まずは聞いてみよう
1977年に発売されたシングル、『案山子』はさだまさしの代表曲とも言われています。
後にこの曲にインスパイアされて作られたドラマが放映されるなど、曲の世界観で一つのドラマが作れるほどの存在感のある曲です。
都会へと出ていったお前へ
この曲は都会へと出ていった「お前」を故郷で案じる「誰か」の言葉で綴られる歌です。
元気でいるか 街には慣れたか 友達出来たか
寂しかないか お金はあるか 今度いつ帰る
出典: https://www.uta-net.com/song/1247/
歌詞に歌われるのは「お前」が故郷の街を離れて初めての冬の終わり。
そろそろ雪が消え、春になろうとする季節です。
街を離れてから一度も帰省も、手紙もなかったのでしょう。
心配事は尽きません。
元気なのか、友達はできたのか。
そして今度いつ帰ってくるのか、聞きたいことはたくさんあります。
連絡をすることすら難しい時代
手紙が無理なら電話でもいい 「金頼む」の一言でもいい
お前の笑顔を待ちわびる おふくろに聴かせてやってくれ
出典: https://www.uta-net.com/song/1247/
今と違って携帯電話もSNSもない時代、電話代も距離が離れるほど高くなります。
連絡をすることが今よりも難しい時代だからこそ、お金の無心ですらありがたく感じてしまうほど連絡が欲しいのです。
細かに描写される故郷の景色
城跡から見下せば 蒼く細い河
橋のたもとに造り酒屋の レンガ煙突
出典: https://www.uta-net.com/song/1247/
歌詞の中では「お前」宛ての手紙のような歌詞で歌われています。
その中でも故郷の街の景色が細かく描写される部分と、「お前」を案じる部分の2部で構成されています。
景色の描写は季節が冬であることもあるのでしょうが、とても寒々としています。
おふくろがどんな世界でお前を待っているのか、おふくろがどんな寂しい想いをしているのかを伝えるために敢えて寒々と歌われているようにも感じます。
一番言いたいことは「今度いつ帰る」
寂しかないか お金はあるか 今度いつ帰る
出典: https://www.uta-net.com/song/1247/
繰り返し歌われるこの歌詞。
冒頭では「元気でいるか」「街には慣れたか」など「お前」を案じる言葉と共に歌われていますが、曲が終盤にかかる頃には「お前」を案じる言葉は抜け落ちて連絡を催促する言葉ばかりが並びます。
あれ、誰のために書かれた手紙なんだろう。
寂しくないか、元気かい?と始まった手紙は、おふくろの寂しそうな様子と連絡が欲しいという言葉で締めくくられています。
そう、この手紙はおふくろを案じた「誰か」によって書かれた手紙なのです。