もちろん、「お前」のことを心配していないわけではありません。
お前も都会の雪景色の中で 丁度あの案山子の様に
寂しい想いをしてはいないか 体をこわしてはいないか
出典: https://www.uta-net.com/song/1247/
寂しそうに一人佇む畑の案山子の姿に、都会で一人佇む「お前」の姿を重ねるほど、「誰か」は「お前」のことを案じています。
連絡がないのは元気で、田舎のことも忘れるほど楽しんでいるからだ、とは思っていません。
孤独に耐え、故郷を懐かしく思うのになかなか帰ってこられない「お前」を案じています。
『案山子』は寂し気な背中が「お前」を彷彿とさせる存在でした。
では、この歌の「語り部」は一体誰なのでしょうか。
都会で一人暮らしをする弟(妹)を案じる兄からのメッセージである、とさだ自身が語っています。
地元に残った兄からの手紙、と考えるとこの雪に埋もれた『案山子』の姿は、都会で奮闘する兄弟だけでなく、田舎に取り残された兄自身のようにも見えませんか?
母は遠く離れた兄弟を案じ、日がな連絡を待っている。
対して自分は何かを成し遂げたくてもこの田舎からは離れられない。
この場所から動けない『案山子』の姿は、田舎から出ることができない兄の姿に重なるようにも感じます。
さだ自身はそこまでは明言していませんが、残された者の孤独も共に歌われた歌のように感じたのは筆者だけではないかと思います。
さだの幼少期の思い出も組み込まれている
元々はお金持ちのお坊ちゃまだったさだ少年。
3歳からバイオリンを習うも、父の事業の失敗で長屋住まいの人生へと一転しました。
しかしなんとか才能を伸ばしてやりたいと望む母の努力で、貧しいながらもバイオリンを習い続けることができました。
そんな想いを背負って中学一年生から単身上京させてもらうも、親の仕送りだけが頼りの生活に心細さを感じたようです。
そんなさだ少年の思い出が、この曲の歌詞にも影響を与えたようです。
「奇跡の人」はさだまさし作詞作曲
2017年にリリースされた関ジャニ∞のヒットソング、『奇跡の人』。
ドラマ「ウチの夫は仕事ができない」の主題歌としても有名ですよね。
この曲も実はさだまさしの作詞作曲でした。
1979年に発売された自身のヒット曲「関白宣言」の現代版とも言えるこの曲は、関ジャニ∞のメンバーの意見をもとに作られた歌詞だそうです。
内容の過激さから非難を受けるのも本家「関白宣言」と同様。
だけどこの歌にもさだまさしや関ジャニメンバーの愛が溢れていると思います。
等身大のラブソング、ちょっと口は悪いけれどむき出しの本音と、相手に対するダメ出しのようで自分自身へも忠告しているような歌詞が、「さすがさだまさし」という仕上がりになっています。
小説家 さだまさし
さだまさしは1973年に高校時代の友人とフォークデュオ『グレープ』としてデビューします。
その後ソロに転向してからの活躍も有名ですが、ここでは『小説家 さだまさし』を紹介させてください。
『案山子』の歌詞の中でも景色や温度が迫ってくるような描写が特徴的でしたが、彼の小説もまた、彼の思いのぎゅっと詰まったものに仕上がっています。
多数の作品が映画化されている
映画化されたものだけでも「精霊流し」「解夏(げげ)」「眉山(びざん)」「風に立つライオン」「アントキノイノチ」などがあります。
どれも主人公や登場人物の心が丁寧に描写され、そして何より綺麗な日本語で綴られているのが特徴です。
『案山子』の世界観からさだまさしに興味を持った方は、ぜひ小説も手に取ることをお勧めします。
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