の魅力に迫ってみようと思います。
メロウかつGROOVYな心地よいサウンドは、自宅ののんびり過ごすときのBGMにもピッタリですよ!
デジタルチャートを独走した「LOOP」の魅力とは?
マザーファッ子制作のオシャレすぎるMVをチェック
「LOOP」は2018年5月にデジタルダウンロード形式でリリースされました。
しかしリリース後、たちまちApple MusicのR&B&Soul部門のチャートを独走。
その「LOOP」の魅力とは一体なんなのでしょう?
秘密を探る鍵を探すべく、まずは実際に楽曲のMVを見てみましょう。
映像を監修したのは鬼才マザーファッ子さん。
Kick a Show、電波少女、あっこゴリラのMVで独自の世界観を作り出したVJ・映像クリエイターです。
冒頭ブラックコーヒーのクローズアップに映し出される”SIRUP”のフォント。
流れ出すエレピとサックスの心地よいサウンド。
コーヒーに近づいたカメラはそのままコインランドリーにスムーズに移行します。
MVというよりフィルムアートのような始まりです。
メロウなチル感を感じさせる、フィルムちっくな映像のノスタルジックな質感。
これもまた、非常にムーディーな雰囲気を醸し出しているともいえるでしょう。
MVは幻想的な映像でカフェテリア、コインランドリー、海辺などを次々と映し出していきます。
ミステリアスな女性は何を象徴する?
MVはまるでSIRUPが見る白昼夢のように構成されています。
そしてもっとも気になるのは微かに存在を感じられるミステリアスな女性です。
彼女が映し出されるときは顔が絶妙なトリックで隠されます。
ピンボケ、ヴィジュアルエフェクト、サングラスで隠される女性の顔。
全身が映るカットでは線画だけのアニメーションで表現される女性はまるで幻のようです。
映像を見る限り、本物の彼女の姿はそこにはありません。
ですが本物の彼女が、あたかもついさっきまでそこにいたかのような。
残り香のような存在感を以て、この映像には映り込んでいる、と考えてよいでしょう。
筆者が思い出したのがデビッド・リンチ監督の映画「マルホランドドライブ」。
映画のオチは言えませんので割愛しますが果たして女性の正体は何を意味するのでしょう。
歌詞を紐解くことで見えてくるかもしれませんね。
「LOOP」の歌詞を紐解いてみよう
歌詞の解説をする前にタイトルの意味について考えてみましょう。
「LOOP(ループ)」は一般的には円形や繰り返しのことを指しますね。
また同じフレーズを繰り返し使用するダンスミュージックは「LOOP」がサウンドの軸です。
SIRUPはこのタイトルにどのようなテーマを掛けたのでしょう。
MVでは円形のコーヒーカップやコインランドリーのクローズアップが協調されます。
それはまるで、「LOOP」というテーマを暗に示しているような演出ですね。
歌詞を解釈する上でMVの映像トリックは重要な意味を持つのかもしれません。
そのことを前提に歌詞の詳細を紐解いていきましょう。