1986年の年間チャート1位曲
わずか4カ月余りでの快挙
石井明美の「CHA-CHA-CHA」は、1986年にリリースされた彼女のデビューシングル。
一言で説明すれば、ダンサブルなポップスです。
この年の国内の音楽マーケットは、興味深い出来事がいくつもありました。
1年間(全52週)の7割に迫る36週で、アイドルグループのおニャン子クラブに関係するシングルが1位を独占。
アーティスト別の年間売り上げは、中森明菜がトップに輝きます。
一方、2位以下に名を連ねたのはレベッカ、渡辺美里、安全地帯、KUWATA BANDというロック勢。
これは、日本のロックが歌謡曲に並ぶ位置につけたことを意味しています。
そうした中、単独曲で年間シングルチャート1位に輝いたのが「CHA-CHA-CHA」。
8月のリリースから、わずか4カ月余りで達成した快挙でした。
東京・六本木のクラブ歌手を経てデビューした石井明美。
アイドルでもロックでもない新人歌手の曲がなぜ、これほどまでの大ヒットを記録したのでしょうか。
ドラマ「男女7人夏物語」の主題歌
「トレンディー」の先駆け
石井明美の「CHA-CHA-CHA」はリリース前、あるテレビドラマの主題歌に起用されます。
1986年7月に放送が始まった「男女7人夏物語」。
お笑いタレントの明石家さんまが主演に抜擢された、伝説の恋愛ドラマです。
ストーリーは割愛しますが、「元祖トレンディードラマ」としても語り継がれるこの作品。
都会のおしゃれなマンションに住み、アフターファイブはビアホールやレストランでにぎやかに。
物語の背景には、そんな優雅なライフスタイルを謳歌する独身男女が描かれていました。
のちにバブルと呼ばれる空前の景気拡大が始まったのは、この年の12月のこと。
ドラマに投影されていた、時代の気分を表した歌が「CHA-CHA-CHA」だったのです。
華やかな歌詞
きらびやかな気分
“Baby, get on my CADILLAC”
“Oh no, I wanna dance my CHA,CHA”
街で噂の 辛くちセクシー・ギャル
甘い誘い はねつけるスパイシー・ギャル
花の金曜日(ウィークエンド)
匂いも ファンキー・ナイト
格好だけなら また今度
Good, good night
出典: CHA-CHA-CHA/作詞:G.BOIDO、日本語詞:今野雄二 作曲:B.REITANO,B.ROSELLINI,F.BALDONI,F.REITANO
バブルという時代の気分を象徴する曲だけに、その歌詞にも華やかさが感じられます。
「セクシー・ギャル」「スパイシー・ギャル」が繰り出すのは、「花の金曜日」「ファンキー・ナイト」。
自信とプライドに満ちた女性像も、享楽的な言葉の数々も、バブル時代を象徴しているかのようです。
半面、歌詞そのものに具体的なストーリーやメッセージは見当たりません。
ただひたすら、きらびやかなイメージだけが記憶に残る歌詞です。
耳に残る「CHA,CHA,CHA」
I wanna dance,
do you like CHA,CHA,CHA
Romancin`気分 CHA,CHA
I wanna dance,
do you like CHA,CHA,CHA
A virgin気分 CHA,CHA
出典: CHA-CHA-CHA/作詞:G.BOIDO、日本語詞:今野雄二 作曲:B.REITANO,B.ROSELLINI,F.BALDONI,F.REITANO
サビの歌詞は、「踊りたいわ」というフレーズの繰り返し。
「Romancin`気分」「Virgin気分」と、フィーリングを強調する歌詞が織り込まれています。
耳に残るのは、シンプルでキャッチーな「CHA,CHA,CHA」というフレーズ。
「チャチャチャ」は、キューバ発祥のダンス、リズムの1つです。
「チャチャチャ」のリズムを応用した「CHA-CHA-CHA」は、まさにラテン風のディスコミュージック。
「CHA-CHA-CHA」という曲は、ヨーロッパで誕生した最新のサウンドを日本に伝える役割を果たしました。
この曲が日本に上陸したのは、テレビドラマの主題歌となる以前のこと。
石井明美のカバーシングルと連動し、洋楽チャートで爆発的なヒットを記録しました。