トルエンの香り漂う地下室で
いにしえのドロドロした、ヤバさを引き継いだバンド
風変りなバンド名「八十八ヶ所巡礼」メンバーが四国出身であることと少し関係があるのでしょうか?
僕がこのバンドを初めて知ったのは、約5年半くらい前。この「仏滅トリシュナー」のMVを見たのがきっかけでした。
コロコロ目まぐるしく場面が変わり、しかも意外性満載の展開。登場して来るグロテスクなオブジェクトの数々、ぶっ飛びました!
しかもメンバーは3ピース、入れ墨の目立つ、ちょっとイカレぽんちなオカマ、少し長髪のサングラスの色男、工事現場に居そうな短髪の上半身裸のあんちゃん、全く個性がバラバラの3人。
最初に感じたインプレッションは昔々体験した、1980年前後のムーブメント「東京ロッカーズ」の雰囲気に近いものがあるな、でした。
地引雄一著「東京ロッカーズと80’sインディーズシーン」
シンナーを濫用している若いオーディエンスとか観に来ている、ちょっと危険な空間の音楽です。
久しぶりにカラーの濃い、ちょっとヤバい、ドロドロしているけれどシビれるバンドが出て来たなあ...と思ったわけです。
「魂のリレー」が続いている?
しかし、それ以上にノックアウトされてしまったのが、彼らのアクが強いけれど、骨太でしっかりとしたそのサウンド。
決して一本調子じゃなく、プログレッシブ・ロックにも通ずる曲構成、そして、いにしえのサイケデリック・ロックが持っている中毒性の強い、一度はまったら抜け出せなくなるようなそのテイスト。
しかも音源を聴き進んでる内に、彼らの馬鹿テクぶりに完全にやられてしまいました。
聴くところによると、実はメンバー3人ともスタジオミュージシャンを目指していた、とのこと。どおりで...。
旧来のロックのフォーマットをしっかりと踏まえながら、今風の味付けがなされている、魂のリレーはしっかりと続いているのだな、と。
しかもそのサウンドはしっかりとしたテクニックに裏打ちされている。とても胸を熱くするバンドです。
「仏滅トリシュナー」歌詞の意味
タイトルの「トリシュナー」って…
さて、この八十八ヶ所巡礼の「仏滅トリシュナー」は2010年8月、インディーズレーベルである「Psychedelic Progrssive R」からリリースされた1stアルバム「八十八」の3曲目に収録されています。
ちなみに彼らは今でも作品発表の場をインディーズに置いています。
やっぱりサウンドは非常に中毒性が高く、この「仏滅トリシュナー」もくせになりそうな、依存症的フレーバーを醸し出しています。
ところでタイトルの「トリシュナー」ですが、
ヴェーダ語、「渇き、欲望、願望」を意味する言葉である。仏教においては中核的概念のひとつであり、身体・精神的な「渇き、欲望、憧れ、欲求」を指している。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/タンハ
何やら難しいですね、要は仏教用語で「欲して求める」こと。歌詞にも「渇愛(かつあい)」という言葉が見られます。
では何故愛に飢えているのか、しかも仏滅に。その歌詞の意味を紐解いていきましょう。そうそう、コード譜も一緒に...あれ?ええっ!?
愛への渇望の果てに、頼るものは…
F♯m F♯m
よく嗤う君の妄想気味で凶暴な意味を知った
F♯m F♯m
渦巻状の無限ミネラルを押し付けることって
F♯m F♯m
取っ払え取っ払えかっ浚ううちに解る
F♯m F♯m
呆気なく容赦なく酔っ払い主義を叩き込む此岸
出典: 仏滅トリシュナー 作詞:マーガレット廣井 作曲:マーガレット廣井
G.のkatzuyaさんの宇宙チックなピコピコサウンドに、無機質でパワフルなリズムセクションがからみ、曲はスタートします。
「君」はちょっとアルコール依存症気味なのでしょうか、妄想気味で凶暴、そしてよく嗤(わら)う。
「批岸(しがん)」難しい言葉ですね。意味は俗世、娑婆(しゃば)のこと、後から出てくる「彼岸」と対を為す言葉です。仏教的ですね。