初のミニアルバム『hair salon』収録曲「会いに行かなくちゃ」
SHE IS SUMMERの初ミニアルバム『hair salon』が2018年8月1日に発売されました。
前作のフルアルバム『WATER』以来、約9か月ぶりのアルバムリリースとなります。
ボーカル・MICOのソロプロジェクトであるSHE IS SUMMER。
キュートでニュアンスにあふれるボーカルは、聴く者の耳を捉えて離しません。
『hair salon』は、前作で提示した彼女の世界観を更に展開させた意欲作です。
今回はこのミニアルバム収録曲「会いに行かなくちゃ」をピンポイントで詳しくご紹介します。
君に抱く気持ち。その向こうにあるものは…歌詞を紐解く
クリスタルガラスの粒のように繊細な言葉たち
「会いに行かなくちゃ」をはじめ、『hair salon』収録曲のすべてがMICO自身の作詞です。
彼女の綴る歌詞は一人称が「僕」のものが多いのですが、この曲もやはり男性目線。
小粒なクリスタルガラスのガーランドが風に揺れるかのように、心理・情景描写が繊細に煌めいています。
そんな歌詞を、さっそく紐解いていきましょう。
都会の閉塞感と君への想い
今通り過ぎた彼は どこへ向かって誰に会う?
渋谷駅前のビル 今日も増える
あぁ 気づいたら全て 気づいたら埋まっちゃいそうだ
潰れる前にほら君に 会いに行かなくちゃね
そのために 僕はここで働いてる 会いに行かなくちゃね
君は今どんな服を選んでるのかな?
出典: 会いに行かなくちゃ/作詞:MICO 作曲:高橋海(LUCKY TAPES)
ここ数年に渡って工事中の渋谷駅とその周辺。
様子をご存じの方は「あ~、うんうん」と深く頷かれたのではないでしょうか。
JRの乗り入れ路線が増えたり地下鉄が移動したりで、駅構内はダンジョン状態になっています。
再開発で新しいビルがばんばん建ち、高校時代を渋谷で過ごした筆者も今やお手上げ状態。
スマホの地図無しでは歩けません。つい先日も迷子になりかけました。
そんな状態を僅か1行で表現しているすごさ!
さりげない冒頭の1行もあって、駅前の雑踏まで目に浮かぶようです。
埋まっちゃいそうなのは街だけじゃなく、「僕」の心も同じみたい。
どんどん閉塞感が増していくこの街で働くのは「君」とのデート代のためでもあるようです。
季節も人もうつろうものだけれど…
地球が暑くなっていくように 誰かが旅に出かけたように
僕を作るかたまりが 動いていくのがわかる
このままじゃ なくなっちゃうかも 君を今好きだってことも
出典: 会いに行かなくちゃ/作詞:MICO 作曲:高橋海(LUCKY TAPES)
折しも今年(2018年)の夏は、6月からとんでもない酷暑でした。
地球温暖化が叫ばれて久しいですが、本当にこのまま北半球全部が溶けるのではと思うほど。
そんな壮大なたとえ話とともに、ひとりの人間が旅に出かけることが並列で語られています。
規模が違っても、物事が「動いていく」こと自体は同じという観点です。
その例にもれず「僕を作るかたまり」も動いていると言います。
「僕を作るかたまり」というのは、感情・理性などを総合した「僕そのものの根源」と言ってよいのでしょうか。
しかし、それが動いた先では「君」への想いもなくなっちゃうかもしれないなんて!
空から夕立の匂い 明日は晴れるかな?
今はまだ 僕はここで君を見てる 明日は晴れるかな?
君はどう? どこで誰を思ってるのかな
出典: 会いに行かなくちゃ/作詞:MICO 作曲:高橋海(LUCKY TAPES)
夕立のもたらすあの埃くさいような匂いは、都会の真ん中でもはっきりと感じられます。
天気と同じく土砂降りの雨に濡れる「僕を作るかたまり」は、今はまだ大きく動いていません。
まだ「君」を見つめられるポジションにいます。この雨も明日は晴れてくれるのでしょうか。
「君」の心情を想像する「僕」ですが、自分のことを思ってくれているとは期待していない様子…。
真夏の天気雨が降る街は「僕」の心を映す
家路を急ぐよ 空から光と雨が降っている
駆け抜ける道は光が溢れてる
家路を急ぐよ 空から光と雨が降っている
眩しい街の中
出典: 会いに行かなくちゃ/作詞:MICO 作曲:高橋海(LUCKY TAPES)