「independent」で歌ったことは
2002年7月24日発表、浜崎あゆみの通算27作目のシングル「H」。
このシングルは収録された3曲がA面扱いの異色作です。
このシングル集に収録された「independent」の歌詞を徹底解説しましょう。
浜崎あゆみがラウドロック調のサウンドをバックに世界との闘い方を描き抜いた名曲です。
ひとりで生きてゆくのは大変な世界が存在します。
特に傷付きやすい人にとって優しい世界とはいえません。
そんな世界の中にあってふたりで生き抜いてゆこうと覚悟を決めるふたりの男女を主人公に据えました。
常に若いリスナーに向けて歌詞を書いてきた浜崎あゆみからの真剣なメッセージを受け止められるはず。
タイトルの「independent」とはこの曲の歌詞ではどのように働いているでしょうか。
この世界で独立しながら地歩を固めて生きてゆくふたりの姿。
今、悩みを抱えている若いリスナーにとっては頼もしく響く歌詞になっています。
この曲の歌詞を解説しながら世界との対峙の仕方を学んでいきましょう。
それでは実際の歌詞をご覧ください。
ふたりでシェアしながら
ドラマに昇華して共感を得る
何て事ないささいな出来事に
また僕は 怯えてる
それを隠そうとしては
強がるクセ発揮する
君はとなりに寄り添い
ワケのわからぬ事を話してる
不器用にでも何とか
励まそうとしてる
出典: independent/作詞:ayumi hamasaki 作曲:CREA + D・A・I
歌い出しの歌詞になります。
登場人物は語り手の僕と寄り添う君です。
浜崎あゆみはこのふたりと世界をめぐる出来事をドラマに昇華しています。
直截的なメッセージというよりもドラマの中で意味を伝えたいという彼女の思いが滲むのです。
僕も君も世界の荒波の中で戸惑い傷付きながら生きています。
何か大きな悲劇が僕を襲った訳ではありません。
それでも僕は生きているだけで苦痛を感じてしまうタイプの青少年です。
若い歳頃の人は感受性が豊かすぎるために様々な形でメンタルのバランスを崩しがちでしょう。
世界には独特の厳しさがあります。
あまり人に優しいようにはできていません。
この世界を生きてゆくにはタフな心が必要なのでしょう。
しかし若いうちにはこうしたタフさを身に付けるのは非常に難しいことです。
そのために人は成長するのでしょう。
また、自分の他に誰か守るべき人がいないと強くはなれません。
その点で僕には君がいます。
自分の弱さまでもシェアしてくれる存在がいるのでこの先、責任感とともに強くなれるでしょう。
頼りのないふたりだけれど
僕が弱さを隠して強がっている姿。
それを励ます君の姿を描いています。
若い頃は難しい事柄や難局にぶち当たって落ち込むことも多いでしょう。
学園や職場などで若い神経には辛いことがたくさん待ち受けています。
僕と君の年齢層は明示されていません。
学生なのか社会人なのかの判定は難しいです。
浜崎あゆみは多くのリスナーのために歌詞を書いています。
そのために語り手の立場を限定することはしたくなかったのでしょう。
どちらにしてもこのふたりが若くてナイーブなカップルであることは確かなはずです。
僕も君も固有の頼りなさを感じさせます。
若いというそれだけで人生を任せ合うにはどこか頼りないと思わせるのは仕方のないことでしょう。
しかしこのふたりはきちんとお互いを気遣い合って生きてゆくだけの優しさがあるのです。
優しさとはそれだけ感受性が繊細で傷付きやすいという面と表裏一体です。
絶妙なバランスを取りながらこのふたりはこの先の人生を懸命に生きようとしています。
微笑みを浮かべて
弱さを補いながら生きよう
きっと僕らこうして
やってくんだろう
ぐっと顔上げて少し笑って
ちょっと空とか仰いだりして
走り疲れて歩いたりとかして
そんな感じで 準備はいいかい?
出典: independent/作詞:ayumi hamasaki 作曲:CREA + D・A・I
若いふたりはこの先の人生もともにできると信じ切っています。
若い恋愛が長続きする可能性は少ないのですがそれでも一緒にやっていきたいと願うのです。
お互いの弱い部分を補いながら生きてゆける理想的なカップルであることは確かでしょう。
この先にどんな未来が待ち受けているのかまだ分からない状況です。
それでも何となくこのままやってゆくしかないだろうと決意を固めます。
大仰な決め事はしていません。
決意とはいってもまだ若さ特有の何とかなるだろうという漠然とした思いを基軸にしているのです。
こうした心持ちが本当に永遠の愛を勝ちうることもあるでしょう。
ふたりの未来には不確定要素があまりに多すぎるので断定できるものは何もないです。
9.11同時多発テロ事件の影
このふたりはさり気なく生きることに躍起になっているという矛盾した側面がうかがえます。
この曲が発表された2002年は熱意をギラつかせて生きることをかっこいいとは思っていませんでした。
2001年9月11日のアメリカ合衆国同時多発テロ事件が全世界を震撼させます。
この先の未来が分からなくなってしまった混沌とした世界をふたりは生きていたのです。
傷付けられることの多い世界が露わになりました。
多くの人が無残で理不尽な殺傷に心を塞がれる思いで生きています。
浜崎あゆみがこうしたトレンドに影響されなかったとは考えにくいです。
一方で彼女はこの曲をラウドロックとして提出しました。
不毛で絶望しかない時代だからこそ混沌をかき分けて生きてゆきたい想いを投影します。
とにかくふたりは自分たちの疲労もペースのうちにするのです。
無理のない生き方を選んでゆくその自然さによって局面を変えてゆきたいと願います。
微笑みを浮かべながら生きてゆくことの大変さはこの時代固有のものかもしれません。
僕は君に一緒に生きてゆく心構えを尋ねます。
君は訊かれるまでもなく一緒にやってゆく準備ができているのです。